それから1年半後の2015年4月。
私は当時勤めてたいたシステムエンジニアの仕事を辞め、カミーノ・デ・サンティアゴを含む半年ほどの一人旅にでた。
きぬママは、
「まーったくあなたは、小さな身体に目一杯のエネルギーを溜め込んで。本当にチビタンクちゃんね。大いに楽しんでいらっしゃい」
と送りだしてくれた。
途中、フランスのルルドに立ち寄った。
その地の教会内にある「ルルドの泉」は、その水に触れて病気が治ったという報告が複数あり、クリスチャンの間では奇跡の泉として知られていた。
“そうだ”と思い立ち、私はその水を国際便できぬママに送った。
ちょうど白内障の手術をしていたきぬママは、そのことをたいそう喜んでくれて、メーリングリストや私信で何度もお礼を伝えてくれた。
まさかそんなに喜んでもらえるとは思いもせず。
“毎日、少しづつ目につけています”という報告に、腐っていないか心配になると同時に、もっとたくさん送ればよかったと後悔した。
その後、私はカミーノ・デ・サンティアゴまで約990kmの歩きを遂げる。
そしてカミーノを終えるとヨーロッパを立ち、アメリカ大陸に臨んだ。
しかしその頃の私はひどいカミーノロスに落ち入り、もう旅どころではなくなっていた。
メキシコ カンクンの日本人宿で沈没しそうになっていた頃、きぬママからメールが届いた。
”チビタンクちゃん、今はどこにいるの?
そろそろ顔が見たいわ“
私はそれ言い訳に一次帰国を決める。
その後、私は今度は二ヶ月弱のインド旅に出るのだが、その間にきぬママは念願のメーリングリスト1800通を達成した。
その年はそんなふうにして一年が過ぎていった。
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