オプジーボの陰影 Ⅲ ノーベル賞受賞おめでとうございます ❗ | 白鳥碧のブログ 私のガン闘病記 31年の軌跡

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私が過去に体験したことや、日々感じたこと等を綴っていきます。
37歳の時に前縦隔原発性腺外胚細胞腫瘍非セミノーマに罹患しました。ステージⅢB
胸骨正中切開手術による腫瘍全摘、シスプラチン他の多剤投与後、ミルクケアを5年間実践して30年経過しました。

【もっとも研究されるべきは輪郭ではなく陰影である】

               レオナルド  ダ・ヴィンチ           ウルビーノ稿本


立花隆・本庶佑によるオプジーボ(ニボルマブ)によせる対談特集
文藝春秋 2016年5月号   ガン闘病中の方必読。


利根川進のノーベル医学・生理学受賞理由は、

『多様な抗体を生成する遺伝的原理の解明』というものだった。

この簡単な意味を二人の対談から引用してみる。

立花
『/私たち人間は多種多様な細菌、ウイルスなどの外敵に囲まれて生活しています。これらの微生物は感染症の原因になるわけですが、それに対して体が備えている防御システムが免疫系ですね。

リンパ球が異物に結合するたんぱく質(抗体)を作り出すことによって、病原体やアレルギー反応を起こす原因物質(抗原)を、細胞外に追い出す仕組みになっています。

日本の免疫研究は盛んで、

リンパ球ができる過程で、遺伝子の組み換えが起こることによって、膨大な種類の抗体が作り出されていることを明らかにしたのが、利根川進さん(ノーベル生理学・医学賞受賞)でした。

本庶さんの研究は免疫記憶と言われるもので、

抗体が抗原を認識した後、抗体を作るリンパ球で遺伝子を部分的に組み換えることによって抗原を記憶し、さらに突然変異が入ることで多様性が生み出されていることを突き止めました。

文化勲章をはじめ、ロベルト・コッホ賞など世界の名だたる医学賞を受賞しています。
リンパ球はどれくらいの異物に対応できるのですか。』

本庶
『数えきれないほどです。
リンパ球には百兆単位の種類があると見られていますし、それぞれ違う働きをします。
リンパ球は増えながら、その遺伝子が変異していく。免疫系はとんでもない多様性を持っているので、対応できない異物はないと考えられています。』

立花
『人間の基本設計はものすごく上手くできているんですね。』

立花の感嘆を受けてさらに本庶はいう。

本庶
『免疫系には、先天的に兼ね備えている「自然免疫」と、特定の異物の刺激に応じて攻撃すべき相手を記憶していく「獲得免疫」の二種類がありますが、後者は昆虫などにはなく、脊椎動物固有のものです。

獲得免疫を得たことで、非常に高度な防御システムができて、生物の寿命が格段に長くなりました。(中略)
獲得免疫の登場は、生命の歴史の中で革命的なことだと言えます。』

立花
『本来なら、細胞がガン化したら、免疫系はそれに対応できるはずなんですね。』

本庶
『/にもかかわらず、ガンという病気は現実に存在する。ということは、ガン細胞が免疫系の力を抑え込む仕組みをどこかの時点で獲得するからだろう、と、前々から考えられていたわけです。』




                                                 ベニシジミ



立花
『異物ならば、免疫系が働くはずなのに、なぜか機能せず病気になる。これはどうして起こるのですか。』

本庶
『その仕組みに関わっていると考えられるのが、われわれが二十四年前に発見した【PD-1】という分子なのです。

立花
『本庶さんの研究チームが発見したPD-1は免疫細胞の表面にあって免疫細胞に「攻撃ストップ」を命じるブレーキのような働きを持つ分子です。免疫は暴走して自分の臓器や神経を攻撃しはじめることもありますが、そうならないようにブレーキ機能がついているわけですね。』

本庶
『そうです。私たちの研究では、ガン細胞は免疫細胞からの攻撃にさらされると、このブレーキを踏む分子(PD-1)を出したり、ほかの未知の仕組みで免疫細胞の攻撃をストップさせることがわかりました。
ガン細胞が免疫細胞による攻撃をはねのけ、際限なく増殖を続ける事ができるのは、免疫細胞の監視を逃れる仕組みを持っているからなんですね。

これを応用して、もし免疫細胞にブレーキがかからないようにすれば、がん細胞に対する攻撃はもっと続くのではないかと考えました。

ニボルマブ(オプジーボ)という新薬は、ガン細胞が免疫のブレーキを踏めないようにブロックします。
免疫チェックポイント阻害剤と呼ばれる新しいタイプの薬です。



いやはや生命衝動というものは、飽くなき生成を重ねて自己実現を図り、さらにまたその自己実現の一瞬一瞬をも超えて、ただひたすら盲目的に生きようとする。


正常組織もがん組織もともに私たちの内にあって、ともに一瞬一瞬存在することを夢見て生成を欲している。
私たちはそれをまるで高みから俯瞰するように眺めて、私たちの依拠する正常組織をがん組織から守るために試行錯誤している。この高みも、人間の試行錯誤も、生命衝動の飽くなき盲目的な生成と同じものだ。

よし!それなら我は柔肌に【試行錯誤命】と刺青を彫りぬ。そして明日からもまたこの流転の中で、私のガンに立ち向かおうか。
     

『オブジーボの陰影   Ⅳ』に続く


この記事は2016年6月に投稿したものですが、本庶佑氏のノーベル医学生理学賞受賞に際して本日再投稿させていただいたものです。

             盛岡・御所湖  湿生植物園  睡蓮とオタマジヤクシ




今日の話しは昨日の続き今日の続きはまた明日



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