あの香り | 一日一日、ゆっくりと

一日一日、ゆっくりと

 自分に負けず、歩く日々

秋たけなわの時季なのに、初冬のような気候が続きますね。

台風も来ているし、ご自愛ください。

 

 

今日、突然 “あの香り” に触れました。

 

なかなか言葉で表せないけれど

ゆるく五感に沁みて来る “あの香り” ・・・・

 

 

初めて “あの香り” を感じたのは、

そう・・・、ちょうど20年前の晩秋です。

 

朝、ゴミを出して、出勤しようとクルマに向かったその時

 

ふわ~と香ったのです。

 

 

その香りに触れたとたん

悲しくもないのに涙がぼろぼろ溢れました。

 

クルマに向かう足が急に重くなって歩けなくなりました。

 

いったいどうしたのか

ぜんぜん分かりませんでした。

 

痛くも痒くも無い

意識もしっかりしている

でも歩けないのです。

 

あきらかに、心身がおかしい

でも何が起こっているのか分からない。

 

ただ、 “あの香り” だけが身体を覆っていました。

 

少しして、ちょっと正気が戻ったとき、私は

妻と精神科の診察室にいました。

 

まったく苦しい気はしない。

 

ただ、医師と話しながら思ったことは

 

ああ、喜怒哀楽が無くなっている・・・

ということでした。

 

猫を見て可愛いという感覚が無くなっていました。

 

そういえば

美しいとか、心地よいとか、腹立たしいとか

そういうふつうの感覚を、久しく感じていなかったことに気が付きました。

というか、どんな感覚だったのか思い出せませんでした。

 

それでようやく

あ、自分は病気なんだと思いました。

 

医師から

私にでなく妻に向かって

 

「うつ病です、ちょっと重いので仕事を休ませてください」

 

そして私に向かって

 

「自分で死なないようにね! それを約束して下さいね」

 

と言っているのを、なんだか遠くの出来事のように聞いていました。

 

 

うつ病といっても

私の場合はうつうつと塞ぎこむような苦痛は無く

ただもう喜怒哀楽の感情をなくした感じでした。

 

 

それからすぐ休職

 

休職中の記憶はあまり残っていません。

ただ、ぼーっとソファに横たわる毎日。

 

おかげで半年後に復帰できました。

その後も通院しながら服薬をしていましたが、それも2年ほどで卒業できました。

 

 

当時は36歳。

気力も体力も仕事も絶好調! と思っていた時に、突如襲って来た大きな病でした。

いまとなっては、人生の価値観や生き方を大きく変える貴重な経験でした。

 

 

いまだに不思議なのは “あの香り” なのです。

 

うつ病になったときに自分を覆っていた “あの香り”

 

あれが何だったのか、わかりません。

 

その後は、再び嗅ぐこともなく過ぎてきたのですが・・・

 

時々、晩秋から初冬

ちょうど初めて “あの香り” に出会ったのと同じ時季に

ほんの少しだけ、“あの香り” の片鱗に触れることが何度かありました。

 

ほんとにわずかですが

“あの香り” の分子が数個だけ漂っているかんじがするのです。

そのたび病気が再発しそうな感覚を覚え、身を固くしてやり過ごしました。

 

で、

きょう、数年ぶりに “あの香り” が数秒だけ香ったのです。

 

瞬間、背筋が凍るような感覚を覚えました。

 

もう忘れかけていたのに。

 

 

ニンゲン・・・

身体も不思議だけど

こころも不思議です。

 

なにかの予兆なのかもしれません。

少し心を緩やかにして、休めようと思います。

 

 

 

 

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