Con te Partiro ーvia Francigenaへの招待状ーvol.33 | ちびタンクのひとりごと

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大好きな旅のこと、心理学・スピリチュアル・ヨーガのこと、日々の気づきなどをつぶやいています♪



その会が実際に開かれたのは2019年12月15日だった。


恵比寿にあるコーヒーショップの2階。

栗色のアンティーク調の家具と調度品が施された雰囲気の良い一室を貸し切り、暖かい飲み物をいただきながら、ゆったりとした時間を過ごした。


参加者は操さんなどきぬママの関係者と、私の友人、数人だった。


会はなおさんの、きぬママとの思い出の語りで始まった。

そしてきぬママがいつも歌っていたアメージンググレース、大好きだった金子みすゞの詩にあてた曲に続き、素人ばかりで舞台に立った思い出の曲、“翼をください”を皆で合唱すると、最後はなおさんが大好きなさだまさしの曲で締められた。


皆がそれぞれの記憶に想いを寄せる、暖かく優しい会だった。


会が始まるとき、テーブルの上に置かれた一冊の本に目についた。

それは私の友人、水器さんが置いた祈祷書だった。


”その本、きぬママのですね!“

私は思わず呟いた。


クリスチャンの巡礼路、カミーノ・デ・コンポステーラを歩いた私にきぬママは、”帰ってきたら、父の聖書をあげるわね“とメールで約束していた。

しかし帰国後、お互いその話はすっかり忘れていて、約束が生前に果たされることはなかった。


お別れの会のあと、きぬママ宅で本棚を眺めていた時、そのことがふと思いだされた。

聖書と祈祷書の違いもわからなかったが、とりあえずその手のものを貰っておこうと、目に止まった祈祷書を持ち帰ったのだった。


水器さんは心理学の仲間ではなかったが、きぬママのコンサートに来てくれたことがあった。そして何より、彼女は洗礼こそしていなかったが、キリスト教に深く傾倒していた。

意味もわからない私が持っているよりは良いだろうと、形見分けの意を込めて、その祈祷書は彼女に贈ったのだった。


”うん。きぬママの会だからね“

水器さんが答えた。


臙脂色の祈祷書が、この先の私の行く末に大きな影響を及ぼすことなど、その時の私は考えてもみなかった。


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↓前回のお話