厄介な会話文 | 小説の書き方教えます

小説の書き方教えます

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当ブログは小説の書き方について述べている

ものですが、小説を書く人も書かない人にも、

か参考になればと考えております。


今回は、会話文についてです。




ダメな作品の多くは、ろくに描写もせずに無駄な

会話が多いことでしようか。


「ごめんください」

「はーい」

「ご主人はいらっしゃいますか」

「どちら様でしょうか」

「何々と申します」

「主人は留守にしております」

「困りましたね。期限が過ぎてるんですよ」

「何の期限でしょうか」

「聞いてないのですか。借金返済の期限ですよ」


上の例のように、現実にはこのような会話になる

としても、小説の中でやりますと、ダラダラした感じ

しかありませんよね。


次のように書き直さなくてはなりません。




一人の男性が夫を尋ねてきた。背広にネクタイという

普通のセールスマンに見えなくもないが、目つきは

鋭く、応対に出た美佐子は少したじろいだほどだった。


男は夫と同年代と思われたが、少し若いのかもしれず、

丁寧な物腰とは正反対に、威圧的な眼光を遠慮もなく

美佐子に浴びせてくるのだった。


「何々と申しますが、ご主人は?」

「あいにく留守にしております」


夫が留守であることを告げると、男は小さく頷いてから

持っていた鞄を玄関の土間に下ろし、中から一片の

書類を取り出した。


「これは、ご主人が当社から借り入れされたときに

書いていただいた借用書です。ご主人の筆跡に

間違いございませんね」


男の口調は、いかにも事務的な感じだったが、美佐子

に向けてくる視線の強さは、一段と増していた。




どちらが小説らしいかはともかく、どちらのほうが状況

を正確に伝えているでしょうか。


もちろん、後者ですよね。


残念なことに、ネット上で掲載されている作品の多くが

前者のような作品です。


会話文は単独で成り立つものではなく、描写との協力

関係によって相乗効果を生み出してくれるものなのです。