「太陽、月、星々」
天体と生きものとの関係。
当然ながら、密接な関わりがあるものです。
農業においては、
“日照不足”
だなんて、しばし話題になりますが、太陽ばかりにスポットライトが当てられている。
もう一方の雄であるはずの
「月」
については、ほとんど触れられることがないのです。
この原因は、太陽の運行を中心とした太陽暦に暦が切り替わっていったこと。そこに理由があるといわれています。
それまでは満月から次の満月までの間を1ヶ月と数える、『太陰暦』が使われていましたが、1872年にそれが突如として変更になった。
時の明治政府はそれまでの暦を強引に切り替える、こうした措置を断行するに至ったからです。
明治5年は12月2日を以って、この年は終わりにしてしまう。つまりこの日こそが大晦日。
本来明治5年12月3日であったはずの翌日は、いきなり明治6年1月1日、
“元旦”
となってしまった次第です。
この発表が実施日のわずか1ヶ月前であったことから、当時大変な混乱に陥ったことが記録されているのです。
薩摩藩の島津久光公は、明治政府のあらゆる政策に不満を抱き続けた人物ですが、太陰暦から太陽暦への切り替えに対しては、
「農業ができなくなる!」
このように激しい怒りを露わにしたことが伝えられているのです。
農業はもとより、生きものと月との関係は密接不可分なものがあります。
でも、現代に生きる私たちは月については、あまり考えることがなくなっているのが現状です。
月と体、月と行動との関係について私たちはどのように考えれば良いのか?
この点を知っておいても損はないのでは?と思います。
そこで今回は、「生命と月」との関係について考えることで、
医者を遠ざけ、クスリを拒む。
そんな生き方のヒントについて述べてみます。
■調整のために・・・
イスラム世界はイスラム暦を採用し続けています。このイスラム暦が何であるかといえば、「太陰暦」。
月の満ち欠けに合わせて暦を刻んでいる、このように説明されるのです。
満月を12回数えることで、1年とするもの。イスラム世界の暦はコレをそのまま用いても、問題がないことがいわれています。
中東アラブエリアは、1年を通して四季の区別が
「あまりない」
このことが理由であると説明されるのです。
1月も8月も大して気候に違いはない。よって太陰暦を採用しても、大きな矛盾が起こりにくい。
でも、太陰暦をそのまま日本に当てはめてしまうと、大きな矛盾を抱え込んでしまう結果になってしまう。
日本において、1月の気候条件と8月のそれとでは、全く違うことが理由と説明されるのです。
満月から次の満月への間は、
“29.53日”
というように、かなり中途半端なモノになってしまいます。
1年間は、29.53×12ヶ月になるので、太陰暦の1年は354日になる。太陽暦の365日に対して、11日分不足してしまう。
この11日分をそのままにしておくと、やがて季節と暦に深刻なズレが発生してしまう。
1月なのに夏真っ盛り・・・。イスラム圏では矛盾はないけれど、日本ではこうした矛盾が露わになってしまうのです。
そこでこの11日分を調整する目的で、3年に1度は閏月を設置する。閏月のある年は1年を
“13ヶ月”
にすることで季節と暦のズレの調整を行ってきた。このように説明されるのです。
この措置は太陽暦と太陰暦を併用して使ったものであることから、『太陽太陰暦』と呼ばれています。
日本は明治の世まで、この暦を長らく使ってきたというわけです。
太陰暦から太陽暦への切り替えの真相はさまざまにありますが、財政難を指摘する声が支配的です。
税制ひっ迫にあえぎ続ける明治政府は、閏月のある年は官吏に1ヶ月分の給料を余計に支払わなくてはならない。
「損をしてしまう!」
とにわかに思い立ち、突然暦を切り替えたことがいわれているのです。
冒頭で述べた島津公は、太陽暦では農業ができなくなると憤慨したと述べましたが、実際の農民たちはあまり暦に依存していなかったそうです。
長野県北部に白馬村という有名な観光地がありますが、この白馬の由来は、雪渓が見事な標高2912メートルの「白馬岳(しろうま)」。
春になると雪が解け始めていくのですが、農民たちは山肌が露出し、馬のような形になったら田んぼの準備を始めたそうです。馬を用いて
“代(しろ)かき”
を行うタイミングを山の変化を見ながら図っていた。「代馬」が転じて、“白馬”。それが地名の由来といわれているのです。
我が家には江戸時代の古文書があるのですが、そこには、
「前の山の雪が溶け始め、宝船のような形になったら、タネを播くべし!」
こんなことが書かれています。昔の農家は太陽暦でも、太陰暦でもなく、自然歴を使っていたと解説されるのです。
■月と収穫
農業において、月と栽培との関係がいわれるのは、
「水分量と虫」
この2つに集約されると思います。
満月の際は、作物の中の水分量が頂点にまで満たされる。反対に新月の頃は水分量が最も少なくなっている。
満月は、雄しべと雌しべの受粉活動が活性化していく、生殖生長作用が強く働く。
新月は、根っこからの栄養分・養分吸収が活発になる、栄養生長作用が強く働く。
このことが分かっているのです。
稲は収穫後に、天日や乾燥機などで干して乾かし、そこから精米作業に入ります。特に天日干しをする際は、新月に合わせて刈り取りを行うことが良いとされます。
お米の中の水分量が少なくなるので、
“乾かしやすくなる”
反対に満月の頃に収穫すると、お米の水分量が多くなるので、なかなか乾かない。よって日持ちが悪くなる。このような違いがあるといわれているのです。
農家さんの中には、月の運行を確認し、新月の頃に合わせて収穫作業を行う人もいるそうです。これは通称、「新月伐採」と呼ばれています。
また新月に合わせて畑にタネを播くと、土からの養分吸収が活発になるので、根っこの生育が良くなっていく。
大規模米農家さんには難しいのでしょうが、小規模や自家用でお米を栽培されている方は、ぜひ月の動きに合わせて来年刈り取ってみては?と思います。
農業において、虫はいつだって
「憎き奴!」
となるのが常ですが、月の満ち欠けに注目すると虫への対策が容易になることがいわれています。
月のリズムに合わせて、虫もリズムを刻んでいる。このように解説されるのです。
満月の時は、虫の数が明らかに多くなる傾向があるのに対して、新月の頃はその数が明らかに減少していく。
満月に虫が多く集まる理由は、月の力による生殖作用が活性化するため。お相手を探しての求愛行動が盛んになる。つまるところ、
“交尾相手”
を探していると指摘されるのです。
満月の頃に交尾を行い、その後産卵するので、田畑で葉の裏に卵を見つけやすいのもこのタイミング。そして、3~4日で孵化して虫が大量に発生していく。
そして虫が葉っぱを最も盛んに食べ始めるのが、満月から数えて、1週間ほど経過した頃。
こうした月と虫の関連性を把握して、独自の対策を行う農家さんもいるそうです。
月と生きものとの関係を熟知して、病害虫対策を行うだなんて、実に素晴らしい。それは古来より伝わる百姓の知恵。
こういうことになるのです。
■生み出す力!
人の体も成人で約60%は水分といわれています。
それだけ大量の水を体内に抱え込んでいる私たちも、月の影響を受けていることがいわれています。
女性の月経や赤ちゃんの生誕に、月の満ち欠けが関わっていることはよく知られています。
それ以外にも、何か新しい趣味や自己啓発、起業などを行う際は、
“新月の時から”
このように月に合わせて、行動に着手する人もいるようです。
また満月には生殖作用が高まることから妊活に月の満ち欠けを活用する。また婚活・恋活パーティーは生殖作用が頂点に達する
「満月の時」
を狙う。こうした粋なサービスが今後脚光を浴びてくるかもしれません。
意中の相手への人生を賭けた告白。コレなんかも満月の時の方が良いのかも知れません。
また、駆け出しのミュージシャンがライブを開くのは満月の時が良いなんてことが言われたりもします。
感情も、体の状態も、まさに最高潮にボルテージが上がっていく。演奏する側もそれを聴く側も、ハイテンションな状態になりやすく、1本のライブが
“伝説のライブ”
へと昇華しやすい、こんなことまでがいわれているのです。
古来、私たちの先祖は過ごしやすい満月の折には外に出てゴザを敷いて、飲めや歌えやの宴会を行っていました。このことからも説得力のある話ではないでしょうか。
暮らしに月を活用する、そんなひと味違った暮らしのあり方の参考になれば幸いです。
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