「代用物」
世に代わりとなるものは、たくさんあるものです。
ぬいぐるみはペットの代わりだし、プラモデルはアニメのヒーローの身代わり。
野球やサッカーの補欠選手もレギュラー選手の代わりとなるもの。
このような関係になるのです。
これは私たちが日常使うモノについても、同じことがいえます。例を挙げれば、
「化粧品」
化粧品が何であるかをカンタンにいえば、皮脂の代用物になります。
皮脂が皮膚の上に分泌され、それを皮膚常在菌たちが食べることで、肌が
"潤っていく"
"ハリとツヤが出る"
若い子の肌がピチピチ!だなんていわれるのは、皮脂が健全に分泌され、菌が健康に肌の上で活躍しているから。
皮脂も常在菌も健康であるのなら、化粧品なんてそもそもイラナイもの。
このようにいえると思うのです。
でも、皮脂の分泌が鈍くなり、菌の働きが弱まってしまうと、色はくすみ、肌の乾燥は進んでいく。
“お肌の曲がり角!”なんて言われたりもしますが、化粧品はこの現象をカバーするための代用物であるといえるのです。
これは「食べもの」についても同じです。食の安全を大切に考える私たちにとって、
「食品添加物」
はできるだけ遠ざけたい物質の1つになります。
でも、そもそも添加物なんて必要ないし、イラナイはずのもの。
そんな不要品であるはずのものが、どうしてこんなに大量に氾濫し続けているのか?
それはあるモノの代用品だから!
このことが浮かび上がってくるのです。
■高温多湿の中
高温多湿の国・ニッポン。ジト~として湿気ムンムン。平均湿度は
「約70%」
といわれる私たちの国は、水資源がいつでも豊富。
だから水不足に悩むのではなく、過剰な水に悩まされ続けてきた経緯があるのです。
武田信玄の「信玄堤」は有名ですが、昔から河川の氾濫を治めた殿様は名君!と賛美され、長らく称賛され続けているのです。
水が多く、湿気ムンムン。そんな息苦しいまでの高い湿度の中をいかに快適!に過ごしていくか?
日本文化の底流には"湿気対策"。
ココへの様々な知恵と配慮とが込められているのです。
湿度が高い中、生命を養う大切な食べものをいかに腐らせずに日持ちさせるか?
その追求こそが保存食の伝統。
天日に干して乾燥させる乾物文化は一方の雄となりますが、他方に、
「塩!」
塩を重んじてきた経緯があるのです。
冷蔵庫がない時代、いかに食材を保存するか?そのカギとなった食材こそが塩だった。
味噌も醤油も漬物も、そもそもは保存食として始まったことがいわれています。
塩をたくさん使うことで、食べものを腐らせずに保存する。塩はこの地で生きる私たちにとって欠かせない大切な食材!
このようにいえると思うのです。
■マルチな活躍!
塩の恩恵は、保存だけに留まるものではありません。
人体は60兆もの細胞からできているといわれますが、塩には新陳代謝を助ける働きがあるのです。
高温多湿の日本では、ちょっと動いただけで、ジンワリと汗がにじんでくるもの。
体重60キロの人の体内には、200~250gの塩を抱えているといわれ、体内の塩分濃度は、
「0.9%」
といった具合に、常に一定に保たれ続けている。このように解説されるのです。
汗をかく量の多い私たちは、汗とともに流れ出た塩分を逐次補給しておく必要があります。
味噌汁や漬物などの塩蔵食品はこのためのもの。それが日本の食文化の中心になっているわけです。
また塩による恩恵はそこだけには留まりません。塩は万能調味料!といって良いほど、食材の美味しさを引き出してくれるといった名脇役。
日本料理で
「塩降り三年」
といわれる理由は、このこと。素材の味を最高に引き出す調理人になるためには、最低3年もの時間をかけて試行錯誤を繰り返す必要がある。
実際に、塩がバッチリ決まらないと、マズイ料理になってしまうことは誰もが経験済みのことではないかと思うのです。
このように保存性に優れ、健康増進に貢献し、しかも味の管理人とでもいうべき存在の塩。
塩は実にマルチな活躍で、私たちに多大なる恩恵をもたらしてくれているのです。
でも、こんな大切な塩を、日本人はいつからか、
「敵視!」
するようになってしまいました。
そしてそれこそが、食材に添加物を乱用する悪しき習慣の元凶になっているのです。
■歯止めが効かない!
食品の塩分濃度は高ければ高いほどに、
「腐敗菌」
の増殖を抑えることが分かっています。
でも、塩は体に悪い!高血圧の温床になる!だからなるべく使うな!
こうなってしまえば、食材の保存はできなくなってしまうのです。
そうなると、何か代わりとなる代用物が必要になる。そこで決まって登場するのが
「食品添加物」
防腐剤、PH調整剤、ソルビン酸、各種殺菌剤・・・。
さらに最近は、野菜も魚も自分で切ることをしないので、カット野菜なども重宝されている。
カット野菜で使われるのが、コロナウイルス騒動ですっかりお馴染みとなった
「次亜塩素酸ナトリウム」
毒性がより強いもの、より強いものへと歯止めがかからなくなっているのが現状です。
塩は絶対ダメだけど、化学合成添加物ならOK!
こんな奇妙キテレツな話にすり替わってしまっているのです。
私たちは本当に塩は怖いモノなのか?塩よりもずっと添加物の方がキケンなのではなかろうか?
この点を突き詰めて考える必要があると思うのです。
毎年、気温の上昇に合わせて、「熱中症」による救急搬送の出動回数が増えていきます。
昨年2023年度の全国の搬送者数は、91,467人。前年対比で20,438人増加となっているのです。
そしてその半数は、高齢者。このような比率になっているのです。
緊急搬送時に応急処置として使われるのは、
「生理食塩水」
になります。熱中症は血液の塩分濃度が下がっていることで、引き起こされる症状。
だから応急措置には、塩水が使われる。それは血中の塩分濃度を高めるための処置というわけです。
熱中症の原因は塩不足にこそある。
生理食塩水を応急処置に使うことからも、このようにいえるのではないかと思うのです。
高齢者の多くは病院通いをして、そこで厳しく減塩を指導されている現状があります。
医者の言うことを疑いもなく素直に聞いて、普段から塩の利かないマズイ料理を食べ続ける。
その挙句、熱中症で倒れてしまい、敵であるはずの生理食塩水を注入されていくことになる。
実に愚かなことではないかと率直に思います。
過剰な減塩主義が招く、深刻な塩欠乏・・・。私たちは塩を敵視し、添加物を愛するといった反自然な振る舞いを続けてしまっている。
世にはびこる根拠なき迷妄に対して、自然食品店や有機野菜の宅配などは異議申し立てを行っていく。
それは自然食に課せられた、大切な社会的役割のひとつではないかと思います。
でも肝心の自然食業界ときたら、右へ倣えで減塩効果!減塩万歳!
こうしたことを謳った加工食品群がたくさん売られているのが現状です。そしてその商品の裏面を眺めてみれば、大体において、
「酵母エキス」
が使われている。酵母エキスなんていうと、いかにも自然のものであるかのように思われがちですが、これは正真正銘の化学調味料です。
化学調味料とは製造方法が少し違うだけで、濃厚な旨味を付け足すために作られたモノであることに変わりはない。
酵母エキスとは、化学薬剤そのものである。このようにいわねばならないと思っているのです。
■恥も外聞もなく・・・
酵母エキスは、自然食品店などで売られているソース、菓子類、ラーメン。
こうした加工度の高い食材に頻繁に使われる傾向があります。
食の安全を大切に考える私たちは、パンを買うなら天然酵母パンを選ぶのではないかと思います。
なぜなら一般のパンに使われるイースト菌は化学的に操作・培養されたものであることを知っているから。
だからこそ、天然酵母パンを選んでいるのではないかと思うのです。
酵母エキスはこのイースト菌と同じようなもので、以前は、ビールを製造した後に出る産業廃棄物のビール酵母を使っていました。
最近は自然食志向が高まり、需要が大きく膨らんだため廃棄物を使うのをやめた模様です。
そして酵母エキス製造のための特許付きの酵母菌。これを開発した旨が特許庁のHPに掲載されているのです。
酵母エキスを抽出するための酵母を純粋培養する過程においては、
”殺菌剤や抗生物質”
などが使われています。これらの薬剤によって、肝心の酵母菌が死滅しないように、遺伝子操作が行われていると、『薬の常識はウソだらけ』(廣済堂)の中で、環境臨床医の三好基晴氏は指摘しています。
「酵母の遺伝子操作には、エチルメタンスルホン酸、リン酸緩衛剤、N-メチル-Nニトロ-Nニトロソグアニジン、ソルビトール溶液などの化学物質を使っています」
と述べ、培養液には、
「酢酸カリウム、リン酸緩衛剤、プロモピルビン酸、パラフィン、硝酸アンモニウム、リン酸2水素カリウム、硫酸マグネシウム7水和物、硫酸第一鉄7水和物、チアミン、炭酸カルシウムなどを使っています」
と指摘するのです。
このように幾重にもわたる化学処理、薬剤処理の末に、酵母エキスは作られているのです。
でも、そんな酵母エキスはどういうわけだか、分類上は
『食品』
に指定されている。つまるところ酵母エキスはお米やパン、味噌やアメなどと同じ扱いになってしまっている。
化学調味料は分類上は添加物に指定されているのですが、酵母エキスの方はなぜだかそうなっていない。
だから酵母エキスをどんなにたくさん使っても食品添加物は使用していないことになってしまう。
こうして有機野菜の宅配業者や自然食品店においては、無添加食品!を堂々名乗って売られているのが現状です。
恥も外聞もなく、酵母エキス入りの食材を
”安全食材”
の美名のもとに売っている。故意なのか、無知なのか。いずれにしろ、自然食業界にはこのような現状があるのです。
■何度もオイシイ!
化学操作をされた酵母菌の液胞の中には、
“アミノ酸やタンパク質、ペプチドや核酸、ビタミン”
などが多く含まれています。これを取り出し、食材に添加すれば、コクと旨味、味の奥行き。
これらをカンタンに付け足すことができてしまうのです。
核酸やアミノ酸、ペプチドなどが化学反応を起こし、重層的な深い旨みを生み出すことができるのです。
旨味成分のみならず、
”ビタミン○○豊富!”
だなんて、パッケージに大きく表示することもできてしまう。
メーカーからしてみれば、酵母エキスは化学調味料よりも割高にはなりますが、自然食材として付加価値をつけて売ることができるので、コストは充分に回収できる。
消費者は粗悪なものを安全食材と偽られ、それに対して高いお金を支払っている。
こんなダマしの手口に遭っているのが偽らざる現状というわけです。しかもさらに悪いことに、酵母エキスには
「減塩効果」
までもがあるのです。食材にたった0.1%添加するだけで30%もの減塩効果を生み出すことができる。
安全安心の無添加食品で、ビタミン豊富で、しかも抜群の減塩効果!
こんな具合に、酵母エキスは売る側にたくさんのメリットがあるものなのです。
私などは買い物の際に、「酵母エキス」と書かれていたら絶対に買わない。
エキスを添加していることの意味は、素材が劣悪である。その証左であると思って、買わないことにしているのです。
■食材と薬剤
日本人は現在、1年間に約8キロもの、食品添加物を摂取しているといわれています。
粗悪で味も素っ気もないような食材に対しては、化学調味料や酵母エキスで旨味を付け足す。
塩はキケンなものだからその代用品として、腐敗防止に「防腐剤」が使われる。
古くて色どりなんてあったものではないから、「着色料」で色つけを行う。
香りなんてとっくの昔に吹き飛んでいるものだから、「香料」を添加し、匂いをゴマかす。
このように私たちの命の糧であるはずの食材は、
「薬剤まみれ」
になり果ててしまっているのです。
食べたものが血となり肉となっていくのだから、日々口にする食材はしっかり厳選することが大切。良質な塩を食べたい分だけ食べること。
根拠の乏しい減塩主義などに惑わされてはならない。
私はそのように思っております。
■参考文献