さあ、漢字が嫌い、苦手になっているはずの4年生の授業。
ここがかなり勝負の学年。
さて、どんな様子かな?
4年生で初めて漢字カードを手にする授業の写真をいっぱい撮ってくれた先生がいて、
今回はその写真を使わせてもらおう。
子どもが写らないように撮ってくれたから、私の顔ばかりが大写しなのだが・・・
やはり、大半の子が漢字が嫌い・苦手になっている様子。
ここは自信を付けさせてあげなくては!と15年前に表にしたものを掲示した。
ミチムラ式漢字学習法の根拠を示す定番の『部品が登場する学年』である。
「ねえねえ、みんなは3年生まで漢字をいっぱい書いて覚えてきたよね。」
うん、うん、とみんなうなずく。
「じゃあ、この表に書かれているこんな基本漢字は書けるよね。簡単なものばかりだよね。
あっ、カタカナはもちろん書けるよね。」
また、うん、うんとうなずく。
「じゃあ、真ん中の部品の形はどう?何回も書いたことあるでしょ?(うん、うんという反応)
でも、これって出てくる度に何だったけ?と見ながら書いていない?
これらの名前を言えるかな?」
これは?これは?と黒板に書いていくが、知っているものはほんの少し。
なべぶた、しんにょう、・・・あと少しだけ。
「この形の名前を覚えたら、すぐに思い出せて、さっと書けるんだけどなあ・・・
みんな、こんな形で迷っていない?」
「これってね、みんな意味があるんだよ!」
3年生の授業で言ったようなことをまたここで言う。(前回に書いたからあっさりと)
「のぶんの意味はわかったね。おいかんむりもわかったね。」
「じゃあ、3年生の漢字にのぶんを使った字が出てくるんだけど、思い出せるかなあ?
・・・65名もいるのに、誰も思い出せない・・・
やっと、後方の男の子が静かに遠慮気味に手を挙げた。
「整理するのセイ」
「組み合わせは?」と聞くと、「たば(束)、のぶん、正しい」
「そう!すごい、君だけ思い出せたね!すごいよ!!」
「しかも、たば(束)って言ったね。
束は4年生の漢字なんだけど、まだ習っていないよね。よく知っていたね。」
他のみんなはキョトンとしてる。
「まだ習っていない束が使ってあるから、3年生が知っている字を使って、
こんなふうにカードには書いてあるんだよ。
『東の一本なし!』どう?これですぐに書けるでしょ?」
みんなは、なるほど~!という表情をしている。
「だけど、たば(束)はみんな知っているよね。花束とか、束にするとか。」
「じゃあ、考えてみよう。
『束、のぶん、正』の組み合わせで、『整理するのセイ』に使われているのはなぜかな?
だれか説明できる人? お話を作れる人?」
ぽつぽつと手が挙がる。
なんとかかんとかと詰まりながら長々と説明してくれる。
いい感じ・・・でも、もう一声!
「ほら、散らばっている部屋を片付けなさい!と親によく言われるでしょ。
バラバラになったものを、手を使って集めて(のぶん)、束にしてまとめるでしょ。
そして、正しい元の位置に置くと、きれいに整理されるよね。
それが、『整理するのセイ、ととの_える』だよ。」
「君、思い出してくれて、ありがとう。おかげでみんなしっかり頭に入ったと思うよ。」
と後方の男の子に礼を言ったら、拍手が起こった。
授業が終わって廊下に出たときに先生方がつぶやいていた。
「あの子にスポットが当たって良かったね。うれしそうな顔をしていたなあ。」と。
どうも特別支援学級の子だったらしい。
そうなんですよ。特性があっても文字に興味がないわけではない。
漢字の読み書きは必要だし、できるようになりたいと思っている。
しかし、書くことが苦手で漢字学習から逃げているだけなのだ。
だから、自分の考えでどんどん進めたらいいのだ。
自分の興味ある分野から入っていけばいい。
いずれはあの子のように漢字を覚えられる。
しかも、他の子が到達しないようなレベルまでいって、得意意識が出てくる。
特性のある子たちには圧倒的にこの方法が合っているのだ!
それからiPadを取り出し、カードの裏のQRコードを読み込んで、
大型画面に映し出して見せた。
4年生の最初の方で習う「達」。
再生ボタンを押すと、読み書きの音声が流れる。
まずはそれにビックリしている。
「声優さんの声だよ」というと、さらにビックリ!
この字がとにかく迷うのです。めちゃくちゃ間違えるのです。
何と間違えるかというと・・・これ!とスクロールして「かいせつ」の頁を見せる。
まあ、後ろの方の子はよく見えなかっただろうけど、
ちゃんとQRコードを読み込んだ画面には出てくるから、確認しておいてね、と。
そして、「発達のタツ」とタイトルにあるが、発達を使った文章は浮かぶ?
「低気圧が台風に発達する」という文章と画像が載せてあるよ、と。
そして、最後に「他にもこんな言葉があるんだよ。知っているかな?聞いたことがあるかな?」
「これで漢字学習が楽しくなりそうでしょ? すごいことが学べそうでしょ?」と聞くと、
今自分たちが手にしているカードのQRコードから、
これだけの情報(なりたちもある)が見られることに、みんな驚いていた。
先生たちも驚いていた。
そして、最後に「それよりも、もっともっと大事なことがあるんだよ。」
「みんな、漢字は読める?」
半分は自信ありげにうなずくが、約半分はなんだかあいまいな雰囲気・・・」
「じゃあね、今から一言も発しない!口チャック!反応もしないよ。
今から私が黒板に書いていく言葉を、心の中で読んでね。絶対に無表情だよ!」
なぜ、こんなに強く念を押すのかというと、
書こうとしているのは1,2年の漢字を使った漢語なのだ。
子どもたちは1年・2年の漢字ぐらい読める!と思い込んでいる。
しかし、間違っている子も実に多いのだ。
そのことを他の友達に知られるとまずい。バカにされたら大変だ。
だから、一切反応なしとした。
さあ、書きましたよ。
「みんな、読めたと思っているでしょ?
だけど、こんな読み方をしていた人いない? 反応しないよ!黙って聞いて。
"くるまなか、うえした、つよいよわい、いわいし、なまえのつき、あかいみち、あめてん”」
「もし、今の読み方をしていた人はヤバいよ! 今読んだのは全部訓読み。
みんなは1,2年の時には訓読みしか習ってないから、
この読み方で読める!って思っているかもしれないけど・・・。」
「ねえ、3年生頃から教科書に漢字がいっぱい使われてきたでしょ。
4年生になったら漢字だらけになってきたでしょ? 理科も社会も算数も・・・
それって全部訓読みで読んでいるの? 読めない言葉もたくさん出てきているでしょ?
そして、眺めるだけでなんとなく意味がわかるから、それで読めた気になってない?」
「この"車中”は"くるまなか”って心の中で読んでも、情景が浮かぶから意味がわかる。
でも、それで安心していちゃいけないんだよ。
漢字はね、二つ合わさると、ほとんどが音+音で読まなければいけないんだよ。
(だからこのポーズ!)
「だからね、みんなが持っているカードの裏の上段の『読み方』だけはしっかり覚えてね。
低学年の漢字の音読みを覚えていない人は、それを覚えることが今は何よりも必要だよ!
これだけは地道に復習してね。きっとすぐに覚えられるから。」
と、締めくくって授業を終えた。
みんな真剣に聞いてくれました。