岩盤規制を
「破壊する!」
これが現政権の政策の柱の1つといわれています。
規制緩和だなんていわれると、何だか良いこと。思わず反射的にそう思ってしまうのですが、実際はそうとは言い切れない。
必要な事がらに対しては、しっかり規制を維持することが大切。維持どころか、規制を
“強化”
しなくてはならない。
こうしたことだってたくさんあるのです。
例えば、「フグ」。
日本人の大好きな食材の1つになりますが、フグの肝臓には猛毒があることが知られています。
もしズブの素人がフグを扱い、料理などを提供してしまえば死人が続出してしまう。
こうしたリスクだってあるわけです。
そのためフグを料理するためには、どうしたって免許が必要になる。
コレだって大切で不可欠な規制の1つといえるのではないでしょうか。
でも、もしこれに対しても規制緩和だなんて言い始めてしまえば、大変キケンな事態になってしまいかねない。
規制緩和は良いことで、正しいことだ!こうした風潮には大いなる疑問を覚えてしまうのです。
“あるべき規制とそうではない規制”
世にはこの2つが存在している。
それらは、健康でムリのない毎日を送っていきたい私たちに
どのような影響をもたらすものなのでしょうか。
そこで今回は、「規制緩和」によってもたらされた具体的な事例を見ることで、
医者を遠ざけ、クスリを拒む。
そんな生き方のヒントについて述べてみます。
■激変に揺れる!
美を求める女性にとって、
「化粧品」
は必要不可欠な必需品になるのでしょう。
いつまでも美しくあり続けたい。
このことから多くの人々が日々、化粧品を使っているのです。
でも、2001年4月1日を境に同じ化粧品でも、それ以前とそれ以降とでは、
“違うもの”
になってしまっている。
こうした指摘があるのです。
数多くのド素人たちが雪崩を打ったかのように、次々と化粧品業界に参入。それが始まったのが、今から20年くらい前のこと。
多くの門外漢企業によって作られた化粧品を毎日大切な肌に
「塗り続けている」
このようなあり得ない状況が作り出されてしまったのです。
化粧品は大切なお肌に直接塗布するものだから、私たちは化粧品業界に起こった大きな変化。
これについて最低限知識を得ておく必要を思うのです。
事情を知らないと、対策の施しようがない。
これは全てに通ずることではないかと思うのです。
■威光という名の
化粧品には、
「威光価格」
があるといわれています。
威光価格が何であるかといえば、安過ぎては売りにくい。そうした特殊な価格帯のこと。
ある程度、威光が反映するような価格をつけないと、敬遠されてしまいやすい。
化粧品には、こうした傾向が見られるのです。
たとえば1円の原価で化粧品を作って、50円の価格で売ってみる。
製造原価の50倍の価格設定なのだから、それでもう充分な利益が見込めるはずなのです。
でも実際はその価格だと売りにくいし、正直、あまり売れない。安過ぎてしまうと、
“心配・・・”
こうした消費者心理を生みやすい。化粧品はそんなジャンルといわれているのです。
原価1円のものを3000円で売った方が、商品に威光が加わりやすくなる。
値段が高いのだから、良い材料で作られているはず。買う側がこんな風に勝手にこう思い込んでくれやすい。
化粧品にはこのような魔性性が備わっているのです。
さらに見目麗しい女優さんが宣伝していれば、威光価格にさらなる“ご威光”が加わっていく。
安い原価で作ったものをどこまでも高値で販売できるのが化粧品業界。
『安く作って高く売る』
これが古今東西変わらぬ、商売成功の原理原則になるのだから、さまざまなズブの素人が化粧品業界に参入したがる!
こうした傾向が強く出やすい面があるのです。
かつてはしっかりとした規制があり、新規参入へのハードルはそれなりに高い業界でもありました。要件を満たさない限り、新たな参入はできなかった。
でも、それを押し留めていた規制という名の防波堤が
“決壊”
するに至ったのが、2001年4月の『薬事法』の改正。
面倒な規制要件は撤廃されていき、門外漢でズブの素人。こうした企業の安易で容易な参入が続いてしまっている。
私たちはこんな状況下に置かれているのです。
■昔と今の化粧品
かつては、厚生省が指定した特にアレルギーなどを起こしやすいといわれる
「102種類の有害物」
化粧品を販売する際は、それをきちんと表示する義務が化粧品メーカーにはありました。
タバコには必ず、『ニコチン〇㎎・タール△㎎』と書かれ、その上で、“あなたの健康を害する恐れがあります云々・・・”。
こうした注意書きがあるものですが、かつての化粧品もコレと同じ。
化粧品に使われる約3000種類の成分の中から、特に肌に
“有害!”
と考えられる102種類の成分。これをお役所が前もって、選び出してくれていたのです。
ちなみに『完全無添加化粧品』といわれるコスメを見かけますが、これはこの102種類の成分を完全に排除しているという意味になるのです。
それはあなたの健康な肌を守るための大切な措置なので、特別にピックアップしておいたよ。だから買う際には、
「注意してね」
これが2001年4月までの『指定表示成分の明記』の意味だったのです。
ところが法改正により、『全成分表示』へと切り変わってしまった。使った量が多い順にすべての成分を表示しなくてはならない。
このように切り替わってしまったのです。
こうなると、表示は単なる平坦な文字の羅列情報になってしまう。何が特にキケンで、何がそれほど心配がないのか?
この判断が極めてつきにくいものへと変化してしていったのが経緯です。
ズラズラと並べられた全成分をすべて読み解き、すべてを理解できる。そんな化粧品ユーザーは、ほとんどいないのではないでしょうか。
成分1つ1つを並べられたところで、正直あまり
“意味がない”
そんな強弱の乏しい表示のあり方に切り替えられてしまったのです。
また法改正によって、化粧品製造のコストに繋がるような面倒なルール。これも一緒に廃止されるに至りました。
法改正前なら化粧品を製造・販売・輸入するためには、前もって厚生省からさまざまな細かな許可を取る必要があったのです。
他にも、化粧品の製造に使用しても良いとされる成分も定められていたのです。
もしそれ以外の成分を使う際は、安全性の確認テストを行い、使用に際して
「問題がない」
この点をチェックする必要があったのです。
これらの規制は化粧品会社にとっては、手間ひまがかかって実に面倒なものであったことも事実なのでしょう。
でもそれは国民が化粧品によって、キケンな目に遭わないようにするためのもの。行政が行うべき、当然の措置だったといえるのです。
何か起きてからどうするか?ではなく、何ごとも起きないように、様々な方法で
“事前確認”
を徹底する。
化粧品にも厳しい規制がかけられていたのです。
■責任放棄・・・
ところが法改正により、一部の制限を除いて、あとはどんな成分でも化粧品に配合できるように
“変更”
されてしまいました。一部の制限とは、業界でいわれる
「ポジ・ネガリスト」
といわれる2つのリストのこと。
防腐剤・紫外線吸収剤・タール系色素を使う際は、
“ポジテイブリスト”
に記載されている成分を使用すること。
それ以外の成分については
「ネガティブリスト」
を参照すること。
ネガティブリストに記載がなければ、使ってOK。このような変更が行われるに至ったのです。
化粧品メーカーにしてみれば、ポジ・ネガリストだけに注意を払えばそれで良い。
こういうことになりました。
かつては新たな成分を使いたい!と思った際は、厚労省にお伺いを立て、“承認”を得る必要があったのです。
でも今では一切不要で、承認作業はいらなくなった。メーカーの判断で、ネガティブリスト以外なら何でも使うことが
“可能になった”
こういう事態を招いてしまったのです。
メーカーが何を使っているか?については、全成分を表示させるので、気になるのならその化粧品を買ったアナタ自身が
「自分で調べなさい」
このような不親切極まりないモノへと変化しました。
ポジネガを除き、あとは何を配合しても良いのだから、目新しい成分やそれを使った新商品。これらがドンドン作り出されるようになっているのです。
安全性の確認が為されぬままに、奇抜さや目新しさ。それを狙って大量の商品が生み出され、毎日肌に塗布してしまう。
こうした現状になっているのです。
『ウソをつく化粧品』の中で、著者の小澤貴子氏は、
「全成分表示と医薬部外品の制定とは、化粧品製造の大規模な規制緩和であり、国が消費者を守る責任を放棄した、ということなのです」
と指摘し、
「成分のチェックをしっかりすること、国民の健康を守るために、毒性のある化粧品の成分の規制をすべきです」
と述べているのです。
規制緩和が行われた結果、化粧品に使われる成分は以前の約3000種類を大幅に上回り、現在では
“1万種類以上”
にまで膨張し続け、使用成分の氾濫状態を招いているのです。
■肌が荒れる理由とは?
こうした行政の責任放棄の結果として、誰でもカンタンに化粧品業界に
「参入できてしまう」
そんな状況が作り出されていきました。
化粧品は原価が安いにも関わらず、儲けをたっぷり確保できる高い利益率が魅力の業界。
長年続く不況に各社があえぐ中、異業種からの参入が相次いだのが経緯です。
本業では充分な利益を上げることが難しい。人口が減少していく中、将来の展望に不安を覚えてしまう。
こうした理由から異業種であるはずの
“ド素人企業”
がこぞって化粧品業界に参入し始ていきました。
フィルムメーカー、家電メーカー、アパレル、ジュエリー、食品流通業者、玩具メーカーなどがドンドン新規参入していったのが経緯です。
2001年までの日本化粧品連合工業会の正会員社数は700社だったものが、2018年では1210社までに拡大を続けている。
原料への規制が大幅に緩められ、新たな材料を使いやすくなったことから、素人でも化粧品をカンタンに作ることが可能になってしまった。
前出の小澤貴子氏は、
「これは絶対に化粧品のことを知らない素人が作っているとしか思えない、めちゃくちゃな配合の化粧品も少なくない」
と警告しているのです。
現在日本人女性の4人に3人は乾燥肌といわれています。そして3人に1人は敏感肌であるともいわれているのです。
そして乾燥肌や敏感肌が増えれば増えるほど、保湿効果を謳った化粧品や敏感肌対策を施した化粧品がさらに氾濫し続けていく。
安全性の確認がないままに、次々と商品が開発されているのが現状です。
■自然派化粧品とは?
そして自然食や有機野菜の宅配業者なども化粧品業界に
「参入」
していく傾向が見られます。
実際の商品で全成分表示を眺めてみると、大豆からニンジンから大根から各種フルーツといったように、
“これでもか!”
といった具合に、たくさんの自然由来の成分が列挙されています。
自然のものだから、有機だから、無農薬だからイイだろうといわんばかり・・・。
野菜ジュースにだって、こんなにたくさん入れんわ!そう思うくらいにたくさんの成分が所狭しと並べられているのです。
でも、天然成分にだって、当然ながら毒性があります。
フグ毒もそうだし、トリカブトも毒キノコだってそう。自然のものだから
「安全!」
そういうことには決してならないわけなのです。
合成界面活性剤は角質層を破壊し、細胞のタンパク質を変性させてしまうことからキケン!と盛んに言われています。
だから、自然派・無添加・オーガニックを名乗る化粧品業者は天然の界面活性剤を多量に使いたがる傾向があるのです。
でも天然モノは合成の界面活性剤に比べて、1つ1つの浸透性・破壊性はかなり弱い。それは事実なのかも知れません。
でもたとえ弱くても、4種類も5種類も混ぜ合わせてしまえば、合成のものよりもキケン性を帯びることだってある。たとえ1種類だけであっても
“高濃度”
で配合されていれば、合成品と同じリスクを孕むことになるのです。
自然だから安全、化学だからキケン。
そのような安易な図式は決して成り立たない。人の肌の自然は何も通さないものだし、ただの水だって肌の上に長く留まれば
「異物」
になってしまう。顔も手も濡れたら拭こうとすることからも、このようにいえると思うのです。
肌には何もつけない。
これが私たちの体の自然といわねばならないのです。
■自然原料のリスク
防腐剤として使われる天然成分のヒノキチオールには
「催奇形性」
が報告されているし、アロエベラは、
“抗菌力”
の強い防腐剤の成分。皮膚に塗布すると、炎症を起こしやすいことが知られています。
欧米ではキズやヤケドの際の処置薬として、薬局で販売されているそうです。
コンフリーは肝臓障害を引き起こすといわれ、イギリスとカナダでは
「食用禁止」
になっています。
さらにコウジ酸は肝機能障害と発ガン性で、日本でも禁止となりました。でも薬用化粧品では使用がなぜだか許可されているのです。
安息酸は植物の樹脂に含まれる物質で
“発ガン性”
の疑いが指摘されています。
「サルチル酸」は柳の成分に含まれる物質で、
「殺菌・防腐効果」
があり、使えば皮膚常在菌にダメージを与えることは想像に難くないでしょう。
サルチル酸は解熱・鎮痛・抗リウマチ作用があるとして、クスリの成分としても使われているのです。
グレープフルーツのタネから抽出したシードオイル、またオレンジやユズなどの柑橘系のタネには、種子の中に毒を溜め込む性質があることが知られています。
特にグループフルーツシードオイルには、強い界面活性剤の成分が含まれ、
“強い殺菌力”
が備わっているのです。
柑橘系のリモネンには油を溶かす力があることも知られています。
クマリンという植物の香料成分は、
「炎症・かぶれ」
などを起こすことも分かっています。
このように天然のものだから安全とは決して言えない。
私たちはもっと自らの身体や皮膚の仕組みを理解して、何が自然で、何が反自然であるかを見極める必要があると思うのですが、どうでしょう?
あらゆる分野にわたって、企業の利益獲得ばかりが重視される傾向があります。その結果、まさに
“やりたい放題!”
の状況が横行しているのが現状といわねばなりません。
私たちはもっと身近に使うものに対して疑問を持ち、注意と観察を怠らない。
この必要を感じています。
■参考文献
■無肥料無農薬米・自然栽培と天然菌の味噌・発酵食品の通販&店舗リスト
■自然食業界キャリア15年のOBが綴る