第42回帝静戦プレーオフ・決勝戦レポート 石津寿人 | 静岡支部員のひとりごと

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2024年2月4日 晴天
 
この季節にして温かく、春の訪れを近くに感じさせる日だった。
そんな中、第42回静岡リーグ帝静戦プレーオフ、決戦戦が行われた。







 
レポートは、日本プロ麻雀連盟20期生「静岡のナメック星人」石津寿人が担当します。



 
集合時間より1時間前に会場入りした私は、プレーオフに進出した8人に意気込みを聞く事にした。
 
一番乗りは橘、試合開始までまだ1時間以上ある、さっそく意気込みをきいてみる。
 
橘「え!やってやりますよ!」
少し興奮気味だ、恐らく気持ちが高ぶって、居ても立っても居られず早めに会場に来たのだろう。
 



次に来たのが鈴木郁、続いて斉藤だ。
二人にも聞いてみる。
 





郁「やる事やるだけ。」
テンション低!橘とは真逆だ
「オイオイ、いくたん(ふみたかプロの愛称)、来る途中で犬のウ◯コでも踏んだか?」
私は少し心配になった。
 
斉藤「睡眠バッチリ、普段どうり打ちます。」
リラックスしてるようにみえる。
初のプレーオフ進出だが堂々としている。
 
他の選手も集まり順に意気込みを聞く。
 
渡邉翔「初出場・初優勝で、来期から移籍する静岡支部で最高のスタートダッシュを切ってアピールしたい。」
来期より静岡支部に移籍する渡邉翔にとって自分をアピールする絶好のチャンスだ。
気合が感じられる。
 



中「優勝します。最初にブチかまします!」
中の言葉に力強さ気迫を感じた。
8人の中で一番気持ちの下準備をしてきたのは中なのではと思った。
 



影山「プレーオフは油断せず戦います。中プロとは20年以上前からの知り合いで今日の対戦は楽しみです。勝って恩返ししたい。」
首位でプレーオフに進出した影山。
ポイントのリードを活かし戦うといったところか。
又、この舞台で中と対戦出来ることを、楽しみにしていたのだろう。
 
安間「この舞台で麻雀を打てる事が嬉しく、楽しみです。ただただ勝ちたい。」
安間の表情からは、本当に嬉しそうな雰囲気が溢れんばかりに出ていた。
 



「ワクワクが押し寄せて来る♫」
「パーティーの主役になろ♫」
by DRAGON BALL Z
って感じだ。
(年齢を感じるネタではある)
 
史哉「佐々木寿人さんになります。」
おそらく前日に見た鳳凰位決定戦の興奮が冷め止まぬのだろう。
。。。前の日に見たのがワンピースだったら、
「海賊王にオレはなる!」
と言っていただろう・・・。
少し可愛く感じた。
 



 
帝静戦のプレーオフ・決戦戦のシステムは半荘20回の予選を行い、上位8人がポイントを持ち越し、
1卓が1位、4位、5位、8位
2卓が2位、3位、6位、7位
に分かれ2半荘行い、トータルポイント上位4人が決戦へと駒を進める。
決戦戦はポイントをリセットし3半荘行い優勝者を決定する。
 
1位 影山+157.4P
2位 斉藤+143.0P
3位 橘+136.3P
4位 安間+135.9P
5位 中+131.5p
6位 渡邉翔+126.5P
7位 郁孝+115.6P
8位 史哉+102.4P
1位の影山から8位の史哉まで55Pと団子状態。
誰が勝ってもおかしくない。
 
【プレーオフ1回戦】
1卓 
東家、安間+135.3P 南家、影山+157.4P 西家、史哉+102.4P 北家、中+131.5P
 



2卓
東家、渡邉翔+126.5P  南家、橘+136.3P 西家、郁孝+115.6P  北、斉藤+143.0P
 


1卓
開局、史哉にチャンス手が入る。
配牌
六七④⑤11567N北中 ドラ1
 
ポイントが団子とはいえ史哉は卓内で二人を上回りたいところ。
この手はものにしたいが、思うように手が進まない。
親番の安間が行く手を阻むリーチ。
すぐにツモって3200オール。



続いて、東ポン、白ポンからの2000は2100オール。
さらにピンフの1500は2100を史哉からアガる。
 
3連続のアガリで最高のスタートを決めた安間、逆に史哉はさらに劣勢に立たされた。
 
今日の安間は手牌が軽い、その後も危なげなく局を進める。
影山は派手なアガリは無いが、無駄な失点もなく、局面を見極め戦っている。
 
オーラス
ここまで力を溜めていた親番の中に先制のリーチが入る。
五五六七七八八⑤⑥⑦123 リーチ
 
中もこの手をアガり反撃の狼煙を上げたいところだ。
しかし史哉も黙ってない!追っかけリーチに出る。
 
安間が手が詰まった様子で長考して打六!
中「ロン」。
 
ここで発声が重なる。
史哉「ロン」。
 
史哉の頭ハネで3200。(リーチ、チートイツ)
 



中の表情が曇って見えた。
安間はホッとしただろう。
 
1卓1回戦は安間の一人浮きで終了。
安間+27.5   影山▲8.1 史哉▲14.6 中▲4.8
トータル
安間+163.4 影山+149.3 史哉+87.8 中+126.7
 
 
2卓
 
東1局、親番の渡邉翔に配牌でドラが対子でありチャンス手だ。
しかし6巡目に橘からリーチが入る。
これを受けて渡邉翔はオリを選択。
初舞台で緊張してるのか?
もう少し戦って欲しかったと思った。
橘が500・1000ツモアガリ。
 
東2局
斉藤の1300・2600のツモアガリ
②③③④④⑤⑥⑥34455  ツモ3
 



場に②が3枚出ておりダマテンでのアガリは少しもったいなく思われるが、⑤ツモの二盃口まで待つのが斉藤だ。
斉藤の持ち味は手牌の最高形を追うところだ。
 
東3局
「ポン」北家の橘が五を仕掛ける。
一一一③③688北北 五ポン
トイトイで決まり、郁孝の親番も落とせたら最高だが。。。
 
渡邉翔からリーチが入る。
渡邉翔の切った③を橘が鳴けばテンパイだが声が出ず、橘らしくないようにみえた。
橘の麻雀は放銃も多いがアガリも多いタイプだ。
鳴いて高め5200、プラスリーチ棒なだけにリーチに日和らず鳴いて戦って欲しかった。
 



2卓1回戦は小場で進み
渡邉翔▲6.1 橘+5.9 郁孝+10.9 斉藤▲10.7
トータル
渡邉翔+120.4 橘+142.2 郁孝+126.5 斉藤+132.2
 
 
【プレーオフ2回戦】
 
1卓
 
2回戦でも安間の勢いは止まらない。
打点こそ高く無いが、軽い手で局を進める。
影山、中もくらいつく。
苦しいのは史哉で、テンパイ止まりでアガリが遠い。
 
オーラスを迎え、
史哉26800点、中28700点、安間34100点、影山30400点という点棒状況。
 
史哉は役満をツモれば影山、中を交わし128.6Pで2卓の結果待ちとなる。
中は影山から5200は5500か2100・4100のツモアガリで影山を捲ることができる。
 
しかし、最後も安間が早い。
影山から1300をアガり締めくくる。
 



史哉▲11.2 中▲4.3 安間+17.7 影山▲2.2
トータル
史哉+76.6 中+122.4  安間+181.1 影山+147.1
 
 
2卓
 
東1局、いきなり大物手がぶつかる。
西家の斉藤が東をポン、ドラの北が暗刻だ。
郁が456の三色完成のカン⑧でリーチを打ちぶつけてきた。
親番の渡邉翔も黙ってない。
果敢に攻めるが斉藤の8000に捕まる。
 



東2局も親番維持を狙う郁孝がハイテイで斉藤に3900の放銃。
斉藤は勿論、橘にとってもいい展開だ。
しかし郁孝もこのまま黙ってない。
 
南2局に親番、郁孝の反撃が始まる。
中ドラ1の1000オールをツモると、一人テンパイ、食いタンドラ1の1000は1200オールと加点。
 
ここで、打切り時間となる。
「リーチ」
郁孝から最後の攻撃だ。
一一七八九⑦⑧⑨23478 ドラ6
郁孝はアガれば橘を捲るが、1卓の状況が判らない為、リーチだろう。
ノーテンでも郁孝に捲られる橘、ツモってきた9を河におき決着。
 



渡邉翔▲15.6 郁孝+23.3 斉藤+17.6 橘▲25.3
トータル
渡邉翔+104.8 郁孝+149.8 斉藤+149.9 橘+116.9
 
1卓からは安間、影山が、





2卓からは斉藤、郁孝が決勝戦へと駒を進めた。
 





 
【決勝1回戦】
 
決勝に入っても安間が止まらない。
東1局配牌
七八②②③④④13456北 ドラ五
ツモ③、九で2巡目にテンパイ、影山から打ち取る。
 
東2局、親番でも7巡目リーチ、一発ツモ。(一発は無いが)
二三四④⑤⑦⑧⑨45699 ツモ③ ドラ④



 
東2局1本場は、斉藤から2900は3200と3連続でアガる。
二三四四四⑦⑧ ②ポン東ポン ドラ7
プレーオフから安間と同卓している影山、安間の出来の良さを感じている事だろう。
ここまで影山は本当に我慢強く戦っている。
どこかで反撃に出たいところだ。
 
南1局、影山がリーチに出る。
一二三四五五五⑥⑧⑧⑧67 ツモ四 ドラ6
 
次巡ツモった⑤を河に置くと、親番の斉藤「ロン」安間「ロン」と二人から声がかかる。
斉藤
六七八⑥⑦123678西西
 
「ハイ」斉藤の手元に点棒を置く影山。
「2900ならまだいける」とポジティブに捉える事もできる。
「⑤がテンパイ前にくれば・・・この⑤を掴むのか」などネガティブに捉える事もできる。
影山はどう感じたのだろう。
 



続く南1局1本場、8巡目に影山が少考の末リーチをかける。
三三五七八八八九⑥⑦345 ツモ⑤ ドラ西
 
影山にしては珍しく、少し迷いが見られる。
親の斉藤も追いつき、七単騎待ちからカン六に待ち変え。
三四五七③④⑤234 ツモ四 ④③⑤チー
同巡形式テンパイを取りにいった郁、中スジになった六を切ると二人からロンの声。
またしてもダブロンだ。
2回のダブロンを頭ハネでアガった斉藤は気分もいいだろう。
 
南1局2本場、斉藤の親番が続く。
3巡目
三四五八八⑤⑦TTN白白白 ドラN
このイーシャンテン、6巡目にNがかさなり、同巡に安間の切ったTを鳴きテンパイした。
三四五八八⑤⑦NN白白白 Tポン
この手に飛び込んだのが安間。
ここまで順調だった安間がこの日初めて劣勢に立たされる。



斉藤は53000点の1人浮きになった。
 
南2局4本場、親は安間。
手痛い18000の放銃をしてしまった安間は失点を取り返したいところだ。
6巡目 ドラ⑧
ニ三四五七九⑦⑧⑨4567 ツモ八
安間の選択は7切りニ五待ちでリーチ。
先に山にいたのは7、選択次第では他にもツモアガリの道は有りそうだ。
15巡目に追いついた郁孝の五を捉え一安心。
 
南3局、親番は影山。
この親番で何とか反撃したい影山だが、行く手を阻むのは安間。
一一三四五六六七七八⑦⑦⑦ ドラ五
このリーチを受け、回りに回ってテンパイしたのが18巡目。
七九九九555白白白①暗カン
ハイテイ牌に手を伸ばす影山に力が入る!
ツモってきたのはニ、少考の末ニをツモ切り、5200の放銃となってしまった。
 





オーラス、親番は郁孝。
点棒状況は以下の通り。
斉藤50500点、安間26100点、影山18000点、郁25400点。
3900点以上でアガり斉藤の1人浮きを阻止したい安間。
12000で浮きの2着、2000・3900なら2着、1300・2600なら3着になる影山。
連チャンしたい親番の郁孝。
それぞれ思惑があるだろうが斉藤の手が軽い。
4巡目にRを鳴き6巡目に④をツモりこの手牌。
七七八九九②③④④⑤ Rポン ドラ三
「一回戦は斉藤の1人浮きで決まったな」
斉藤と郁孝の後ろで観ていた私はそう思った。
しかしここで郁孝が魅せる。
7巡目
四六八八⑦⑧⑨112256 ツモ③
 
3巡目に②を切っていて、郁孝は斉藤の河をチラッと見て1切り。簡単には鳴かせない。
同巡、安間の切った九を鳴く斉藤が③⑥待ちのテンパイ。
郁孝の③はいつ出てもおかしくない。
12巡目
四六六八③⑥⑦⑧22567 ツモ四
ここでも八切りで粘る。
すぐにアガれると思った斉藤だが13巡目にツモ切りした一に安間からロンの声。
ニ三三四五⑤⑤677889



これで安間も浮き、斉藤の1人浮きを阻止した。
仮に7巡目に郁孝が③をツモ切っていたら、斉藤がチーテン六九待ちをとり、九が浮いている安間が放銃したか、8巡目に郁孝がツモってくる九を放銃したと思われる。
 
1回戦
斉藤+24.0 安間+4.0 影山▲20.0 郁▲8.0
 





 
決勝2回戦
 
東1局、1回戦トップの斉藤の親番、ここでの連チャンは3者ともに望まないところだろう。
そんな思惑が交錯する中、12巡目に斉藤からリーチがかかる。
一ニ三七八⑥⑥222456  リーチ ドラ⑥
 
同巡、郁孝が7をツモり追いつきダマテンで押す。
4人のツモに力が入る。
18巡目決着の時は訪れた。
「ツモ」
六をツモった斉藤の手牌が開かれる。
3者にとって強烈な3900オールだ。
 



斉藤の追撃は止まらない。
続く東1局1本場ではタンピンの2900は3200を郁孝からアガる。
東1局2本場では、影山と安間の2軒リーチに挟まれた郁孝が白の対子落とし、この白を斉藤がポン。
安全牌の無い郁孝は場に1枚出ている南を切り、これを斉藤が捉える。
五六七⑧⑧999NN 白ポン ドラ9
強烈、いや激烈な12000は12600。
 



東1局3本場は影山から2900は3800をアガり、斉藤は持ち点を63300点まで積み上げた。



その後も斉藤は加点し73800点の1人浮きの大トップとなった。
 
2回戦
斉藤+55.8 安間▲1.8 影山▲19.4 郁▲34.6
トータル
斉藤+80.4 安間+2.2 影山▲38.4 郁▲43.2
 
 
決勝3回戦
安間さん・郁孝・影山さんと奮闘するも波乱は起こる事なく、斉藤が逃げ切って優勝を決めた。











 
3回戦
安間+19.4 郁孝+7.7 斉藤▲7.0 影山▲20.1
最終成績
斉藤+73.4   安間+21.6  郁孝▲35.5   影山▲59.5



 
圧勝、この日の斉藤の優勝にふさわしい言葉だ。
 
斉藤「普段どおり打ちます。」
意気込みを聞いた時に、私は違和感を感じていた。
プレーオフは2卓に別れて上位4人の勝ち上がり、決勝は優勝以外意味がない。
 
普段のリーグ戦より、相手と自分のポイントによって手組みや押し引きなどが変わると思っている。
勿論斉藤にもそんな思考が全く無いわけではないと思う。
 
しかしそれよりも、与えられた手牌を真っ直ぐより高く打つ斉藤の戦う姿に、麻雀の本質を見たような気がした。