視点の問題 | 小説の書き方教えます

小説の書き方教えます

現役プロの小説家「子竜 螢」が、文学賞受賞へと導きます  KEI SHIRYU 

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下の項目をお読みください。


今回は、前回の記事へコメントにて質問をいただきました

のでお答えいたします。




小説教室に通っています。
上記文章、他のブログから抜粋しました。
これと似たことを先生が説明するのです。
でも、どっちが主人公かはっきりしません。
正しいでしょうか。
もう、教室をやめようと思っています。




ご質問には他のブログに掲載されていた小説文が添付

されていたのですが、当ブログで勝手に掲載するわけに

はいきませんし、勝手に批評もできません。


とはいえ、疑問に感じられたのは当然でして、理由を明確

にするため、子竜なりの例文にて説明いたしましょう。




孝史の言葉がひとつひとつ美佐江の胸に突き刺さった。

強引なまでに迫ってくる孝史は、なおも言う。

「好きだって言ってるのがわからないのか!」

美佐江が思わず後ずさりすると、孝史の感情がついに

爆発した。

「俺を誰だと思ってるんだ!」




こんな感じですかね。誰が主人公かというより、視点の

問題だと思いますよ。


美佐江の視点で書かれているはずなのに、なぜか孝史

の視点のように思えてしまう文章ですね。


どこが悪いのでしょうか。




誰を視点者にするか、それによって小説の質がガラリと

変化してしまいます。


その場にいる人物なら誰でも視点者になりえますし、書け

ないわけでもありませんので、視点者の選定は意外に重

なのです。


子竜の場合、甲乙つけがたいときには、その場面にいる

全員の視点で書いてみて、もっともいいと思うものを後で

選んだりしています。




要は、その場面で何をもっとも描きたいか、ということで

すね。


人物の心理でしたら、本人を視点者に。

人物の容姿でしたら、本人以外を視点者に。




この例文の悪いところは、美佐江の視点のはずなのに、

美佐江の心理描写がまったくないまま、孝史の言動ば

かりが表に出ているところですね。


美佐江の心理をちゃんと挿入しないなら、いっそ孝史視

点で書いたほうがスッキリするかもしれません。




ご質問された方は、主人公がはっきりしないとのことで

したが、そうではなく、これは視点の問題であり視点者

選びの問題なのです。


文学賞突破マニュアルでは、視点の問題に真正面から

挑んでおりまして、全体のおよそ2割も割いております。


マニュアルのおかげで視点の問題に悩むことがなくなっ

たとの声は多いですし、視点の問題にここまで取り組ん

だ書き方本はありません。


この例文のような作品を書くことは、もうなくなるでしょう。