レモングラス
レモングラスは熱帯地方に産するイネ科の植物で、レモンに似た香気があり、葉から香油を蒸留抽出します。
少し前。妻と娘がハローワークの就業支援事業の援助を受けて、アロマセラピーの学校に通うことになりました。
これは結構楽しかったらしく、リビングではその日の復習でいつもにぎやかでした。
3ヶ月が過ぎ、認定試験へ向けて猛勉強が始まりました。部屋には打って変わって真剣な空気が張り詰めていました。
ある日リビングに入ると強い香気を感じるとともに、強烈な懐かしさが私の中に充満しました。
レモングラスの精油の香りでした。意識を集中させる効果があるというのです。
「スジグロチョウの香りそっくりだ」。私は思わず興奮気味に叫んでいました。
スジグロチョウは亜熱帯を除く日本全土に分布する普通種で、平地ではモンシロチョウと一緒に棲息していますが、里山で見る
白いチョウはまず本種と考えて良いでしょう。
雄の翅には発香鱗という鱗粉があり、レモングラスの精油と同じ香りがします。
私は小学校一年生のころからチョウの採集に夢中でした。
ある時小学生としては遠い場所へ採集に行きました。
その時季をのがすとまた来年まで待たなければならないチョウが目的だったので、荒天を承知で無理をして来ましたが、青嵐で木々の葉は白くめくり上がり、案の定何も飛んでいませんでした。
「男一匹」と勇ましく向かったはずが、うなだれて村はずれのバス停への林道を、重い足取りで戻りました。
ふと見ると林の中にスジグロチョウが飛んでいました。
気慰みにネットに入れて見ると、微かなにおいがしました。
鼻を近づけた瞬間強い香気に変わり、その明るく爽やかな香りに、しょんぼりした気分が一気に吹き飛びました。
「そうだまた来年!」。
私はチョウを放してしっかりとした足取りでバス停へ急ぎました。
初夏、妻と娘と3人で山菜採りに行きました。柔らかな日差しの中、たくさんのスジグロチョウが飛んでいました。
ネット越しに2人に嗅がせると娘は何度も頷き、妻は「そうかも」といいました。
夏がきて2人は認定試験に合格しました。
今日の話は昨日の続き今日の続きはまた明日
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