2017年4月9日
その日は日曜日で、入院したこともあり久しぶりにゆっくりと話しをすることができた。
ここのところは寝ていたり、すぐに疲れてしまうきぬママだったが、その日は珍しく饒舌だった。
相変わらず帰りたい攻撃は激しかったが、あんなことあったね、こんなことあったね、と昔の話をした。
中でもエターナリーのことは忘れない。
その頃のきぬママはあんなに好きだった音楽に触れたがらなかった。
そかしその日は“エターナリーの歌詞って本当に素敵よね。あれを歌っているときの写真はないかしら?”と聞いていた。
エターナリーはチャップリンが映画「ライムライト」のために書き起こした曲で、きぬママはコンサートの度にその曲を歌った。
その歌詞はまさにきぬママを謳ったもの。
以前からそう思っていた私は、その発言に胸が熱くなった。
その日、二時間くらい話しをしただろうか。
疲れが見えてきたので、そろそろ帰ろうかとすると、きぬママはこう言った。
“すずちゃん、私は今、人生で一番大変なことを、成し遂げようとしているのよ。“って。
そして私に写真を撮るように告げてこう続けた。
“きぬママは癌と戦っているとFacebookに載せなさい”
どこまでも強く太く重く、まっすぐなその発言とは裏腹に、淡いクリーム色のパジャマに身を包み、友人の贈り物だという手編みの小さな赤いニット帽を被って、穏やかに微笑んだ写真のきぬママは、彼女が大好きな天使のようだった。
帰り際、“忙しいのに、ありがとうね“と言うきぬママに
”違うよ。
私がきぬママにありがとうなんだよ。
本当にありがとう。
それを伝えたくてきているんだよ。
私が会いたいからきているんだよ。“
そう、伝えることができた。
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↓前回のお話