朝のシャツに袖を通すときのひんやり感

これを味わっているうちは

まだ春は来ない


夕べの雨でぬれた傘を庭に広げて

切り取られた黒い影が今の時刻


乾ききったシクラメンの鉢に水をやると

しゅうしゅうと音を立てて吸い込む


世界がいっせいに雨に濡れるときには

一体だれがこの「しゅうしゅう」を出しているんだろう


夜のシャツをハンガーにかけると

くっきりした一日が浮かび上がる

袖の折り返しにさえも今日の僕が居た

ロールケーキのうずまきのしっぽ

始まりなのか終わりなのか

わからないことはまだいっぱいある

小さな白い花びらが

風に散って

思いがけない淡い香り

それでいて

強い生命力を感じさせる花

スパゲティーをゆでている間に

考えることといったら

君のことばかり

だからいつもついうっかり

アルデンテを逃してしまう

君のうなじに

口付けしたら

不思議なんだけど

サラダが食べたくなった。

桜咲いたら

会いに行くと決めていた


今日か昨日か

やっぱり明日


眠っている間に

花びらは解けて


やっぱり今日

君に会いに行こう

風の色が見えれば

その一筋を束ねて

あなたに届けよう

春のメッセージとともに

まぶしすぎる光の中に君をみつけた。

カレンダーが1月先に進んだような日差し。

目に飛び込む色々が美しい。


夕暮れが惜しくなる季節が始まって、

今日もまたさよならが言えない。


毎年春になると、公園の沈丁花の香りがお風呂場に立ち込める。

この香りはいつでも、涙を誘うから嫌い。


甘酸っぱい思い出や孤独を引き連れてやってくる。


それでも、なぜか今日も一輪、花を手折って水差しに生けている。