5,6年生に言いたいことはほぼ同じだから、
人数もそれほど多くなかったので、一つの教室に詰め込んで授業をした。
まず最初に例の「部品が登場する学年」の表を掲示して、
前回の4年の授業でした同じような話をした。
3年生までの基本漢字は大丈夫!部品は何度も書いたことがある!もちろんカタカナも!
ということを確認した後、5,6年ではここを強調した。
「4年生から漢字に登場する新しい形は極端に少なくなるのは分かるよね。
4年生は学年で習う漢字の1/8、5年は9%、6年は6%だけなんだよ。
つまり、4年生以上の漢字は3年生までに書いたことがある字で82%も書けてしまう!
中学漢字は1,110字もあるんだけど、新しい形はたった28個、なんと2.5%だけ覚えればいいんだよ。
しかも、中学漢字は小学3年生レベルの組み合わせで、72%も書けちゃうんだよ。」
「ねえねえ、みんな漢字は面倒くさい、覚えきれないって嫌々やっていない?
中にはあきらめてしまっている子もいるでしょ。」
すると、みんなそうだそうだと同意の顔。
男子の一部は堂々と自分はもういい!ダメなんだ!と開き直っていることを口にする。
「みんな、1学年で200字くらい学ぶ小学校で、こんな状態で過ごしているでしょ。
中学校では年間400字も習うんだよ。しかも、画数が多い難しそうな字を・・・。
このままいって大丈夫?」
ヤバい!ヤバい!っていう顔を全員がしている。
さんざんこの先の大変さを強調したところで、
「大丈夫!私はちゃんと解決策を持っているよ!
みんなはまだ1年2年の時間がある。
特に、6年生はこの1年間を大事に使ってやれば、きっと復活できるよ!」と方法を話し出す。
5,6年生にはここを一番に伝えたい。
「復活する方法は、まず一番にこの一覧表の中央列の部品を覚えること。
何回も書いてきた形だから、今更書く必要はない。名前を覚えてさっと思い出せればいい。
みんなは漢字カードを持っているから、すぐに復習できる。
部品カードに1年生から覚えるべきものが、「形・名前・意味」をセットで全部載っているよ。
それを覚えるのは、1,2週間あればできる!
先生、GWの4連休で覚える宿題を出してくださいね。」
「その部品を覚えたら、苦手な高学年の漢字カードを見てごらん。
そこには全部組み合わせで書いてある。
みんなは今まで一本ずつの足し算で書いてきたから、
かたまりをポンポンと組み合わせる感覚がないんだ。
その見方の感覚をつかむことが大事なんだよ。
つまり、漢字を「分解・合成の視点」で捉えられるようにするということ。
できればね、高学年の一部の漢字だけでなく、
2,3年の漢字を復習しながらその感覚をつかんでほしいな。
難しいと思っていた4年以降の漢字も簡単に覚えられることを実感すると思うよ。」
「今まで、漢字が苦手!勉強するのイヤだ!と言っていた高学年の子たちの多くが、
この方法であっという間に復活したよ。
要は、何とかしたい!できるようになりたい!というやる気の問題で、
みんなそうなりたいという気持ちは持っているよね。
だから、だらだらとやっている場合ではない。一気にやる勢いが必要だよ。
先生、今の学年の新出漢字をやる前に、この学習を優先してください。」
とたたみかけるように話した。
そして、こんな安心感も与えた。
「中学校の漢字はね、読めればいいんだよ。書くことは高校入試に出ない。
高校入試では小学校の高学年の漢字の書き問題が出る。」
という前置きをした後で、高学年の大事な課題として、こんなことを伝えた。
「世の中で使われている漢字は、小学校の漢字が圧倒的に多い。
低学年の漢字は日常生活でよく使われて見慣れているから大丈夫だと思うけど、
ここは音読みを覚えて、二字漢語を読めるようにしておかなくてはいけない。」
と、4年の授業で示した音読み習得の大切さを伝えた。
「小学校高学年の漢字はね、ちょっと高いレベルの言葉にいっぱい使われている。
読書、ニュース、情報番組、ドラマ、ネット情報・・・などなど、実感しているでしょ?
さらにこれから学習を進めていく上で、書き言葉として漢語をいっぱい知らなくてはいけない。
高学年の漢字を制覇しないと、中学・高校へ行ってとても困るし、大人になっても必要だよ。
中学校の漢字はね、ほんの少ししか使われていないし、とても限定的な言葉だけなんだよ。
だからね、高学年の漢字を使った言葉が圧倒的に多いのだから、
漢字一字を組み合わせであっという間に覚えたら、漢語を増やすことを真剣にやって!
これができてこそ、高学年の漢字を制覇したと言えるんだよ。
漢字学習の目的は、決して一字を読み書きできるようになったことではありません!」
と強調して授業を終えた。
子どもたちの何と真剣な表情だったことか!
最初はふらふら体を動かしたり、ひそひそと話していたりしていたが、
後半はじっと真剣に見つめて、微動だにしない。
みんなの心の中に突き刺さったと思った。
特に、思春期を迎えた反抗的な雰囲気を醸し出していた男子が、
顔の表情や目つきがどんどん変わっていったのが印象深かった。
2年~6年までの授業の様子と流れをかいつまんでここに記したが、
4つの学校を回って、この高学年の、特に6年生の態度が一番心に残り、感動でもあった。
一期一会だったけど、「みんな頑張れ!」と号令の挨拶の後に叫んで、教室を後にした。