J.S.バッハ、G線上のアリア、カノン進行、管弦楽組曲、パッヘルベルのカノン、平均律クラヴィーア、トッカータとフーガ 二短調、カノン形式、組曲、序曲、スウィートボックス、ピアノ教室、フルート、クラシック音楽、洋楽、ロック。
 

 

音路85.クヮ クヮ カノン・ベイビー!

(カエル コネクション.4)



前回コラム『音路84.「カエルの合唱」と「音楽の捧げもの」(カエル・コネクション.3)』に引き続き、今回は連載の第4回となります。

今、学校が夏休みに入り、この連載「カエル コネクション」シリーズを、インターネットではなく、紙のペーパーで読んでくれている小学生や中学生、高校生がメールでメッセージを送ってくれて、とても うれしく思っています。
前回コラムで紹介しました、1985年の東ドイツのテレビドラマ「バッハの生涯」の一部も、結構、衝撃だったようですね。
子供たちも、先生方も、ありがとうございます!
これからも、カエル コネクション(かえると つながろう)!


◇カノン進行

前回コラムで、さまざまな かたちの「カノン形式」のことを書きましたが、実は、現代のロック、ジャズ、歌謡曲など、ポピュラー音楽の世界にも、大きな影響を与えており、音楽作曲技法や音楽演奏スタイルのかたちとして存在しています。

「カノン形式」を、芸術の相当な高みの領域まで引き上げたバッハでしたね。
さすが「音楽の父(the father of all modern western music)」と呼ばれる バッハお父さん!
西洋での表現で「すべての近代西洋音楽の父」と呼ばれる所以は、ここにあります。
たしかに、東洋音楽や、欧州以外の各地の民族音楽のお父さんではありません。
後で、またそのことを書きます。

* * *

前回コラムでは、パッヘルベルの有名な楽曲「カノン」のことも書きましたが、実は、現代の人気ヒット曲に多大な影響を与えている楽曲です。
作曲の中で応用され、取り入れられていることが非常に多くあります。
「カノン進行」と呼ばれている形式です。
つまりは、人の心に届く、ヒットしやすい、音楽の黄金パターンのひとつですね。
特に、日本人は好きかも?

このコラム(ブログ)を読んでいただいている方々には、音楽づくりをされない方も もちろん多くおられますので、ザクっと「カノン進行」のことを説明した、サイトページをご紹介します。

音楽教育ビジネス界でもたいへん有名な音楽教室「noah(ノア・ミュージック・スクール)」のサイトの中に、「カノン進行」の解説がありました。

 

 

* * *

ノアさんの説明ページにもありましたが、現代の洋楽・邦楽のヒット曲にも、「カノン進行」を取り入れたヒット曲が相当にあります。
もちろん、この作曲技法だけで楽曲がヒットするわけではありませんが、多くの聴衆が好むパターンがその中に隠れているのは間違いありませんね。

ちょっと面白い「カノン進行」関連の解説動画を…。
さあ、演奏だけでなく、作曲にも挑戦しよう!

月岡彦穂さんの解説

 

カノン進行を使って作曲してみよう

 

カノンの秘密

 

カノンをおしゃれに

 

カノン進行で J POP

 

カノン名曲をエレキで

 

* * *

今は、インターネットで検索すると、やさしい内容から難しい解説まで、各音楽形式を解説する動画がたくさんあります。
音楽を学習しやすい時代になりましたね。
小学校の授業でも、こうした動画を取り入れたら、膨大な負担が減るかも…。

近年は、街の楽器販売店でも、楽器や楽譜の販売だけでなく、楽器の指導教室運営にも積極的になってきました。
リモートでの遠隔音楽教育は、これまでの音楽教育のスタイルを根本から変えるかもしれませんね。
音楽業界… まだまだ やれることはたくさんありそう!

日本のどの分野の業界もそうですが、同業者や同地域だけで固まっていては、未来はやってこないかも!?
生き残ってきた日本企業を見れば、一目瞭然!
そのうちに、J.S.バッハが、三百年前から現代にやって来て、音楽授業を行なってくれるかもしれませんね。


◇バッハからアイデア

さて、作曲家は、何もないところから、新作をつくるよりも、何かの黄金パターンの中から、新しいアイデアを見つけたりすることも多くありますね。
あるいは、思いついたメロディを、黄金パターンの中に はめ込んだりもします。
みな、好きな楽曲や、尊敬するミュージシャンに、いい影響を受けながら、自分なりの新しい音楽をつくっていきますね。

ロックであろうと、ジャズであろうと、千年以上前から脈々と続く、クラシック音楽のさまざまな黄金パターンに、しっかり耳を傾けているミュージシャンも多くいます。

ポール・マッカートニーさん、ポール・サイモンさん、カール・ウィルソンさんら、有名ミュージシャンたちが、バッハからの影響について語る映像です。

トップミュージシャンたちのバッハ解説(英語)

 


◇G線上のアリア

前回コラムで、ドイツのポップス・グループ(ユニット)の「スウィートボックス」の、パッヘルベルの「カノン」のサンプリング曲をご紹介しましたが、今回は、彼らの1997年の世界的なヒット曲「エブリシング・ゴナ・ビー・オールライト」をご紹介します。
この楽曲も、クラシック音楽の名曲をサンプリングしたもので、原曲はバッハの名曲「G線上のアリア」です。

1997年バージョン
♪エブリシング・ゴナ・ビー・オールライト

 

2005年バージョン
♪エブリシング・ゴナ・ビー・オールライト

 

* * *

前回コラムでは、今現代でも よく知られている「パッヘルベルのカノン」が、もともとの原曲と少し違うと書きましたが、バッハの「G線上のアリア」も、もともとの曲と違っています。

「G線上のアリア」は、バッハの作品「管弦楽組曲第3番」の第二楽章「エール」が元になっています。
バッハの生きていた時代は、それほどの人気曲ではなかったようです。

パッヘルベルの「カノン」も、バッハの「G線上のアリア」も、現代風のアレンジで、世界的な人気曲になった、クラシック曲というよりも、人気ポピュラーソングといっていいのかもしれませんね。

* * *

「G線上のアリア」という楽曲タイトルは、バッハの「管弦楽組曲 第3番」の第二楽章「エール(エア、アリア)」を、バッハの死後100年以上後に、ドイツ人 バイオリニストのアウグスト・ヴィルヘルミ(1845~1908)が編曲の際に、ニ長調からハ長調へ移調したため、バイオリンの4本の弦のうちの「G線」のみで演奏することができることに由来するようです。
このバイオリニストは、作曲家ワーグナーのおかかえでしたから、暴君(?)ワーグナーの意向も反映した可能性がありますね。

「エール」とは原曲原題のフランス語で、叙情的な小曲を意味する音楽用語です。
「G線上のアリア」とは、「バイオリンの弦であるG線の上で、叙情的に、美しく踊る女神のような曲」といった意味あいでしょうか… なかなかのロマンチックなタイトルですね。
やはり、あのロマン派の「歌劇王」で、文筆家で、政治家で、猛烈なイケイケ音楽の作曲家ワーグナーの影が…?
「ロマンチックさで、ライバルのブラームスには絶対に負けない!」。

いずれにしても、この編曲、この楽曲タイトル、あまりにもロマンチックな演奏スタイルがなかったら、現代の多くの映画やテレビで使われることもなかったかもしれません。
そして、これほどの人気と知名度になることも なかったかもしれませんね。

* * *

今現在でも、隠れていたクラシック音楽の名曲が、映画やCMなどで使われ、突然 大人気になることがありますね。
クラシック音楽には、作曲家の代表作ではないけれど、負けないほどの傑作が、世に知られていないことも多くあります。
たまたま楽曲に新タイトルが付けられ、世界中に知られることもありますね。

音楽曲だけの話しではありませんが、さまざまな条件が重なって、隠れていたものが、突然、世の中で注目を集めたりすることもあります。
まだまだ これからも、突然 表舞台に登場するクラシックの名曲が出てきそうですね。

* * *

バッハの時代に、下記のような雰囲気の演奏がされたとは、なかなか想像できません。
現代人による、現代人のための「G線上のアリア」演奏ですね。
すぐれた音楽作品は、大化けしながらも、後世に伝えられていきます。

「2チェロス」のひとり、ステファン・ハウザーさんの演奏で…
♪G線上のアリア

 

ホームパーティーや、小学校の授業に、こんな楽団に来てほしい…
♪G線上のアリア

 


◇「組曲」と呼ばないで…

前述のドイツのポップ音楽グループ「スウィートボックス」ですが、数々のクラシック音楽のサンプリングで成功している彼らですので、英語表記で「Suite Box」と思いきや、実は「Sweet Box」です。

甘いお菓子を、たくさん詰め込んだ小箱のような「Sweet Box」の意味ですね。
東京・原宿 竹下通りのクレープ屋さん、駅ナカのケーキ屋さんなどと同じ「Sweet Box」名です。

クラシック音楽には、「管弦楽組曲」や「バレエ組曲」など、「組曲」という呼ぶ音楽用語があります。
英語で「組曲」は「Suite(スウィート)」と書きます。

もともと、このドイツの音楽グループは、最初からクラシック音楽志向であったわけではなく、ポップス志向でした。
それなら「Sweet Box」であるのも、納得できます。

* * *

さて、「組曲(Suite)」について…

「組曲」とは、複数の器楽曲(楽章)を、一定の順番で演奏するスタイルで、そうした ひとかたまりを「組曲」と呼んでいます。
漢字では、「曲の組み合わせ」という意味ですね。
今現代は、構成する音楽のスタイルによって、さまざまな「組曲」のタイプがありますね。

ですが、バロック音楽の時代の「組曲」は、アルマンド、クーラント、サラバンド、ジーグという音楽スタイルの順番に並んでいるものという伝統的な考え方があり、バッハもこれに従っていました。

今、バッハの作品の中に有名な「管弦楽組曲(第1~4番)」という作品群がありますが、バッハ自身は、この作品群を決して「組曲」とは呼ばず、はっきりと区別していたようです。
アルマンド、クーラント、サラバンド、ジーグ ではなかったからで、当時は、フランス風序曲ではじまる音楽スタイルの楽曲全体を「序曲」と呼ぶ伝統的な慣習があり、バッハは、自身のその作品群を「4つの序曲(第1~4番)」と呼んでいたようです。

ちなみに、「G線上のアリア」の元になった、バッハの「管弦楽組曲 第3番」の順番は、「序曲 ~ エール(エア、アリア)~ ガヴォット ~ ブーレ ~ ジーグ」です。

* * *

バッハが「4つの序曲」と呼んだ作品群は、後世の1800年代に「管弦楽組曲(オーケストラル・スウィート:Orchestral Suite)」と名付けられ、長く使われていますが、今、その「管弦楽組曲(Orchestral Suites)」という呼び名を、バッハの呼んだ「序曲(Overture)」に変更する傾向も出てきました。
日本では「管弦楽組曲」という漢字名称が定着していますので変更が難しいかもしれません。
現代の広い意味の「組曲」に合致しているかもしれませんが、「組曲(Suite)」よりも「序曲(Overture)」のほうが、バッハの本来の意向に沿っているのかもしれませんね。

それでは、バッハ自身が絶対に「組曲」とは呼ばず、「序曲」と呼んだ「管弦楽組曲(…バッハさん、すみません)」を…。

リヒター指揮 ミュンヘン・バッハ管弦楽団
下記映像の9分7秒あたりからが、第2曲「エール(G線上のアリア)」です。
♪管弦楽組曲(序曲) 第3番

 

* * *

ここで、「管弦楽組曲 第2番」も…

現代風ロマンチック演奏… もはや中世の香りは、わずかかもしれませんね。
♪管弦楽組曲(序曲) 第2番

 

「第2番」は、フルートなどの まさに管楽器のための楽曲といっていいですね。

「第2番」から、第5曲「ポロネーズ」、第6曲「メヌエット」、第7曲「バディネリ」の演奏です。
フルート、オーボエ、クラリネット、バスーン(ファゴット)だけの四重奏。
♪管弦楽組曲(序曲)第2番から抜粋

 

他の管楽器も黙っていませんよ!
「第2番」から、第4曲「ブーレ1&2」、第6曲「メヌエット」、第7曲「バディネリ」です。
演奏するのは、音楽グループ「モーニン・フロッグス(Moanin' Frogs)」です。
「朝のカエルたち」ではなく、「うめき声をあげるカエルたち」という意味のグループ名ですね。
たしかに、カエルたちの歌声に聴こえなくもない…?
♪管弦楽組曲(序曲)第2番から抜粋

 

* * *

世界中で そのタイトルと旋律が知名度抜群になった「G線上のアリア」が、バッハの傑作「4つの序曲(管弦楽組曲 第1~4番)」を、今の地位まで引き上げたのかもしれません。
特に、フルート奏者や、リコーダー曲大好きの方々には、とても うれしい現象でしたね。

とはいえ、バッハも、天国で たいへん喜んでいることでしょうね。
「G線上の… ありゃ! 何それ? わしの曲のことか? 爺参上!」


◇バッハをジャズで…

前回コラムで「カノン形式」のこと、今回の冒頭で「カノン進行」のことを書きました。
中世のバロック時代からバッハの時代にかけて、ほぼ完成したとも思われる音楽の黄金パターンですね。
バッハから三百年後の私たちも、その黄金パターンを楽しんでいます。

ですので、現代のミュージシャンたちも、音楽ジャンルを問わず、バッハを敬愛する方が多くいます。
ここで、バッハに捧げられたジャズ演奏を少しだけですが、ご紹介します。

ラムゼイ・ルイスさん
♪バッハ・トウ・ザ・ブルース

 

オスカー・ピーターソン・トリオ
♪サリュート・トゥ・バッハ

 

ラロ・シフリンさんのピアノとオーケストラ&ジャズバンド
♪バッハ・トゥ・ザ・ブルース

 

ジャック・ルーシェ・ジャズ・トリオ
♪2007年のバッハ演奏のライブ

 

モダン・ジャズ・カルテットのアルバム「ブルース・イン・バッハ」から3曲。
♪ライズ・アップ・イン・ザ・モーニング

 

♪プレシャス・ジョイ

 

♪ティアーズ・フロム・ザ・チルドレン

 

世の中には、バッハの音楽をジャズ演奏で聴きたいという方々も少なくありませんね。


◇バッハを自由奔放に…

バッハも、モーツァルトも、ベートーヴェンも…多くのクラシック音楽の作曲家たちは、それぞれの時代の人気売れっ子作曲家です。
宮廷音楽、教会音楽、宗教音楽、歌劇音楽、協奏曲、交響曲、歌曲、練習曲、大衆曲など、王侯貴族だけでなく、一般市民にもしっかりと受け入れらることを念頭に音楽を作ろうとしましたね。

そして、世の中に それまで なかった新しい音楽分野の開拓を、猛烈に過激に追求した作曲家たちでした。
いってみれば、今現代の、追求タイプのロックミュージシャンにも似ています。
バッハも、当時の欧州のそこらじゅうの音楽を吸収しようとしましたね。
もし、彼らが今現代に生きていれば、流行の音楽スタイルや、ダンスミュージック、ロックミュージック、ジャズなどに興味を示さないはずはないと思います。

ここからは、バッハの楽曲を、さまざまな自由なスタイルで演奏する音楽動画をご紹介します。
バッハが、現代楽器を目にしたら、それは それは 驚くでしょうね… でも、その楽器の魅力をすぐに見つけてしまうことでしょうね。

* * *

現代の今は、さまざまな楽器の演奏や歌唱に際し、ミュージシャン個々の感性や考え方がたくさんあり、その表現方法は、基本的には、本人の自由です。
バッハの時代やバロック時代の音楽は、楽曲自体には多くの喜怒哀楽が盛り込まれていたとしても、素朴な楽器の特性や、それまでの音楽の歴史、政治や文化などに影響され、比較的、感情を押し殺したようなシンプルな演奏スタイルが主流であったといえますね。
そうした中で、聴衆に感情や思想をしっかり伝えるには、より高度な作曲能力が求められたかもしれません。

バッハ自身が、自身の曲を、どのようなスタイルで演奏してほしかったかは、はっきりわかりませんが、今現代は、まさに演奏者の自由そのものです。
聴く側も、感情たっぷりの演奏を好む方、作曲された時代に忠実な演奏を好む方、楽譜に忠実なシンプルな演奏を好む方など、千差万別ですね。
正解はないと思います。
今は、作曲家とは別の、演奏者たち個々の才能や表現を楽しむことができますね。

* * *

今、バッハの音楽は、楽曲自体の魅力により、クラシック音楽分野以外の多くのミュージシャンにも相当に演奏されています。
自身の音楽作品を、自身の死とともに消滅させていったクラシックの作曲家も中にはいますが、音楽作品が、作曲家の手を離れ、ひとり歩きを始めることは当然のことなのでしょうね。
だからこそ、音楽は面白く、自由で、さまざまな壁を乗り越え、未来を開いてくれる気がします。

数百年後も、自身の音楽曲が、多くの人に愛され続けられていると、バッハは想像していたでしょうか…。
自身の音楽が、時代の壁をぶち破り、未来への扉を開いたと感じていたでしょうか…。

* * *

それでは、バッハの楽曲を、さまざまな自由なスタイルで演奏する音楽動画をご紹介します。
まずは、クラシック音楽界のピアノの巨匠のお二人に、さまざまな「壁」をぶち破っていただきます。
自由奔放、圧倒的なパワー、「私そのものが音楽」というお二人…。

クラシック音楽のピアノの女帝 マルタ・アルゲリッチさん…。
絶対音感…、調性… そんなものは どうでもいいのよ、私がやっつけてやるわよ!
彼女を見ていると、音楽の才能や実力は、それらとは まったく関係がないということが、よくわかりますね。
♪トッカータ (BWV911)

 

グレン・グールドさんのピアノ演奏で…。
オレを枠にはめようとする奴は誰だ!
オレは、アーティストじゃない!
芸術は、驚異と静寂の狭間にある!
♪平均律クラヴィーア曲集 第2巻より「第9番」の「フーガ」

 

この、グールド演奏曲「フーガ」を、ヤマハのクラビノーバで…
♪平均律クラヴィーア曲集 第2巻より「第9番」の「フーガ」

 

* * *

清水靖晃(しみず やすあき)さんのサックス演奏…。
オレのバッハはこうだ!
♪ゴールドベルク変奏曲より「アリア」

 

セルダム・シーンの、リコーダーのバッハの世界…。
パパ・バッハ… リコーダーもお好きでしょ!

個人的に、帽子かけのような でっかいの一本欲しい!
♪ゴールドベルク変奏曲より「アリア」

 

ギリシャ神話にも出てくる古楽器「パンパイプ(パンフルート)」で演奏…。
♪管弦楽組曲 第2番より「ブーレ」

 

* * *

ロック・ポップス音楽ファンの皆さま、お待たせしました!
カノンを… カモン・ベイビー!

♪バッハ・ミーツ・ロック

 

♪G線上のアリア

 

♪主よ人の望みの喜びを

 

♪無伴奏チェロ組曲 第1番より「プレリュード」

 

LEOさんの琴演奏
♪無伴奏チェロ組曲 第1番より「プレリュード」

 

♪目覚めよと呼ぶ声が聞こえ

 

古沢巌さんと葉加瀬太郎さん
♪「二つのバイオリンのための協奏曲」より

 


◇触って、確かめて、乗り越える…

バッハの「トッカータとフーガ 二短調」を一気に!

 

 

 

 

 

「トッカータ(toccata)」という音楽用語は、本来、自由に即興的に演奏するスタイルを意味していたもので、イタリア語「toccare(トッカーレ:触る・感触)」が語源で、英語では「タッチ(touch)」になりました。

「トッカータ」の由来は、教会の楽器を触って「試し弾き」することを意味しているという説もありますが、ひょっとしたら、教会で神様にタッチして、その感触を音楽で確かめるような意味あいだったのかもしれませんね。

* * *

コラムの冒頭で、バッハが「音楽の父」と呼ばれていることを書きました。

彼の、音楽への好奇心と探求心は、並外れたものがあったように感じます。
当時のヨーロッパの主な音楽スタイルのすべてに楽曲を残します。
宗教曲をはじめ、国境、民族、音楽スタイルを越えて、さまざまな音楽を学び、吸収し、実際に作品にしました。
敵国の音楽スタイルだろうが、おかまいなしです。
彼よりも古い時代の音楽でさえ復活させます。
自身の曲であろうと、他人の曲であろうと、思いついたら、次々に編曲します。
楽譜をやさしくして、若者の練習曲にもします。
当時のバッハには、作れない音楽スタイルが存在していなかったようにも感じますね。

今でいえば、クラシックも、ロックも、ジャズも、ポップスも、カントリーも、歌謡曲も、民謡も、童謡も、伝統音楽も、映画音楽も、宗教曲も…といったところかもしれません。
バッハが三百年以上生きられる人間であったなら、きっと、今現代に、ヒット曲連発の偉大なメロディ・メイカーと呼ばれたかもしれません。
バッハを越える「音楽の父」が今後あらわれるとは、ちょっと想像できませんね。

そんな「パパ・バッハ」なら、今の音楽家たちに、こんなことを語るかもしれません。

ミュージシャンたちは、音楽ジャンルという「ぬるま湯」に甘んじてはいけない!
本当に、ひとつの音楽スタイルだけに固執していて いいの!?
あなたは、本当に、その音楽スタイルだけのミュージシャンなの!?
トッカータ! 触って、確かめよ!
リスクはチャンス! ミュージシャンとは、乗り越える者たち、ぶち破る者たち!

第6回のコラムで、バッハの実際の、心に刺さる名言の数々を紹介します。

楽曲「トッカータ」の最後のタッチは、世界中で好評を得た、1980年の「sky」の演奏です。

 

* * *

ちなみに、ヴィヴァルディも、現代では…
♪四季の「冬」ほか ハイライト

 

♪モダン・バージョン・オブ・ヴィヴァルディ

 

もはや音楽職人の域をはるかに超えた、新しい音楽を次々に生み出す芸術家で、革新と自由の塊りのような人物の、バッハやヴィヴァルディが、こうした演奏を好まないはずはない…?

世界の一部の若いミュージシャンたちは、確実に変化し、進化し、挑戦を始めていますね。
音楽は 変化を恐れない!

さて、パッヘルベルも、下記映像の中のどちらの「カノン」を好んだでしょう。
バッハの兄の結婚式で実際に演奏された、パッヘルベルの「カノン」は、どのような演奏だったのでしょうね?
♪ロックルベルズ・カノン

 

* * *

「バッハ」や「トッカータとフーガ」のことを書いてきて、あのスーパー・プログレッシブ・ロックバンドのことを書かないと、プログレ音楽ファンの方々に叱られてしまいそうです。
第8回(予定)のコラムで、戦車怪物のような織田信長のお話しといっしょに、たっぷり書くで タルカス!


◇あなたのために…

前回と今回のコラムで、「カノン形式」、「カノン進行」のことを書いてきました。

音楽の世界だけでなく、文学などの文章の世界でも、演劇などのお芝居の世界でも、建築や工芸などの造形の世界でも、特定のルールのもとのスポ―ツの世界でも、法則や理論を探求する学問の世界でも、もちろん映像や歴史研究の世界でもそうですが、人間がそれを何度も繰り返す中で、これ以上ないような心地よさや満足感を感じる、ある法則やパターンがあったりします。

音楽の中にある「カノン形式」は、古い歴史の中で誕生したスタイルですが、紛れもなく、人間が好む、心地よくて仕方のない音楽パターンのひとつといえると思います。
音楽ジャンルは関係ありませんね。

こうした法則やパターンは、古い時代のままの形式を、今もそのままというわけではありません。
時代とともに、変化、進化していますね。

* * *

現代のヒット曲が、魅力的なイントロで始まり、1番の歌の後に、同じパターンの2番があって、その後の間奏部で楽器のカッコいい楽器のソロ演奏があって、最初の1番に似た3番があって、最後は転調などをして盛り上げて終わる…、これもヒット曲の黄金パターンのひとつですよね。
多くの人が、この音楽パターンに酔いしれます。
現代のヒット曲のパターンも、人間が感じる心地よさの循環パターン「様式美」ですね。
ロックにも、ジャズにも、歌謡曲にも、他の音楽ジャンルにも、さらに細分化された、それぞれの黄金パターンがあったりします。

ミュージシャンたちは、さまざまな形式を利用したり…、複数の形式を組み合わせたり…、新形式をあみ出そうとしたりして、自身の音楽世界を構築していきますね。
三百年前のバッハと同じように…。

そして、バッハなら声高に こう語るかもしれません…
「Suite(組曲)の様式美」と「序曲の Sweetで優雅な様式美」の違いを、「頭」ではなく、しっかり「心」で受けとめなさい!
音楽は、本来は、王様(権威)のためでも、神様(宗教)のためでも、生活(音楽家)のためでも、名誉のためでも、教育のためでも、科学のためでも、ビジネスのためでも、戦争のためでも、未来のためでもない…。
時を越えて、そこにいる あなた自身のために、私の音楽が そこにあれば、それでいい…。

バッハの音楽は、これからもずっと、多くの人に愛され続けるに違いありません。


◇クヮ クヮ カノン・ベイビー!

田んぼのカエルたちの合唱の中にも、何かの黄金パターンがあるのかもしれません。
「あいつらの種が、あのパターンでくるなら、オレたちは、別のパターンで歌ってやろう」と相談しているカエルたちが きっといます。
これから、新しいパターンの歌声で鳴くカエルたちが登場してくるかもしれませんね。
いや すでに、田んぼのカエルたちは、人間に気づかれないように、輪唱を行なっているかもしれませんね。

ひょっとしたら、古代の人類は、カエルたちのさまざまな合唱パターンを耳にして、人間の音楽パターンを作っていったのかもしれません。
私は、バッハの楽曲「音楽の捧げもの」や「ゴールドベルク変奏曲」などが、童謡「カエルの合唱」と、しっかり コネクション(つながっている)していると感じています。

前回コラムで書きました、カノン形式の傑作であるバッハの作品「音楽の捧げもの」は、フリードリヒ大王や、さまざまな神様、多くの一般聴衆に捧げられた音楽ではなく、実は、カエルたちへの、まさかの「捧げもの」だったのかも…?

もし「カエルの合唱」の歌詞にある「クヮ クヮ クヮ」が、実はカエルの鳴き声ではなく、カノン形式の「カノン」の「カ(クヮ)」だったとしたら…!

* * *

夏休みは、子供たちや 学生さんたちが、音楽や楽器を始めることの多い時期です。
幼稚園や保育園にいる、音楽に触れ始めたばかりの かわいい子供たちも…、音楽大好きの若者たちも…
さあ… カノン・ベイビー!

この曲も…、さあ 銀河に向かって 出発進行!カノ~ン進行!
カエルちゃんも カモ~ン! マリンバ・カノ~ン!
♪銀河鉄道999

 

* * *

次回と次々回のコラムでは、「ザ・バッハ・ピアノレッスン」とでも言っていいような、「インベンション」、「平均律クラヴィーア」、「アンナ・マグダレーナ・バッハのための音楽帳」のお話しです。

* * *

 

2022.8.7 天乃みそ汁
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「カエル コネクション(かえると つながろう)」連載予定・仮題
回数が変更になる場合があります。
(第1回)怖いケロ、甘え上手!
(第2回)蛙大王は、バッハか、チャイコフスキーか?
(第3回)「カエルの合唱」と「音楽の捧げもの」
(第4回)クヮ クヮ カノン・ベイビー!
(第5回)愛の Four Hands!
(第6回)バッハをインベンション!
(第7回)作家たちの愛した蛙
(第8回)城下町にいる蛙、アルプスの頂上にいる蛙
(第9回)信長の三本足のカエルはどこいった?
(第10回)蛙化現象は恋愛だけじゃない!
(第11回)「かえる」って、素敵!
(第12回)虹を渡ってつながろう!

 

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