4年生の春の授業 | しずえばあちゃんの回想録 “We Can Do It !”

しずえばあちゃんの回想録 “We Can Do It !”

教師生活35年、子供3人。
パワフルに生き抜くしずえばあちゃんの
子育て論、教育論、人生論を綴っていきます。

人生の後半で取り組んだ漢字学習についても
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さあ、漢字が嫌い、苦手になっているはずの4年生の授業。

ここがかなり勝負の学年。

さて、どんな様子かな?

 

4年生で初めて漢字カードを手にする授業の写真をいっぱい撮ってくれた先生がいて、

今回はその写真を使わせてもらおう。

子どもが写らないように撮ってくれたから、私の顔ばかりが大写しなのだが・・・

 

やはり、大半の子が漢字が嫌い・苦手になっている様子。

ここは自信を付けさせてあげなくては!と15年前に表にしたものを掲示した。

ミチムラ式漢字学習法の根拠を示す定番の『部品が登場する学年』である。

 

「ねえねえ、みんなは3年生まで漢字をいっぱい書いて覚えてきたよね。」

うん、うん、とみんなうなずく。

「じゃあ、この表に書かれているこんな基本漢字は書けるよね。簡単なものばかりだよね。

あっ、カタカナはもちろん書けるよね。」

また、うん、うんとうなずく。

 

「じゃあ、真ん中の部品の形はどう?何回も書いたことあるでしょ?(うん、うんという反応)

でも、これって出てくる度に何だったけ?と見ながら書いていない?

これらの名前を言えるかな?」

これは?これは?と黒板に書いていくが、知っているものはほんの少し。

なべぶた、しんにょう、・・・あと少しだけ。

 

「この形の名前を覚えたら、すぐに思い出せて、さっと書けるんだけどなあ・・・

みんな、こんな形で迷っていない?」

 

「これってね、みんな意味があるんだよ!」

3年生の授業で言ったようなことをまたここで言う。(前回に書いたからあっさりと)

「のぶんの意味はわかったね。おいかんむりもわかったね。」

 

「じゃあ、3年生の漢字にのぶんを使った字が出てくるんだけど、思い出せるかなあ?

・・・65名もいるのに、誰も思い出せない・・・

やっと、後方の男の子が静かに遠慮気味に手を挙げた。

「整理するのセイ」

「組み合わせは?」と聞くと、「たば(束)、のぶん、正しい」

「そう!すごい、君だけ思い出せたね!すごいよ!!」

 

「しかも、たば(束)って言ったね。

束は4年生の漢字なんだけど、まだ習っていないよね。よく知っていたね。」

他のみんなはキョトンとしてる。

「まだ習っていない束が使ってあるから、3年生が知っている字を使って、

こんなふうにカードには書いてあるんだよ。

『東の一本なし!』どう?これですぐに書けるでしょ?」

みんなは、なるほど~!という表情をしている。

 

「だけど、たば(束)はみんな知っているよね。花束とか、束にするとか。」

「じゃあ、考えてみよう。

『束、のぶん、正』の組み合わせで、『整理するのセイ』に使われているのはなぜかな?

だれか説明できる人? お話を作れる人?」

 

ぽつぽつと手が挙がる。

なんとかかんとかと詰まりながら長々と説明してくれる。

いい感じ・・・でも、もう一声!

「ほら、散らばっている部屋を片付けなさい!と親によく言われるでしょ。

バラバラになったものを、手を使って集めて(のぶん)、束にしてまとめるでしょ。

そして、正しい元の位置に置くと、きれいに整理されるよね。

それが、『整理するのセイ、ととの_える』だよ。」

 

「君、思い出してくれて、ありがとう。おかげでみんなしっかり頭に入ったと思うよ。」

と後方の男の子に礼を言ったら、拍手が起こった。

 

授業が終わって廊下に出たときに先生方がつぶやいていた。

「あの子にスポットが当たって良かったね。うれしそうな顔をしていたなあ。」と。

どうも特別支援学級の子だったらしい。

 

そうなんですよ。特性があっても文字に興味がないわけではない。

漢字の読み書きは必要だし、できるようになりたいと思っている。

しかし、書くことが苦手で漢字学習から逃げているだけなのだ。

だから、自分の考えでどんどん進めたらいいのだ。

自分の興味ある分野から入っていけばいい。

いずれはあの子のように漢字を覚えられる。

しかも、他の子が到達しないようなレベルまでいって、得意意識が出てくる。

特性のある子たちには圧倒的にこの方法が合っているのだ!

 

それからiPadを取り出し、カードの裏のQRコードを読み込んで、

大型画面に映し出して見せた。

 

4年生の最初の方で習う「達」。

再生ボタンを押すと、読み書きの音声が流れる。

まずはそれにビックリしている。

「声優さんの声だよ」というと、さらにビックリ!

 

この字がとにかく迷うのです。めちゃくちゃ間違えるのです。

何と間違えるかというと・・・これ!とスクロールして「かいせつ」の頁を見せる。

まあ、後ろの方の子はよく見えなかっただろうけど、

ちゃんとQRコードを読み込んだ画面には出てくるから、確認しておいてね、と。

 

そして、「発達のタツ」とタイトルにあるが、発達を使った文章は浮かぶ?

「低気圧が台風に発達する」という文章と画像が載せてあるよ、と。

 

そして、最後に「他にもこんな言葉があるんだよ。知っているかな?聞いたことがあるかな?」

 

「これで漢字学習が楽しくなりそうでしょ? すごいことが学べそうでしょ?」と聞くと、

今自分たちが手にしているカードのQRコードから、

これだけの情報(なりたちもある)が見られることに、みんな驚いていた。

先生たちも驚いていた。


そして、最後に「それよりも、もっともっと大事なことがあるんだよ。」

「みんな、漢字は読める?」

半分は自信ありげにうなずくが、約半分はなんだかあいまいな雰囲気・・・」

「じゃあね、今から一言も発しない!口チャック!反応もしないよ。

今から私が黒板に書いていく言葉を、心の中で読んでね。絶対に無表情だよ!」

 

なぜ、こんなに強く念を押すのかというと、

書こうとしているのは1,2年の漢字を使った漢語なのだ。

子どもたちは1年・2年の漢字ぐらい読める!と思い込んでいる。

しかし、間違っている子も実に多いのだ。

そのことを他の友達に知られるとまずい。バカにされたら大変だ。

だから、一切反応なしとした。

 

さあ、書きましたよ。

 

「みんな、読めたと思っているでしょ?

だけど、こんな読み方をしていた人いない? 反応しないよ!黙って聞いて。

"くるまなか、うえした、つよいよわい、いわいし、なまえのつき、あかいみち、あめてん”」

 

「もし、今の読み方をしていた人はヤバいよ! 今読んだのは全部訓読み。

みんなは1,2年の時には訓読みしか習ってないから、

この読み方で読める!って思っているかもしれないけど・・・。」

 

「ねえ、3年生頃から教科書に漢字がいっぱい使われてきたでしょ。

4年生になったら漢字だらけになってきたでしょ? 理科も社会も算数も・・・

それって全部訓読みで読んでいるの? 読めない言葉もたくさん出てきているでしょ?

そして、眺めるだけでなんとなく意味がわかるから、それで読めた気になってない?」

 

「この"車中”は"くるまなか”って心の中で読んでも、情景が浮かぶから意味がわかる。

でも、それで安心していちゃいけないんだよ。

漢字はね、二つ合わさると、ほとんどが音+音で読まなければいけないんだよ。

(だからこのポーズ!)

 

「だからね、みんなが持っているカードの裏の上段の『読み方』だけはしっかり覚えてね。

低学年の漢字の音読みを覚えていない人は、それを覚えることが今は何よりも必要だよ!

これだけは地道に復習してね。きっとすぐに覚えられるから。」

 

と、締めくくって授業を終えた。

みんな真剣に聞いてくれました。