彼と彼女 | 小説の書き方教えます

小説の書き方教えます

現役プロの小説家「子竜 螢」が、文学賞受賞へと導きます  KEI SHIRYU 

※添削をご希望の方は、必ず「添削希望の方へ

お読みになった上で、お申し込みください。

作品の枚数もご記入願います。


文学賞突破マニュアル」をご希望の方も、タイトル

下の項目をお読みください。


今回は、彼と彼女にまつわる話です。




早くも10月になりました。これから来春にかけまして

文学賞の応募締め切りラッシュを迎えます。


そのせいでしょうか。添削サービスの希望者が集中

しておりまして、うれしい悲鳴が出そうな感じです。


添削を受けたことで、一次突破、二次突破などのご

報告があったなら、どんなに嬉しいことかと思います。




さて、彼と彼女についてですが、なぜか純文学を志

す人たちは積極的に使いたがる傾向のようです。


なぜか、と申しますのは、本来の日本語とは違う意味

での使用だからです。




本来の日本語では、恋人のことを意味します。


第三者を意味する代名詞としての使用というのは、

語の時間じゃなく英語の授業で習ったはずなのです。


英文を直訳すると適切な日本語がないので、彼と彼女

になってしまいました。




いや、そんなことはどうでもいいのです。


原稿が印刷されて書籍となり、全国の書店に並べられて

たくさんの人にお買い求めいただいているのがプロ作家

の仕事ですよね。


だから読者に誤解されるような文章は書けないのです。

この部分はこういう意味なんですよ、なんて一人一人に

説明して回るわけにはいかないのです。


登場人物が男性も女性も複数いる場合、プロなら絶対に

名前で書きます。彼や彼女と表現しますと、読者によって

は違う人物を思い浮かべるかもしれません。




いいえ、勘違いと誤解は読者のせいじゃありませんよ。


作者は誰のことなのか当然わかって書いているのですが、

読者にとっては当然じゃありませんからね。名前が出てくる

まで、以前読んだところを遡る手間が増えてしまいます。




いやいや、そんな程度のことじゃなく、もっと大きな間違い

を犯していることに気づいていない作者もいるようです。


一人称では主人公視点なのに、主人公のことを彼や彼女

と表現するのは、明らかに視点のブレですよね。


いつの間にか彼や彼女と表現するようになっていて、間

違いだと気づいていないから厄介なのです。


そういう悪い例文を、以下に提示してみましょう。




谷本満は思わずため息をついた。彼の勤務する会社が今月

いっぱいで解散すると先輩から聞かされたからである。




どうでしょうか。子竜が読みますと違和感を感じて仕方があ

りませんが、違和感を感じないという人は要注意ですよ。


主人公の谷本満視点なのですから、第三者を意味する彼

を用いるのはおかしいのです。


まさか、一人称の代名詞としても彼や彼女が機能すると思っ

いるのでしょうかね。


その場にいない人物、すなわち第三者に対して用いるのが

彼と彼女という代名詞の正しい使い方なのです。


文学賞の選考では、視点のブレが大きな減点となりますか

ら、注意してください。




というより、前述しましたように、会話文の中で用いる以外は

必ず谷本という実名で書く癖にしましょう。


複数の同性人物がすでに登場している場合、誰のことを意味

しているのか、読者にはわかりづらいのです。


会話文でなら用いてもいいのは、それが人物の発言なので

仕方なく、というギリギリの許容範囲を示したものですので、

その場合でも実名で書く癖をつけましょう。


ちょっとカッコ良さそうだから、とか、文学ではみんな使ってい

るから、という理由での使用はやめましょう。