人類史の「謎」を読み解く | 空想俳人日記

人類史の「謎」を読み解く

「ボクは縄文人だが、ネアンデルタール人でもあるかもしれない」
 そう思って、この本を入手した。
 何を馬鹿なこと、みんなホモサピエンスなんだよ、そう言われるであろうが、これも、ひとつのロマンだよ。

人類史の「謎」を読み解く01

[第1章]古代DNAから読み解く人類の進化史
 アウストラロピテクス、パラントロプスは猿人。ホモ・ハビリス、ホモ・エルガスター、ホモ・エレクトス、ホモ・フロレシエンスは原人。ホモ・ハイデルベルゲンシス、ホモ・ネアンデルターレンシスは旧人。
 期待の星、ネアンデルタール人は旧人で、ホモ・サピエンスは新人である。同じ祖先から分岐したネアンデルタール人の記述。
《いくつかの遺跡から、遺体の埋葬とそれに伴う儀式、動けなくなった仲間を介抱した痕跡が見つかっていることから、思いやりの感情を有していたと推測される。》
《スペインのラ・パシエガ洞窟、マルトラビエソ洞窟、アルダレス洞窟では、壁面に手形や赤い丸などが描かれている。これらの壁画が描かれたのは約6万5000年以上前であり、当時はまだ現生人類がヨーロッパにいなかったので、ネアンデルタール人が描いたものと考えられる。ネアンデルタール人が残した最古の芸術と呼んでよさそうである。》
 だから、期待の星なのだ。

人類史の「謎」を読み解く02

[第2章]私たちのなかに息づく「滅びていった人類」たち
 この章の冒頭、本書の監修者である分子古生物学者の更科功氏へのインタビューに目が釘付けになる。
《交雑したということは、ネアンデルタール人の遺伝子がヒトのなかに入ってきたということです。》
《私たち日本人の2%ぐらいはネアンデルタール人由来です。》
 以上のことは知っていた。
《それぞれのヒトが持っているネアンデルタール人の遺伝子をかき集めていくと、70%ぐらいは現生人類のなかに残っていると言われています。一人一人で見ていくと2%ぐらい。で、70%ぐらい残っているということは、30%ぐらいは残ってない、ということです。その失われたもののなかに生殖関係の遺伝子がある。ということは、ヒトの方が繁殖に有利な遺伝子を持っている》
《子供が産みやすかったのか、妊娠しやすかったのか、実際のことはわからないけれど、生殖能力はヒトの方が高かった。単純に言えば多分、子だくさんだった。とにかく何らかの理由でヒトの方が子供をたくさんつくったのだろうと思われるわけですね。子供がたくさんできるということは、進化上ものすごく有利です。》
 へええええ~~~。
《ネアンデルタール人の場合は埋葬もしていたし、歯が悪くなった人が結構高齢になるまで生きていたということがわかっています。つまり周りの誰かが介護していたのですね。そういう思いやりの気持ちというか、ヒトから見てシンパシーを感じられる存在だったのかもしれません。》
 へえええ~、ヒトの男どもは、ヒトの女性よりも、ネアンデルタールの女性に惚れたのかもねエ。
《証拠がないのでネアンデルタール人が話せていたとまでは言えないのですが、舌骨の形態はヒトとほとんど差がない、ということは言える。話せたんじゃないかなあ。》
《ヒトの能力を過大評価しがちですけれど、それはただ単に子供が産みやすかっただけかもしれない。》
《ネアンデルタール人の方が賢かったかもしれない。》
《ヒトが賢かったということを否定するわけではないですが、別に賢い種が生き残るとは限らないですよね。》
《そもそもネアンデルタール人のの方が賢かった可能性というのもあって、絵を描いてたのはネアンデルタール人の方が先だし、脳の大きさで言うとヒトよりも大きかったという説もある。》
《ひょっとしたら絵を描くのが好きだったりするおっとりしたネアンデルタール人が野蛮なホモ・サピエンスに負けた、という見方もできるかもしれなくて、〉

人類史の「謎」を読み解く03

 へええええ~のついでに、この章で見逃せないのは、デニソワ人だ。最近、見つかったばかりのネアンデルタール人とは別種の旧人。
《2010年12月時点の発表によれば、「東アジアで0.2%、ニューギニアなどのオセアニア人だと2~4%の遺伝子がデニソワ人由来である」という。さらにデニソワ人の遺伝子をもっとも多く保持しているはメラネシア人で、6%にも及ぶことが判明した。アジア人が有するネアンデルタール人由来の遺伝子が平均2%なのと比べると、その多さは一目瞭然である。》
 日本人の遺伝子にも、このデニソワ人のモノが多いのかもしれない。

人類史の「謎」を読み解く04

[第3章]そして「日本人が」生まれた
 はじめに縄文人ありき。そして、アイヌや琉球は別として、大陸から弥生時代に渡来して交雑した。そうして、弥生人が誕生した。面白いのは、大陸から渡来したのは、殆ど男だったそうな。つまり、弥生人は、縄文人の女性と大陸の男性とのハーフなんだなあ。
 すでに、縄文人が歴史的に見直されているのは、かつて読んだ『アイヌと縄文』で知った。この本からの引用。
《一万年以上も続いた縄文社会を停滞と論じる以外、どう評価してよいかわからなかった縄文文化の研究者は、「自然との共生」「持続性」というポジティヴなキーワードを手に入れたのです。》
 いわゆる「脱成長」が縄文人にあった、ということだ(「脱成長」を知るには、『マンガでわかる!100分de名著 マルクス「資本論」に脱成長のヒントを学ぶ』がメチャ分かりやすい)。
 そして、『アイヌと縄文』には、こうも書かれてた。
《アイヌが守りとおそうとした縄文思想とは、人びとを「親戚」としてむすびつけるこのような連帯の原理であり、かれらが商品交換を忌避したのは、それが人びとを不平等化し、差別化していく対極の原理だったからにちがいありません。》
 そこで、ボクは、いかに縄文文化が、「自然との共生」「持続可能な社会」であったかを顧みることができる、と。そして、大衆のアヘンであるSDG'Sというウイルスに冒される前に、この縄文人を今一度、振りかえるべきではないか、とも。
 そんな前知識もあったので、この第3章に書かれていることが、「うんうん」頷けるのだ。
《殺傷事件の発見場所と死亡時期が水稲農耕の広がりと多分に重なることから、戦争の原因は農業用水と新たな耕作地をめぐる争いにあったと考えられる。》
《集落からムラへ、ムラからクニへと拡大を続けていけば、クニ同士が衝突する機会も増えていく。水の管理責任者が戦争の指導者も兼ね、その立場が世襲化されれば、その他大勢の墓所とは明らかに一線を画する支石墓が出現したように、階層が顕在化するのも無理はなかった。》
 こうして、現代まで陣取り合戦は続き、格差は広がるばかりだ。

人類史の「謎」を読み解く05

 以上、このムック本は、ボクたちが「今いかに生きるべきか」も示唆してくれている、と思うのはボクだけ?
 もしもだ、ホモ・サピエンスが生き残ったのがたまたまであるならば・・・。ネアンデルタール人がたまたま生き残りホモ・サピエンスが絶滅してたとすれば、この母なる地球を破壊するような進化はなかったかもしれない。
 目覚めよ、ネアンデルタール人の遺伝子よ。目覚めよ、デニソワ人の遺伝子よ。目覚めよ、縄文人の遺伝子よ。


人類史の「謎」を読み解く posted by (C)shisyun


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