もう驚きもしなかったけれど、
やはり母、クマ姑は特別養護老人ホームに入居するという
朝(というか、昼)になって、お昼ご飯を割と穏やかに
食べてから、私がまとめた荷物を見て慌て始めた。
「今日なの!?」
「はい。車椅子で乗るタクシーが1時40分に来ますよ」
「1日だまされた!やることが沢山あったのに!」
いや。今週毎日朝晩何十回も話してきたでしょうよ。
昨日の夜も明日だからって挨拶したでしょうが。
私に「あなたにもお世話になったわね」って
言ってくれたじゃないですか。
「私が明日、荷物を運びますから、
なんでも言ってください~」
「これは(シンピジュームの花)もらえないの?」
「植木鉢は部屋には持っていけないんですって」
「ベランダとかないの?」
「ないですねえ」
「どこかに置けるでしょ?」
「切り花ならば置けるかもしれません」
「それじゃダメなのよ!来年も咲かせるんだから!」
「それは私ががんばりましょう~」
そんな具合で、もう10分置きくらいに、穏やかな会話が
パニックに変わり、ちょっと落ち着いてはまた怒る、
の繰り返しを数回やってくれました。
自分の部屋を指さして、
「私は明日ここへ帰ってくるのよね?」って・・・。
「いいえ。クマ姑さんは引っ越すんですよ。
もう帰って来ないんですよ。
私もここから引っ越しますからね」
「えええ!聞いてないわ!」
嘘つくな。
家中のカレンダー全部に書いてあるでしょうが。
現地に着くと「ここには前に来たわ」と始まり、
「ここは初めてですよ。来たことないですよ」と
繰り返す羽目になり、焦ったのは私でした。
何せ、過去に行ったショートステイ先や3年住んだ
老人ホームは嫌悪感しかないので、
ここでぐずられたら終わりだったからです。
しかし、建物に入ると広々としたホテルのロビーのようで
「ここは違うわ。知らないわ」
と認めてくれてほっとしました。
部屋ではテレビがないと文句を言い、
私が明日持ってきますよと何度言っても覚えられず。
「今夜の分の荷物はこれですからね」と、
一緒に詰めたダッフルバッグとミニバッグを置くと、
今度は急にメガネのケースを出せと言う。
「めがね(老眼鏡)はここですよ~」と出すと、
「それじゃない!」と怒る。
「じゃこちらですか?」と二つ目も出す。
「それじゃないのよ!指輪が入ってるの!
あれは25万円もしたのよ。あれはどこ!?」
ああ、また始まったよこのばあさんは・・・。
これはテレビと一緒に翌日持ってこようと思いました。
もうなくなってもどーでも良いし~。
でもまたここでも毛皮がなくなった騒ぎを
やるんだろうなあと思うと職員さんに申し訳ないです。
持って行かない予定のものも多いのですが、
そのひとつはDVDのデッキで、このヒトが録画して
溜め込んだざっと百数十枚のDVDも、
この機会に破棄させてもらおうと思っています。
だってこのヒト、そんなの見ないし。
なんなら見方も覚えてないし。
テキトーな嘘でもついて、テレビだけでがまんして
いただこうと決めました。
だって、キリがありませんから。
私自身の引っ越しも控えているので、
今日、家具と荷物を運び込んだら、
向こう2~3週間は面会には来ない予定です。
次に来た時にこの人は、私を「以前いた施設の職員」として
思い出すでしょうか?
それともそれすらもないでしょうか?
それはそれで、少しばかりドキドキします。