人物のプロフィール | 小説の書き方教えます

小説の書き方教えます

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今回は、人物プロフィールの提示の仕方についてです。




何人称でも同じなのですが、とくに主人公のプロフィール

を提示することは、読者への最低必要な配慮ですよね。


だかといって、こんな提示の仕方をしても、読者は呆気にと

られるだけです。




わたしは佐藤由紀、32歳の主婦。明倫大学を卒業してから

三和自動車工業に就職して、そこで同じ郷里福島の西野守

と結婚しました。西野の両親は実家で暮らしており、わたし

たちは2キロほど離れたアパートで生活しています。結婚7年

目にして授かった長男の進は2歳になりましたが、そろそろ守

の両親との同居も考えなくちゃいけないようです。




一度読んだだけでちゃんと覚えられた人は、手を上げてく

ださい。


おやっ、誰もいませんね。


だったら、なぜこんな書き方をするのでしょうか。


じゃあ、5回読んだら覚えられますか。


うーん、それでも難しそうですね。100人もいるのに、手を上

げた人はたった4人ですか。




こんなことになる理由はわかりますよね。


一度に一気にプロフィールを提示するからでして、その間は

ストーリーの進行もストップしていますから、読者にとって読む

のは苦痛でしかないのです。


いいえ、読まされる、といった感覚でしょう。ほとんどの読者は

この部分だけスルーしてしまうかもしれませんね。




プロフィールは、物語のなるべく早い時期に提示しなくては

なりませんが、かといって慌てますと、上記のようなものに

なってしまいます。


コツとしては、小分けにすること。


地の文でも会話文でもいいですから、ストーリーの中へさり

げなく混ぜましょう。こんな感じにします。




「ねえ、もうすぐ進の誕生日よね。2歳になるからなにか知恵

のつく玩具でも買いましょうか」

専業主婦の由紀には痛い出費になるので、夫の守に相談し

てみた。

「いっそ、俺の両親も呼んで盛大なパーティーにしよう。2キロ

しか離れていないから、車ですぐに迎えに行けるしね」

守は相変わらず行動的だった。1児のパパになっても、わた

しが明倫大学を卒業後に就職した三和自動車工業で出会っ

た頃と少しも変らない。

「まあ、きっと進も喜ぶわ」

「そうだろうね。ここ福島はやっと復興したばかりで、今まで

どこにも連れて行ってやれなかったしな」

震災のせいもあって、結婚7年目にしてようやく授かった子供

だった。

「でも、このアパートじゃパーティーするのに狭くないかしら」

「進も大きくなってきたから、そろそろ親父たちとの同居も考え

なくちゃならないだろうね。よしっ、どうせなら親父たちのところ

でパーティーをやろう」




こうやって、会話などの中へ小分けにして混ぜますと、大体の

ことは覚えられるのです。


大学名や会社名まではさすがに覚えにくいでしようけれど、

大卒であることと自動車の会社というだけで事足ります。


そして、なによりストーリーが進行しています。


さらには、夫の守の性格までをも少しですが表現できる機会に

恵まれるのです。




最初の例文を読むのが苦痛だった人は、手を上げてください。


やっぱり70人くらいいますね。


じゃあ、修正したほうはどうですか。


おおっ! これは凄い。誰もいませんね。


みなさんわかりましたか。人物のプロフィールってこんなふうに

書きましょうね。それでは、今回の講義はここまでです。