堤未果のショック・ドクトリン | 空想俳人日記

堤未果のショック・ドクトリン

 この本を入手したのは、先に読んだ「100分de名著ナオミ・クライン『ショック・ドクトリン』」で、もっとショック・ドクトリンを知りたくなったからだ。

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 ここには、恐るべき世界の裏側、日本の裏側が描かれている。政治家と富裕層が手を組んで庶民を貧民奴隷化する。

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序章 9.11と3.11ー私のショック・ドクトリン

 カナダ人ジャーナリストのナオミ・クラインによる『ショック・ドクトリン』を、この本の著書、堤未果さんが解説されている。なので、和訳すれば、惨事便乗型資本主義なる手口は、おおむね理解したつもりだ。ショック・ドクトリンとは、惨事を利用して国民がパニックに陥り思考停止してる隙に、新自由主義(規制緩和・民営化・社会保障切り捨て)あっという間にねじ込んで、国や国民の大事な資産を合法的に掠奪し、政府とおともだち企業軍が大儲けする手法だ。
 この序章で、先に読んだ「100分de名著ナオミ・クライン『ショック・ドクトリン』」をおさらいさせていただいた。
 そして、この本は、
《現在は、ナオミ・クラインがショック・ドクトリンを世に紹介した2007年当時よりさらに大掛かりなショック・ドクトリンが行われています。デジタル化が進み、情報による大衆操作が可能になったからです。
 そこで、本書のタイトルは『堤未果のショック・ドクトリン』としました。
 (中略)今、昔よりずっとスピードが速くなったこの世界で、何が起こっているのかを多角的に掴み、全体像を見るスキルを身につけるヒントを差し出すための本です。》
 というものなのだ。ありがたや。
 最後に、世界で起きてきたショック・ドクトリンの一覧が載っている。ほぼ「100分de名著ナオミ・クライン『ショック・ドクトリン』」で知識を得たものだ。

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 そして、大事な違和感をチェックするリストも載っている。ありがたや。

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第1章 マイナンバーという国民監視テク

 ここではマイナンバーカードのことが書かれている。当初、マイナンバーカードが世に誕生したとき、ボクは「あああ、日本がまるごとデジタル刑務所になっちまうのかやあ」と思った。とはいえ、一応、カードは取得したよ。
 でも、申請する人が期待通りじゃない、特にお年寄りは。そこで、デジタル庁の大臣である河野太郎氏は、紙の健康保険証の廃止を言い出したのだ。健康保険証が無けりゃ病院へ行けない。かわりがマイナカードなら申請するか、となるからだ。
 これに対し、日弁連は「違法だ」と。個人番号カードは住民の申請によるものという法律に対し、保険証廃止は実質、強制である。だいたい、国民の選択する自由を奪う奴はファシストじゃなかろうか。こういう人を選挙の時に投票している人にも責任あると思う。二度とファシストを選挙で投票してはならない。
 いったい彼の狙いは何なのか?
《銀行口座に運転免許証に年金に学校の成績に母子手帳、ありとあらゆる情報の紐づけ祭りを繰り広げる河野太郎デジタル大臣》
 そう、あらゆるものを紐づけることにより、国民が便利になるのでなく、政府が国民を監視しやすくなる、政府が便利になるということだ。そして、国や国民の大事な資産を合法的に掠奪し、政府とおともだち企業軍が大儲けする機会を増やそうとしているのだ。これこそ、デジタル刑務所化じゃないかい。国民全員を犯罪者予備軍として見ているのだ。そんなアホな。

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 台湾のオオドリー・タンのような人は、日本にはいないのか。彼女は言う、デジタル化で一番気をつけることとは「決して、権力を集中させてはいけません」と。
 つまり、デジタル庁なんかを作るよりも、各省庁でデジタル化を進め、そのデータは分散させておく。そして、デジタルとアナログを共存させて、選択肢を残しておく、これが民主主義社会のあたりまえな姿だ。
 マイナカードは、世界的な動きではない。むしろ日本は逆走している。

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 特に、第二次大戦で日本と同様に敗戦国となったドイツには、納税者番号はあっても共通番号制はない。プライバシーから、一元化された個人番号制度は違法。行政分野ごとに複数の番号管理だ。これが民主主義だ。

 あと、ここでは、「回転ドア」という言葉が登場する。なにか。よく見ると、企業と政府・行政を特定の人が回転ドアを通るように、行ったり来たりしている、ということだ。これは、政治と経済が癒着状態の仲良しこよしだということだ。

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 先の健康保険証なくなってもマイナカード使いたくない人は
《今の保険証は2025年の秋までは使えるので、切れる前に発行先に連絡し、「資格確認書」(氏名、生年月日、被保険者等記号・番号、保険者情報が印刷された紙のカード)を申請してください。作るのは無料、期限は最長1年で、切れてもまた更新できます。ただし、今までの保険証のように郵送してくれないので、期限が切れる前に忘れずに更新手続きをしてください。
 資格確認書は初診で18円、再診で6円の手数料が追加される以外は、暗証番号も顔写真も不要、今までの保険証と変わらず使えます。マイナ保険証を作らなければ、マイナンバーと医療情報を紐づけられることもありません。》
 紐づけされたくない人、マイナカードを持ち歩きたくない人(だいたい持ち歩くのは危険)、マイナカードを作りたくない人は、この方法がいいよね。
 1章の最後に、政府のやりたい放題を止めるための十か条。
《①「デジタル化」「マイナンバーカードは国内パスポートに!」などと前のめりな政府に、最低限のルールを入れるよう意思表示をする
 ②健康保険証の廃止を撤回させる(病院、介護施設、高齢者や障害者をはじめ多くの人が安心する)
 ③カードの取得率で自治体への交付税に格差をつけるのをやめる(住民と地方議会に判断させる)
 ④自分のマイナンバーに紐づいた情報に、いつ、誰が、何の目的でアクセスしたかの履歴を本人がいつでも見られる設定にする(エストニアでは開示請求すれば見られる)
 ⑤デジタルだけにするとセキュリティが弱くなり、取り残される人が出るので、強制せず、デジタルとアナログ両方の選択肢を残した設計にする(台湾を参考に)
 ⑥法律をすっ飛ばして省令だけの利用拡大はNG(憲法>条約>法律>政令>省令であり、明らかに飛ばしすぎ)
 ⑦メリットだけでなくリスクも含めて情報公開し、国民的議論の場を作る。担当大臣が国民の懸念や反対意見をブロックするのは禁止(台湾のオオドリー・タン大臣を参考に)
 ⑧利便性の前に、漏洩、なりすましなど国内外で多発している問題の検証と対策を最優先する。デジタル庁が責任を取らない状態で義務化はしない
 ⑨日本は高齢化社会なので、デジタル化は高齢者に合わせて設計する(複雑にしない)
 ⑩市区町村から送られてくる特別徴収額通知書にマイナンバーを載せないよう、役所や地方議員に要望を出す。自分もホイホイ®提供しない(提供は義務ではない。税金も保険も未記入でも受理してくれる》


第2章 命につけられる値札ーコロナショック・ドクトリン

 この章では、おもに、今回のコロナパンデミック禍におけるショック・ドクトリン。
《現在のWHOの科学諮問委員会を見てみると、15人の委員のうち8人がファイザーやグラクソ・スミスクライン、ノバルティスなど大手ワクチンメーカーと製薬企業から多額のお金を受け取っています。
 さらにWHO自体も、予算の半分を占める民間寄付者の大半がワクチン推進団体とワクチンメーカー、製薬会社なので、もはや中立な公衆衛生の判断がされていると思わない方がいいでしょう。》
 なるほど、WHOもIMFや世界銀行と同じく、国際機関なのに、ショック・ドクトリンのお仲間、ということなんだろうか。中国との関係も怪しいとされた。
 そんな中、日本は、高額のお金でワクチンを爆買いしたよね。

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《国際医療福祉大学教授で、厚労省の新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードメンバーの和田耕治委員は、2022年8月に、ファイザーのワクチンメディカルアフェアーズ部門の部長に栄転。》
《テレビに頻繁に出演し、ワクチン接種を推奨する発言を繰り返していたワクチン分科会の坂元昇委員は、ファイザー臨床開発統括部長を5年務めていました。》
《2022年2月には、東京都がファイザーの日本法人執行役員である宮原京子氏を教育委員に任命。》
 ああ、また回転ドアを行き来する人たちですか。
 既にワクチンを数回接種して入り欧州議会議員の前で、ファイザー幹部のスモール氏が次のように発言。
《「我が社のこのワクチンは、販売前に感染予防効果のテストなどはしていません」》
 ですと。ボクも、コロナワクチンは5回も接種しておるのだが、6回目の案内には、もう応じる気にはなれなかった。
 話によれば、日本は購入したワクチンのうち、2023年2月までに約7783万回分のワクチンが破棄されている。2000億円分をドブに捨てている。なのに、まだ大量につくらせようとしている。どうかしてる。
 あと、ワクチン企業だけじゃない。コロナ禍、外出できず、家でオンラインでリモートワーク、外出時は顔をカメラ付き体温計へ。そうして、家庭でも職場でも、屋外でも監視されまくり。
《コロナ禍の自宅待機政策は、監視カメラ産業にとっての特需となり、Appleの時価総額は2022年1月時点で3兆ドル(約350兆円)を突破。(中略)
 コロナ禍でビッグテックが焼け太るということは、私たちがアクセスする情報を一手に握る民間企業のコントロールがより強くなるということ。》
 そうして、新型コロナウイルスワクチンに否定的な情報を、Facebookは削除したり、Google傘下のYouTubeは、ワクチンに関し、WHOの発信している内容に反する内容やワクチンに否定的なコンテンツの禁止をした。
《日本政府が推進しているのは、国民へのコロナワクチン接種だけではありません。コロナワクチンで緊急承認されて世界同時デビューした、未知の製剤「メッセンジャーRNAワクチン」の国内生産拠点を作り、外資を誘致して経済活性化を図ろうとしているのが経産省です。》
 そして、このコロナパンデミックをきっかけに最も恐ろしいのは、WHOが医療ファシズムを進めていることだ。
《・次回のパンデミックの決定・ロックダウンの指示・監視する権力の保持・治療法の決定・ワクチン接種の義務化・ワクチンの配布と管理・感染症の治療方法の決定・ワクチンの知的財産と利益に管理・土地の利用変更と差し押さえの決定》
 なんですか、これは。大統領や首相より強い権限が、ただの国際機関に、しかも、「今だけ・金だけ・自分だけ」の匂いがする機関に、あかんでしょが。


第3章 脱炭素ユートピアの先にあるディストピア

 脱炭素ユートピアとは、15分都市や太陽光発電などで明るい未来を創ることなのだろうが、実際は、地球環境を守るを盾に、監獄市街地や山林破壊へのディストピアへの道を歩んでいる、そういうことに警鐘を鳴らしているのが第3章だ。
 15分歩けば何処にでも行ける、車は電気自動車以外は特別料金を取ったり、区域外に出る許可の上限を年間100日する、そんな街だそうだ。

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 12歳の少女ジャスミンが、これを「デジタル刑務所」と呼んだのは正しい。
 だいたい、電気自動車が環境にやさしいと2021年、菅総理は「2035年までに、国内で販売する新車は100%電気自動車に」に対し、トヨタ社長は「EV車を急いで普及させると言いますが、それ、逆にCO2は増えるんですが」と。バッテリー生産段階でのCO2排出は馬鹿にならないのだ。
 だいたい、まさか、と思うのは、脱炭素、環境破壊というのは、地球上で行われている新自由主義による暴走成長経済にストップをかけるべきことであるはずなのに、いつのまにか経済に目隠しをするために、われわれ市民・住民の生活を規制することに置き換えちまっている。生活を規制してどうなる。大きな効果が得られるわけなかろう。
 一番効果が得られる脱炭素の方法は、一番CO2を垂れ流している軍隊・自衛隊を世界からなくすことだと、ボクは思う。そして、何かあれば、自家用ジェットで世界中を駆け巡っている多国籍企業の幹部連中が全員、リモート・オンラインで仕事をすればいいのだ。先進7か国会議だって、インターネットでテレビを通じてやればいい。
 3.11後、孫正義社長はソフトバンクが主宰する「自然エネルギー協議会」を立ち上げ、太陽光パネルを全国に普及させようと都道府県首長に働きかけた結果、ほとんどの首長が入会したらしいが、結果、自然にやさしいが、山林斜面を切り拓く、自然に最もやさしくないものになってしまった。この時、入会を辞退したのは、千葉市と岐阜県の首長だけだそうだ。結果、各地方自治体では、太陽光パネル設置の規制条例を作り始めた。山梨では、その条例より「森を切り開いて太陽光発電施設を作らせることは、山梨では今後ない」と。
 3.11で、宮城県は、水と海と空港を売ってしまったことも見逃せない。村井知事は竹中平蔵と親しい新自由主義信奉者で、漁業や水道や空港の民営化を実行してしまった。ショック・ドクトリンの典型だ。

 以上、この本で学ぶことは大きい。というか、ここで、自分の頭で考える重要性が書かれている。それは、特に思考停止しやすい、同調圧力に屈しやすい、パンデミック下で重要になる。
 経済学者フリードマンが唱えた新自由主義がシカゴ学派としてフリードマン・チルドレンを生み、ショック・ドクトリンを狙う連中に育っている。
 堤未果さんも身近で体験した9.11をきっかけに、アメリカが自由大国で亡くなった監視社会。それは、中国と繋がるものがある。見せかけは、アメリカと中国は真逆だが、金儲けの仕方が極めて似ている。それは実は、ともだちなんだよねえ。
 アジアでも南アメリカでもヨーロッパでも、フリードマン・チルドレンが仕掛ける罠に、パンデミックで私たちが思考停止状態をチャンスとして狙い、成功させている。このままでは、政治家と他国製企業の富裕層だけの世界になってしまう。そして、それこそが、地球変動に大きな影響を及ぼしているのだ。
 なのに、私たちは、経済社会を返還する方向でなく、国民一人一人に、しわ寄せをして来ているのだ。国民一人一人にSDG’sを強要する国連もそうだ。本来なら暴走する新自由主義の経済を止めるべく、ケインズ理論の見直しやマルクスの資本論の見直しをすべきなのに、新自由主義で儲けている連中、新自由主義で気候変動をもたらしてる連中、奴らはシカゴ学派の理念のもとに、政治家や国際機関と結託して、1%の「今だけ・金だけ・自分だけ」の世界を地球上で展開しているのだ。
 今回のコロナ・パンデミックで、たくさんのことを学んだはずだ。そして、そのパンデミックの裏で、このようなショック・ドクトリンが行われていることに、もっと注意を払うべきだった。この反省も二度と思考停止せず、俯瞰で物事を注視することの重要性を知ったのではなかろうか。えっ?まだ分からない?デジタル社会がユートピア?便利の過剰って自分で何も考えず、いつのまにか、デジタル収容所で囚人のごとく生きることだよ。おそらく、竹中平蔵も望み、河野太郎も、住基ネットの失敗を自分がしたくない自己保身のために世界とは逆行するマイナカードにこだわるのよ。
 そう思うと、戦後はメチャ苦しんだ台湾が、デジタルに関しては、素晴らしい哲学を持ったオードリー・タンに拍手! 何故に、河野太郎は、彼女をお手本にしないんだろう。何故に、国民の自由を奪うファシストなんだろう。

 最後に、「あとがき」に書かれている、台湾のデジタル担当大臣オードリー・タンの言葉と、1946年夏の国会で答弁した金森徳次郎憲法担当大臣の言葉を残したい。
《「憲法の範囲内でやることです。緊急事態だからといって、決して、権力を集中させてはいけません」(オードリー・タン)》
《「国家緊急権は、緊急事態を理由に憲法が破壊される危険がある。緊急のときは、今ある法律で対応すべし」(金森徳次郎)》
 未来を選ぶ自由を手放してはいけない。選択肢が失われたときファシズムは始まる。そして今、もう始まっている。戦前の治安維持法をご存じかな。大政翼賛会をご存じかな。今、同じ時代に突入している。
 今、改めてケインズ理論やマルクス資本論を考察するときに来ている。
 とにかく、ここに登場する政治家と新自由主義の企業及び経営者は、我々が監視される前に、我々が注意していなければならない。特に、日本のデジタル庁の河野太郎(だいたい日本の議員の2世には、碌な奴がいない。親父はあの右左行ったり来たりの変節漢である河野洋平だが、親父しか見ていないので国民のことなんか何も分かっていない)は、要注意だ。彼は、SNSでも都合のいい人だけにコメントし、都合の悪い人にはブロックしている。ブロックしている人の意見のが、間違いのないコメントであり、ブロックされていないコメントは、仲良しこよしだけだ。こんな人が政治家やってる日本が嘆かわしい。堤未果さんが恐るべき現実を唱えた『デジタル・ファシズム』を築こうとしている人だから、みんなで彼に「おかしいぞ」のコメントを。そして、次回、投票しないこと。


堤未果のショック・ドクトリン posted by (C)shisyun



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