人体の60%は、
「水である!」
こうしたことがいわれています。
でもその水は、プールのような場所に溜め込まれているのではなく、細胞の中。
人体を構成する60兆の細胞、そのひとつひとつの中に約7割の水が溜め込まれているのです。
細胞の内側に抱え込まれている水は、ただの水ではなく、微量栄養素などを豊富に含んだもの。
この水分は細胞の内側に存在することから、『細胞内液』と呼ばれているのです。
そうなると残りの約30%はどこにあるのか?というと、それは細胞の外側にある液体で、通称『細胞外液』と呼ばれています。
細胞外液には、血漿や細胞の周囲を満たす間質液、リンパ球などが含まれているのです。
食べものがなくても、水と睡眠さえとっていれば、ヒトは2週間から3週間程度は生き長らえることができてしまう。
でも、水を一滴も飲まないままでいると、3~5日程度で死に至ることが言われているのです。
健康でなるべく自然に過ごしていきたい私たちは、普段から、水への意識をより高めておく。この必要を思うのです。
人体の60%は水である。確かにそれはそうなのですが、この比率は年齢によっても変わっていくことがいわれています。
成人では60~65%なのですが、新生児の場合は90%以上が水。子供は約70%で、高齢に達すると50~55%。
時間の経過で、緩やかな下り坂を示していくことが分かっているのです。
私たち成人の細胞外液は、日に約4分の1が入れ替わっているのですが、子供は約2分の1が入れ替わっている。
子供が脱水症状を起こしやすい理由は、この細胞外液の入れ替わりの
“激しさ!”
ココに理由があると説明されるのです。
子育て中の親御さんは、大人と子供のこの違いに注目してみる必要を思います。
■コメとパン
私たち日本人の主食は、言わずと知れた
「お米」
になります。美味しいお米の水分量は人体の水分量とほぼ同じで、約60%といわれています。
水分量が50%のお米を食べるとパサパサ感が強くなって、言ってしまえばとにかくマズイ。
水分量80%のお米となると今度はベタベタ感が強くなって、コチラもマズイ。
水分量をコントロールして上手に炊かないと、たくさんのお米をお腹いっぱい食べることが難しくなってしまう。日本料理の修行の入り口は
“塩降り三年!”
といわれているように、料理における塩加減と水加減。この2つは極めて重要な基本中の基本事項になるというわけです。
では、お米の対抗馬になるパンの方はどうかといいますと、パンに含まれる水分量は約30%。お米の半分程度になります。
水分量が少なくて、パサパサ感が強い食材がパン。強いパサつきを感じることの意味は、パンに唾液を吸われてしまう。このことが理由と説明されるのです。
日本人は欧米人に比べて、唾液の分泌量が少ないことがいわれています。
唾液の少ない日本人だからこそ、日々の食卓に酢の物などを織り交ぜて、口の中の唾液腺を刺激しようとする。
これも身体的な弱点を補うための、実に優れた調理の知恵!このように言えそうです。
高齢者や子供などは、水分量の少ないパンを食べると、ノドにつかえてしまう危険性も高くなる。
老いも若きも、日本人が普段口にするべき食材は
『主食の米』
こういうことになるのです。
離乳食は水分を豊富に含んだ重湯に始まり、お粥に移り、成長に従って水分量60%のお米を口にするようになっていく。
人の体の水分量の変化に合わせるように、メニューも移り変わっていく。
実に合理的な食のあり方ではないかと思うのですが、あなたはいかが思われるでしょうか?
■ステーキバカ食い!
『子供が野菜嫌いで何が悪い!』(バシリコ刊)の中で、著者の幕内秀夫氏は、パン食の
「脂質の多さ」
に対して懸念を述べています。パンとホウレン草のお浸しを一緒に食べれば、喉に詰まるキケン性がある。
そうなると、どうしたって油を使った料理が主流になっていく。
野菜炒めやベーコンエッグ、オムレツやスクランブルエッグ。サラダのお供は、ドレッシングやマヨネーズ。
肉や魚料理もフライやフリッター、ムニエル、マリネなどといった具合に、実に油の多いメニュー構成になっていく。そしておやつはスナック菓子・・・。
パンとそれに付随する副菜を食べることをして、幕内氏は、
「朝から天ぷらを食べるようなものだ」
と説明しているのです。
お米を主軸にすれば、お供は味噌汁!漬物!といった具合に、日本人の体にとってムリのない献立に自ずとなっていく。
日本人の食生活の幹となるのは、主食のお米。こういうことではないでしょうか?
これはお菓子類も同じです。手元に100グラム当たりの脂質含有量を比べた資料があるのですが、
『水ようかん:脂質0.1/串団子:脂質0.4/大福もち:脂質0.5/もなか:脂質0.4』
和菓子類はこうであるのに対して、洋菓子類はというと
『ポテトチップス:脂質35.2/チョコレート:脂質25.8/ショートケーキ:脂質13.6/ワッフル:脂質8.8/ホットケーキ:脂質5.5』
ポテチなどはついつい食べたくなってしまうのでしょうが、それは濃厚な油で幾重にもコーティングされた脂質のカタマリ。
それはサーロインステーキやマグロの大トロ並みの脂質含有量に相当するもの・・・。
ヤメラレナイ・トマラナイなんて言いますが、実際に病みつきになってついつい食べ過ぎてしまう。それは日々、
“ステーキバカ食い!大トロ大量食い!”
これらに等しい行為といわねばなりません。極めて高カロリーの食材を子供のおやつに与えてしまっている。
ポテチなどのスナック菓子は、最強かつ最悪のお菓子であろうと思うのですが、いかがでしょうか?
日本人は植物からのデンプン・糖分をエネルギー源にして、長い間、この地で生き続けてきました。
そのため欧米人に比べて、脂肪や動物性タンパク質の消化吸収能力が
“低い”
と『欧米人とはこんなに違った日本人の体質』(講談社ブルーバックス刊)の中で、奥田昌子医師は解説しているのです。
胃酸の分泌量を比べてみても、日本人は欧米人の半分程度しか分泌されていないことが分かっているそうです。
肉・乳製品・ナッツ・チョコレート・スナック菓子などは消化に時間がかかってしまい、規則正しい排便のリズムに狂いが生じてしまいやすい。
便秘の大きな原因の1つに、
「動物性タンパク・乳製品過多」
があると奥田氏は解説するのです。
■和を以って尊し!
1914年のマルヌ海戦でドイツ軍に勝利したフランスは、パリの孤立を恐れて籠城の準備を行うに至りました。
その時、パリを訪れていた作家の島崎藤村は籠城準備の様子を見て、
「森には牛、豚、羊の群れが籠城の用意に集められた」
と驚きを持って書き残しています。日本で籠城といえば、決まって『米・塩・水』であるからこそ、藤村は驚いたというわけです。
また幕末、日米通商友好条約の締結に日本を訪れた全権大使ハリス。交渉が長引くと、2ヶ月目には下田奉行に、
“牛乳を取り寄せてもらいたい”
と申し入れを行っています。渋る幕府役人に対して、山羊乳でも構わないからと頼み込み、自分で乳を
「搾るから!」
とまで、懇願している様子が伝えられているのです。
食文化の違いはこうした歴史的事実に照らしてみても、明らかではないかと思うのです。
明治22年に刊行された『女学雑誌』という冊子の中には、
「健康を保つ食物とは、肉を中心とした動物性蛋白質であり植物性食品は到底肉食の比ではないこと、粗食をもって美談とした我が国の食卓を改めなければ欧米人と競争して敗死せざるを得ないだろう」
と述べられているのです。
“栄養!栄養!”と声高にいわれ、「栄養学」をお手本にした食卓づくりが盛んなのですが、そもそも栄養学とは欧米人のための学問体系になります。
体格も体質も、気候条件も、先祖たちの歩みも、すべて異なるヨソの国の人たちの学問といえます。それをどれだけ猿マネしてみたところで、矛盾と不自然とが浮かび上がっていくばかり。
日本人ならタンパク質や脂質重視した食のあり方ではなく、
「デンプンと食物繊維」
を中心とした日本人のための栄養学を作り出していく必要があるのではないか?
フードは風土は、まさに至言。和を以って尊しセヨ!
私はそんなことを思っているのですが、あなたはいかが思われるでしょうか?
■参考文献
■無肥料無農薬米・自然栽培と天然菌の味噌・発酵食品の通販&店舗リスト
■自然食業界キャリア15年のOBが綴る