「来週から朝から学校に行くね。」と息子が言った。
最近は1時間目の終わり頃から登校していた。朝は相変わらず薬以外は口にできないけれど、前ほど吐き気は強くないように見える。
息子の言葉に「おっ!」と思ったが、当日になってやっぱりダメだったということも充分ありうる。
軽く「何時に声をかければいいの?」と聞くと「7時」とのこと。了解です。
当日、7時に声をかけるとモゾモゾ布団の中で動いていたが、いつの間にか起きてきた。薬を飲んでバタバタと着替えをして歯磨きは適当、7時半には「行ってきます」と家を出ていった。
息子が行った後の部屋を眺めながら、深いため息。退院から1年、ようやくここまでたどり着いた。
きつい抗がん剤治療を乗り越えて退院したものの、心と体のバランスを大きく崩して登校できなくなった。退院したら元通りの生活に戻れると思っていたけれど、待っていたのは想像とは全く違う生活だった。息子は次第に口数が少なくなり、同時に吐き気が強くなって外出もしなくなった。
まるで深い海の底に沈んでうずくまっているように思えた。
私自身、どうすればいいのか分からなかった。ただ、闘病が影響していることだけは確か。9ヶ月も一人でつらい治療に耐えてきたのだから、心の回復に同じくらいの時間がかかってもおかしくない。
息子の力を信じて待とう。親ができるのはそれしかないと、自分にひたすら言い聞かせてきた。
息子はその後も朝から登校して、そのまま冬休みに入った。受験生なので冬休み中も学習会があり、朝から参加している。
思春期外来で報告すると、ドクターはにんまりしながら「ね、前に言った通りだったでしょ?」
以前「12月頃には、普通に登校できるようになると思いますよ。」と言われていたことを思い出した。その頃は、朝から登校なんて考えられないような状態だったので、全然信じていなかったけれど。
ドクターの予言は当たった。やっぱりプロってすごい!