人物の登場のさせ方 | 小説の書き方教えます

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現役プロの小説家「子竜 螢」が、文学賞受賞へと導きます  KEI SHIRYU 

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下の項目をお読みください。


今回は、人物の登場のさせ方についてです。




プロよりも文章表現が上手なアマチュア作家はたくさん

おられます。


子竜も添削を引き受けたときにハッとさせられる文章の

人が何人もおられました。


でも、並みのプロよりも文章上手であっても、大きな欠点

があるから文学賞に入選できないわけでして、今回は、

その欠点についてお話しましょう。




一般論として、アマチュアは登場人物の紹介の仕方が

とても下手ですね。下手というよりも、読者の都合をまっ

たく無視している感すらあります。(すみません)



自分のことを言われている、といって怒らないでくださいね。


以前にそういうメールをいただいたことがありまして、どう

いう書き方にすればいいのか悩んでいる最中なのです。


しかし、悪い例を書きませんと、良い事例へと誘導できな

いものですので、どうかご容赦願います。




人物登場の下手さというのは、一度に何人も一気に登場

させたり、主人公のプロフィールを羅列してしまうことです。


作者になる前は読者だったのですからわかるはずなので

すが、一度にいろんな情報を提示されても、読者は頭に

入らないのです。


あれっ、この名前の人物はどんな人だったっけ、と何ページ

も遡って読み直した経験は一度くらいあるでしょう。


そんな作品はとても煩わしく、読みにくいですよね。


でもね、多くの人が作者になった途端から間違いを犯して

しまうのです。




先日の記事で、冒頭ではまずストーリーを進めましょう、と

お伝えしました。


主人公のプロフィールや置かれている状況などは、会話

文などで小分けにしてゆくのです。


他の登場人物も同じでして、一度に多人数を登場させたり

多くの情報を羅列するのは避けましょう。


そして、人物たちが読者の印象に残るよう、必ずイベント

を用意してください。


ただ誰かと誰かが座って会話しているだけですと、印象度

は低くなってしまうのです。




30キロ付近で、ようやく6人ほどの先頭集団に追いついた。

とはいっても、息はもう限界に近く、集団の最後尾に浜田の

姿がなかったなら、追いつこうという気力すら生まれなかった

かもしれない。


はい、ここで浜田という人物が出てきましたね。


どうやらマラソン大会に出場中ですが、主人公と浜田の情報

はまだ何ひとつ提示されておりません。しかも、マラソン大会

というのは、印象に残るイベントとしても充分です。


このように、とりあえずストーリーを進めておいて、ここから情報

小分けして提示してゆきます。




「なんだ小田か。。。お前も出場していたんだな」

「ああ、同じ高校の陸上部だった浜田が出場すると聞いたから」

小田は今にも絶えそうな息のまま、途切れぎみにようやく答えた。

浜田が、まだ余裕がありそうな声で、懐かしそうに言った。

「そういえば、いつも小田がアンカーだったよな。車椅子のお母さん

がいつの大会でもゴールで待っていたのが、今でも覚えている」


マラソン中に会話ができるものかどうか、そういう細かな部分は

例文ですのでご容赦願いますが、このように主人公と浜田の

関係や、主人公の母親の境遇のことまで、少しずつ提示しますと

読者は覚えやすいのです。


この後、沿道の描写などを挟んだりして、マラソン大会という情景

を盛り上げつつ、会話に戻るのもいいでしょう。


要は、工夫です。工夫することが小説執筆の面白さですからね。