朝井まかて『グッドバイ』 | 空想俳人日記

朝井まかて『グッドバイ』

 この著書も知らない。ましてや、ここに登場する歴史上の実在人物、幕末から明治にかけて活躍した長崎の女貿易商、大浦慶(若き日の名は希以=けい)も知らない。
 けど、解説を斎藤美奈子さんが書いている。立ち読みで解説を読んだ。メチャ分かりやすく牽き込まれた文章、やっぱ斉藤美奈子さんは、指南役なんだ。以前読んだ本(『紅一点論』『文壇アイドル論』)でも、全然あたりだったもんねエ。

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 読み終えた後に、ネットで斎藤さんの書評を発見!

《 すごかね、こんな女の人がいたんだねえ、という感じである。本紙夕刊連載中から楽しみに読んでいた人も多いのでは。朝井まかて『グッドバイ』は、幕末から明治にかけて活躍した長崎の女貿易商を描いた波瀾万丈の評伝小説である。
 主人公の名は大浦慶(若き日の名は希以=けい)。母は早く亡くなり、婿養子だった父は火事で焼けた店を捨てて出奔し、迎えた婿も役立たずゆえ〈こげん性根のぐずついた男は、お父(と)しゃま一人で充分ばい。養いきれん〉とばかりに離縁。お希以が老舗の油屋・大浦屋を祖父から受け継いだのは19歳のときだった。
 時は幕末、黒船来航の直後である。菜種油の商いも先細りとなり、当主となったお希以は異国との交易に意欲を燃やすも、周囲は頭の固い御仁ばかり。何かといえば〈おなごの分際で一人前の主面(しゅうづら)しおって。生意気な〉〈おなごの浅知恵は聴くに堪えん〉。
 それでもお希以はあきらめなかった。ひょんなことからオランダ船に載せる荷の調達を請け負った際、肥前・嬉野茶のサンプルを用意。〈私は交易がしたかとです〉〈これを、茶葉が欲しかと言う人に売り込んでもらえませんか〉
 3年後、ようやく彼女はイギリス人交易商の注文を受けるが、喜んだのも束の間、先方が出した条件は千斤の茶葉をたった6日で集めるというものだった。
 商才に長(た)け、幕末の志士とも親交を持ち、女傑といわれる大浦慶だが、本書が描き出すのは、どこまでもまっすぐに夢を追い、困難に立ち向かう慶の姿だ。函館と下田の開港で交易を独占していた長崎の優位性は失われ、輸出用の茶葉も嬉野茶から静岡茶にとってかわられ、慶自身もとんだ経済事件に巻きこまれ……。そのたびに、しかし彼女は立ち上がる。〈今こそが私の正念場、戦たい〉
 旧士族ではなく商人、それも女性の側から見た維新の裏面史。朝ドラ、いや大河ドラマにもなりそうだ。》


朝井まかて『グッドバイ』04

 確かに。NHK朝ドラも、主人公の奥さんシリーズが続いているし。
 男性顔負けの女性は、今始まったばかりじゃない。いやいや、過去のほうのが凄い人がいる。むしろ、今の方が、男女平等とか、雇用機会均等法とか言いながら、女性でしかできないこと、女性が放棄してるよね。ボクが女性だったら、子供を産んでみたい。でも、今の女性は放棄してるよね。
 ま、それはともかく、ここの主人公は、油商の娘、お祖父ちゃんは頑張ってた人だけど、お父さんは婿養子、さらには、自分の婿も、なんと1週間で「いらんよ、こんな奴は」そんな主人公は、祖父が一番期待してた主の器。
 幕末から明治初頭にかけて、大浦屋は、油商いから茶葉商いに。しかも、外国相手に。その後、煙草葉で詐欺に会い大没落。が、船舶メンテ部品の製造所、海運業、まさに、大海原に乗り出すとは、彼女のことだ。
 斉藤美奈子さんは、解説で、この小説1冊で3度おいしい点を述べている。

1.主人公の卓越した人物像
 浦賀にペリー提督率いる黒船到来から物語は始まるが、彼女の菜種油を扱う大浦屋の跡を継いで7年。26歳にして堂々たる女主人は、オランダ商船が長崎に入ってきたのを機に、新たな商売に乗り出す。その大海原に乗り出す気骨と野心、そして志は晩年まで変わらないのだ。

2.世界を股に掛けた外国人貿易省との交友
 いやあ、オランダ人のテキストルに茶葉のサンプルを渡すことから、海外との交易は始まるのね。そして、有名なイギリス人のウィリアム・オルトやトーマス・グラバーとの交友も結ぶのね。
 
3.幕末の志士たちとの出会い
 佐賀藩士の大隈重信、土佐の近藤長次郎、坂本龍馬、出てくるわ、出てくるわ。後々、この勤王の志士たちに資金を手渡した女帝とも、風呂場で彼女の背中を勤王の獅子たちが洗った、などという噂もされるようになるのねえ(本人は全く祭りごとへの関心、そのつもりがないけど)。

 さて、さらに、1853年のペリーが率いるアメリカ海軍艦隊の来航から、1858年日米修好通商条約、尊王攘夷運動、1867年の大政奉還、1868年の王政復古の大号令、戊辰戦争、明治に入り、東京奠都・版籍奉還・廃藩置県と、ここには、学校教科書で習った歴史が背景となり、商いの視点での女主の眼で物語が描かれていくのも魅力的だよ。彼女は言う、戦争が好きな男どもがおり、その戦争で儲けようとする輩もいる。
 ボクたちは、この小説で、幕末から明治維新、まさに世界を視野に入れ地球規模で物事を考える、そんなことが学べるのではなかろうか。確かに商いは、儲ける為であろう。でも、彼女にとって、人生の中で、商うということは、人々とどういう交友をすべきか、それが重要だったのではないだろうか。そして今、世界中の人々と手を取り合って、宇宙船地球号という船をどこへ走らせていくべきなのかを真剣に考えるべき時ではなかろうか。
 この小説をNHKは絶対に大河ドラマにすべきだと思う。朝井まかて、凄いと思う。


朝井まかて『グッドバイ』 posted by (C)shisyun


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