先々週は国立科学博物館のダイオウイカで誤魔化しましたが、8月4日にNHK『日曜美術館』で神護寺が放映される危機感から、その前日に東京国立博物館の『神護寺展』に美月と再チャレンジしました。
猛暑の中、券売機前の行列にイライラしながらも、何とか熱中症で倒れる前に入館を果たすことが出来ました。
異様に高まる『神護寺展』への興奮を抑えるため、美月と話し合って、まずは常設展から拝観することにしました。
ところが常設展も『神護寺展』と連動して、不動明王や大日如来など、多くの密教仏展示に切り替わっていたのです。
まず入室して度肝を抜かれたのが大威徳明王像です。
これは浅草寺蔵のご尊格で、『乗り仏』好きな私にとっては、東寺の講堂で出逢って以来の水牛乗り大威徳明王に「はあぁぁ~」とため息をつくしかありませんでした。
その横に大好物の如意輪観音菩薩がおられるから堪りません。
これは東博所蔵なのですが、切れ長の目が実に艶々しいご尊格で、「ふうぅぅ~」と吐息をつくことしか出来ませんでした。
そして今年の年賀状写真にもした興福寺伝来の文殊菩薩騎獅像渡海像が再登場されるに至っては、もう『神護寺展』へは行かなくても良いのでないかとさえ思ってしまいました。
ところが更に追い打ちをかけるように何故かこのお方が展示の中におられたのです。
「うわぁぁ|」と思わず後退りしてしまいました。
まさかの元三慈恵大師像です。
しかも今年の遊行で拝観した滋賀金剛輪寺の元三慈恵大師像が上野に出張されていたのです。
滋賀金剛輪寺は湖東三山に数えられる天台宗の古刹で、参道に地蔵菩薩石像が延々と並ぶ様は神秘的で大感動したばかりです。
しかし『神護寺展』連動すると言いながら、何故第18代比叡山延暦寺天台座主の元三慈恵大師像が展示されているのか全くわかりませんでした。
更には、真言宗の素晴らしいご尊格が展示されている中で、地味な上人像を拝観する人など皆無に近く、孤独で寂しい有り様が気の毒でなりませんでした。
元三慈恵大師研究家として、ぽつんと人気もなくご尊像が置かれている状況にはとても我慢することが出来ません。
しばらくすると、通り過ぎる観客達に聞こえるように、美月を相手に漫才さながらご尊像の前で元三慈恵大師を説明している自分がいました。
「この上人像は比叡山中興の祖と言われる元三慈恵大師良源で、有名な角大師や豆大師の護符となったお大師様で・・」
ところが残念ながら見学者の大半は外国人、日本人にしても夏休みの宿題の課題を捜しに来ている仏教とは無縁の親子連ればかりです。
すっかり私と美月は、『神護寺展』を拝観する前に、周囲から変人扱いするような白い目に晒されてしまうこととなりました。
しかしながら東博に鎮座する滋賀金剛輪寺の元三慈恵大師像に、自称広告大使の私と美月は「良くおいで下さいました」と誇らしく手を合わせることが出来ました。