食べものを口に入れたら
最低100回は
「噛むように!」
このように指導する健康法があるそうです。
よく噛んで食べることは、体に良いこと。噛めば噛むほど、噛んだ分だけ健康になれる。
私たちはそう漠然と、信じ込んでいるのです。
でも、どうしてそんなに噛むことが健康に良いのか?
疑問に思って、詳しく問い詰めてみると、しどろもどろになってしまう。
さらに追及を強めると、搾り出される答えは決まって、
“消化に良いから”
“アゴの鍛錬になるから”
こうなるのが1つのパターンではないかと思うのです。
確かによく噛めば、消化は良くなり、アゴだって鍛えることができるのでしょう。
でも、その反面のマイナス面だって、確かに存在している・・・。
マイナス面を無視してしまって、本当に良いのか?考えておく必要があるのではないでしょうか。
モノゴトのメリット・デメリットをきちんと見極めないと、思わぬ事態を招いてしまうことだって少なくない。
私たちは噛むことの自然をどのように考えれば
“良いのでしょうか?”
そこで今回は、「メリット・デメリット」について考えることで、
医者を遠ざけ、クスリを拒む。
そんな生き方のヒントについて述べてみます。
■使い過ぎが・・・
よく噛むことのマイナス面は、色々とあります。
まず最初は
“歯”
の問題。
人の歯は、執拗にモノを噛むようには作られていない。このように指摘する声があるのです。
以前、自然歯科の先生から聞いたのですが、歯には
「耐用限度」
があるという指摘です。
あまりに何回も歯を使ってしまうと、当然ながら歯の消耗が進んでしまう。
曰く、スポーツ選手などは歯を食いしばる回数が極端に多いので、比較的速くダメになりやすい。
それは普通の人も同じで、何度も何度も噛んでしまうと歯の摩耗が進むばかりとなってしまう。
それどころか、噛み合わせなどにも影響が及び、体全体の歪みにまで発展してしまうケースも少なくないそうです。
※参考
私たちは、歯の役割や使命が何であるかをもっと冷静に考え直す必要があるのです。
■弱体サイクルへ
確かによく噛めば、消化も良くなるでしょうし、アゴだって鍛えられていくのでしょう。
でも、そもそも消化とは、胃や腸が主に担当するもの。
50回も、100回も噛んでしまえば、胃はあまり働かなくても良いことになってしまう。
その結果、
「胃弱の原因」
を作りやすい、こう指摘する声だってあるのです。
噛むことの使命は、食道をスムーズに通すこと。決して胃の代行をするようなものではないのです。
胃袋だって筋肉でできている。使わない脳や筋肉が退化するのと同じ理屈で、使わない胃も退化していく。
よく噛むことは歯と胃の
”弱体化”
を招きやすくしてしまうのです。
■連係プレーで!
口に食べものを入れると、即座に
“唾液の分泌”
が活発になります。そうなると胃の方も、仕事の依頼だ!と言わんばかりに、底部から
『胃液の分泌』
が開始します。
唾液の分泌と連動して、食べものを迎い入れる準備を整えていくのです。
噛むことで固形物をスムーズに胃に送れるようにまずは歯で粉砕する。歯の役割はそこで終了となり、後は胃にバトンタッチをするのです。
こうして食べ物が入ってくると、胃は収縮を開始して、激しい蠕動(ぜんどう)運動を開始し始めます。
食道への逆流を防ぐために、胃の入り口・噴門部分はピチッと閉まり、底部から胃液の分泌はさらに活性化されていく。
蠕動運動によって食物はすり潰されていき、ドロドロの状態になるわけです。
お米などのデンプン性の糖質は、唾液に含まれる消化酵素で下処理済みなので、比較的速く消化されていく。
「肉などのタンパク質系は時間をかけてスローに」
「脂肪性のものは最も時間をかけてよりスローに」
こうして、幽門と呼ばれる通過口を通って、十二指腸へと送られていく。
これが消化の流れになると一般的に解説されます。
よく噛むことは、胃を
“働かせない”
ココに繋がってしまうのではないかと思っているのです。
■外敵までをも!
口の中にも、
「リゾチーム」
と言われる、外来菌やウィルスの活動を弱める消化酵素が存在しています。
唾液を分泌することでリゾチームの分泌も活性化され、菌やウイルスの活動を弱める働きをするわけです。
中にはこれを突破して、胃にまで到達してしまう微生物も存在してしまう。
でも、そこで待っているのは、強烈な
“胃酸”
PH1ともいわれる強酸性の塩酸液の前に、増殖なんてとても不可能。
胃酸地獄で苦しむ中、ペプシンと呼ばれる消化酵素を浴びて、菌やウイルスは食べもの同様にドロドロに溶かされてしまうのです。
菌やウイルスはタンパク質のカタマリのようなものですが、胃はそのタンパク質までをも、最小単位の
「アミノ酸」
へと分解していきます。
私たちの体は外来の菌やウイルスまでをも体の栄養源に変えてしまう。
私たちはそれくらい逞しい、そんな生命体といえるのです。
■鍛えるなら・・・
よく噛むことは
「良いこと!」
そう思い込んで、不自然にたくさん噛んでしまうことは胃のスバラシイ働きを弱めてしまう・・・。
そんな結果を招きかねません。
神経質になるのではなく、噛むことを意識せずに普通に食べればそれで良い。
反自然な振る舞いは慎まなくてはならない。私はこのように思うのですが、あなたはいかが思われますか?
でも、よく噛まないとアゴの筋肉が退化して、
“弱くなっちゃう・・・”
こうした疑問が残るかもしれません。
確かにその面はあるのですが、そもそも食べものでアゴを鍛えようとする。この発想自体にムリがある。
食べることはアゴを鍛えるためのものではなく、生きるのに必要な
『自然の恵み』
を体に供給するためのもの。
アゴを鍛えたいのなら、なにも何十回も執拗に噛むのではなく、大きな声で歌ったり、笑ったり、少し重いものを持ってみたり・・・。
その他の活動において負荷をかけた方がずっと良い。
その方がトータルでみればより効果的ではないか?と感じているのです。
環境臨床医の三好基晴氏は、アゴを鍛えたいなら、
「硬いものを食べる工夫をすればよい。そうすれば嫌でも噛みます」
このように述べているのです。
■自然な食べ方とは?
噛むことばかりに比重を置いてしまえば、食事そのものが苦痛で
“面倒なもの”
になってしまいかねません。
美味しく、楽しく、生き物に感謝して食べること。それこそが食の使命ではないかと思う次第です。
必要以上に噛ませようとすることは、自然な食べ方とは言えないわけだし、ストレスの温床になってしまいかねません。
噛むことに神経質になるのではなく、美味しく楽しく、感謝して頂くこと。
自然食を食べるのだから、食べ方もなるべく自然を心がけることが大切。噛む回数なんかを気にすることなく
「普通に食べる」
この方がよほど大切ではないかと思うのですが、あなたはいかが思われるでしょうか?
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