今朝、通勤途中の交差点で信号待ちをしていると、足元にキラリと光るものが目についた。
雨に打たれて光っていたのは、小さなシルバーのペンダント?チャーム?のようなものだった。
よく見ると、ハートの片側に何かが付いている。
すぐ近くに、同じ質感の小さなフェザーのようなものも落ちていた。
そうか、ハートの両側に翼がついたデザインだったんだ。
落ちた衝撃か、踏まれたのか、片方の翼が折れちゃったんだ。
翼の折れたハートなんて、なんだかすごくかわいそうになった。
拾おうか?
この前、すぐ行動しようって決めたじゃん。
それで、雨に浸かったハートと翼を拾った。
その直後、雨と風が急に強くなった。
なんだかこの子の気持ちみたいだなって思った。
その時、大切にしていたクリスタルのことを思い出した。
ポケットに入れていたら、どこかに落としてしまったのだ。
とても悲しくて、誰か良い人のところにいってくれたらなあって思った。
そのクリスタルとこの翼の折れたハートが重なった。
自分がこの子にとって良い人かはわからないけど、何となく、やさしい気持ちになった。
ところが、そんな気分も束の間、雨と風はどんどん強くなっていき、とうとう傘がひっくり返ってしまった。
信号待ちで傘を直すものの、すぐにまたひっくり返ってしまって、今度は骨が折れる。
そんなことを繰り返すともう傘の原型は留めておらず。
それでも少しでも濡れないように、ほとんど意味をなさない傘(だったもの)に肩を窄めながら、職場の入るビルに入った。
なんだかとんでもないものを拾っちゃったのかもしれない。
びしょびしょになりながら事務所に入ると、ロッカーで今日、退職する方とお会いした。
「大丈夫〜?」
「いや〜、傘が壊れちゃってビショビショです。」
「今日、風強かったもんね〜。」
「ビニ傘じゃばかったんですけどね。ちゃんとした傘だったんでショックですー。」
そんな会話を重ねながら、いつも通り仕事を始めた。
しばらくすると、彼女が私のデスクにやってきた。
「よかったら、これもらってくれない?
置き傘にしてたんだけど、私は今日で退職だし。
一回くらいしか使ってないし、16本骨でしっかりしてるから。」
「良いんですか?」
「うん。ちびタンクさんにはお世話になったから、もらってくれたら嬉しい。」
薄いピンクベースの細かな花柄の、とってもステキな立派な傘だった。
翼が折れたハートちゃんからのプレゼントのように感じた。
ありがとね。これからよろしくね。
なかなか刺激的な子だけど、早く元気になると良いなと思う。