川上弘美『風花』 | 空想俳人日記

川上弘美『風花』

 最近小説と言えば、窪美澄を読み始めながら、川上弘美も復活して読んでいる。ボクが二人の小説が好きなのは、女性の観点で「男って奴は」特に、女性に対する性的なことを平気で書いてくださっているので面白い。
 ただ、世の中では、川上弘美は芥川賞作家で、窪美澄は直木賞作家なんだ、芥川賞と直木賞、何が違う。そう思ってた矢先、芥川賞作家も直木賞作家も、最近は、又吉みたいな芥川賞、あれ直木賞だろ、みたいな思いもありながら、この小説を読んでたら、見えてきたよ。

川上弘美『風花』01 川上弘美『風花』02 川上弘美『風花』03

 実は、この小説を読む前に、窪美澄『たおやかに輪をえがいて』を読んだのよ。今回の小説が、旦那の不倫、しかも、本気と浮気が出てくる、そんな話なのに対し、窪美澄の小説は、旦那の風俗通い、娘の年の差大きいバイト先の店長との恋愛だった。
 今回の小説は、主人公のゆり、33歳。夫に恋人がいた、から始まるんだ。里美ちゃん。ところが、彼女だけじゃなく、もう一人いたんだ、これは本人は1回だけだけどと(性交の話。相手の女性の言うのと回数が違う)ゲロ吐くけどね。でも、一方の、のゆりにも男がいるじゃん。歳がメチャ近い兄貴のようなおじさんと、何故か医療事務を一緒に勉強した大学院生。大学院生とはホテルも行っているよ。やったかどうか知らんけど、主人公が「かりん」(これ、何度も出てくる。医者は何でもない一日で治ると言うが何度も「かりん」。これ、川上さんらしい)と首の音がして倒れちゃったら、いつの間にかホテルに。
 実は、ここに登場する主人公は、どんなに読み進めても、窪美澄の小説のように、妻や母であり続けたことに対し、自分自身を見失ってたことに気づくような反省は、何もない。彼女は、夫以外に仲のいい男がいるのも事実。
 さらには、窪美澄の小説で出てきた同級生の話が、同じ様にここにも出てくる。前者は、同窓会がきっかけだけど、ここでは、いきなり電話が。この小説、何度も無言電話。電話は恐怖や不安や予感などまでも孕んでいる。そんな同級生と、いきなり沖縄ツアーしている。このツアーや、医療事務を生かした就職で、いろいろな人と出会うが、だからと言って、そこから何かを学び取る主人公はいない。
 もちろん、本人たちは、それでいい、そう思ってはいないだろうけど、窪美澄は、最後、妻でも母でもない「私」という生き方を推奨している。
 ところが、この小説は、最後、夫婦がお互いに涙を流しながら、奥さんののいりは、「別れましょう」と言う。
 そして、どうなったかは分からない。川上氏は、その後を読み手が空想してフィクションを創り上げよ、そう言っていると思う。何故なら、過去には戻れないが、沢山の未来を選択できるボクたちがいると思うから。
 タイトルの『風花』は、時間はどんどん過ぎていくけど、ぼくたちの人生は、風花のように過去にも戻れない。今を揺蕩うしかない。まるでクラゲのように。時間軸とともに起承転結がある物語ではなく、いつまでも揺蕩う、地面に付くこともなく風に翻弄され、あちこち舞い散らかる雪の花のように。それが現実だと言わんばかりに。そう、現実はフィクションよりも奇なもの。だから、私たちは自分でフィクションを創り上げてばらばらな現実を自分なりに繋げていかなければ生きていけない。
 この小説の結末はない。結末が欲しければ読み手が創り上げなさい。

川上弘美『風花』04

蛇足…各章のタイトルが、のゆりの心のように移ろう季節(「風花」「立春」「文月」「小春」「松の内」「下萌」などなど)を表している様がステキだね。


川上弘美『風花』 posted by (C)shisyun


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