#4 コント 「令和版桃太郎」 | 劇団ししゃも

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地下芸人の売れるまでブログです。
毎日投稿は無理でした。
週一投稿。

 

母親「昔々あるところにおじいさんとおばさんが住んでいました。ある日おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯へ行きました」

 

子供「なんで川へ洗濯に行くの?洗濯機は?」

 

母親「この時代には洗濯機がなかったの。だから昔の人はみんな川で洗濯をしていたのよ」

 

子供「つまり、自宅で出た汚れを川へ不法に遺棄してたってわけ?それって水質汚濁防止法に違反してないの?」

 

母親「…どこで覚えてきたの?そんなの。…この時代にはそういう法律がなかったからいいの!」

 

子供「でも、大昔からそんな自然に対してアグレッシブな日本人が今更SDGsとか言い出しても滑稽だよね」


母親「別にいいじゃない!世界と足並みを揃えて素晴らしいじゃない!なにが言いたいのよ!?」

 

子供「昔話ってだけで現代のニーズに合わせることもせずにただ何となく語り継いできたってところに日本人らしさが溢れてるなぁって思っただけだよ」

 

母親「あんたホントに3歳?!どうすりゃいいのよ…」

 

子供「時代は令和だよ?!今こそ桃太郎も令和版に進化すべきなんだよ!!待ってて!僕が時代に合った桃太郎を作ってみせるから!」

 

母親「いや、別に求めてないけど…」

 

(次の日)

 

子供「完成したよ、ママ。これが令和版桃太郎さ!さっそく聞いてね」

 

母親「…その熱はどっから来るのよ」

 

子供「時は令和。東京都にある老夫婦が住んでいました。夫婦には子供がいませんでしたが、二人はとても幸せでした。若いころは子供が欲しかったのですが、どれだけお互いに体を重ねても二人の間に新たな命が宿ることはありませんでした。意を決した妻は30代のころに不妊治療を受けてみようと旦那に持ちかけましたが、旦那はなぜか非協力的でした。排卵予定日をあらかじめ伝えておいても、帰宅してすぐに酒を飲む始末。当然酔っ払った状態で行為ができるはずもなく、徐々に夫婦の仲は冷め切っていきました。いつからこんなことになったんだろう?一人自宅で家事をしながら妻は目に大粒の涙を浮かべていました。こんなとき子供がいたらなぁ、そう考えながら自宅で一人家事をこなす日々。旦那が家を出てから帰ってくるまでの時間は妻が一人で過ごすには長すぎたのです。大学を卒業してすぐに結婚し旦那の仕事のために生まれ育った古郷から遠く離れた東京に夫婦二人で越してきた。当然こちらに頼れる友人など居るはずもありません。そんなストレスの積み重ねからなのか妻は段々とおかしなことを言うようになってきました。」

 

妻「今日ねあの子一人でハイハイしたのよ」

 

妻「今日はね公園で砂遊びしてたのよ」

 

妻「今日はこの子のためにワッペンを作ってあげたのよ。これが犬で、これが猿で、あっちが雉で」

 

妻「今日のおやつはきびだんごでちゅよ~」

 

子供「まるで、居るはずのない息子を育てているような妻の言動が気になり始めた旦那は妻を病院に連れていくことにしました。そこで医者から言われたのは統合失調症の疑いがある、というものでした。医者からは過度なストレスが原因かもしれないと言われた旦那はこれまでの日々を振り返っていました。不妊治療には非協力的、家事はすべて妻任せ、信頼できる人のいない土地で妻を支えてこなかったこれまでの自分の行動すべてが妻のストレスになっていたのだと旦那はその時初めて理解しました。旦那はその時決めました。これからは何があっても妻を支えていくと。決して妻を一人にはしないと。その帰り道旦那は妻に聞きました。」

 

旦那「なぁ、その子名前なんていうんだ?」

 

妻「ひど~い。名前忘れちゃうなんて。酷いパパでちゅね~」

 

旦那「アハハごめんごめん」

 

妻「…桃太郎よ。この子の名前は桃太郎」

 

旦那「…桃太郎。いい名前だ」

 

子供「妻の手に抱かれているのであろう存在しない赤子を撫でようとした瞬間旦那は確かに聞きました。元気な赤ん坊の泣き声を。」

 

桃太郎「おぎゃあ~おぎゃあ~」

 

子供「心地よい秋風に吹かれながら、旦那は決心しました。妻を妄想の世界から連れ出すのではなく、妻と主に妄想の世界で生きていくことを。二人が選んだ選択はつらく苦しいものでしょう。鬼のような試練が待っていることでしょう。しかし、二人、いや三人ならきっと乗り越えられるはずです。

めでたしめでたし」

 

母親「…あんたホントに3歳?」

              

                    

 

やはり昔話ベースのコントは避けて通れません。

ただ、これ笑うとこなくね?とか思いながら書いてました。

ちなみに自分は鶴の恩返しが一番好きです。

 

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