新聞の発行部数が 年毎に減り続けているのはなぜなのでしょうか?

 

企業の売り上げが激減したという場合,通常 その原因は明らかです.その企業が提供する 商品又はサービスが,世の中で不要になったか,あるいは競合品に負けてしまったからです.

例を挙げればキリがありません.

 

(C) JAKUTAKU さん

  • 暖房用として石油ストーブが登場したら,木炭は売れなくなりました.灯油の方が安全で手軽だからです.
  • 電卓が発売されると,ソロバンは売れなくなりました. 電卓なら 練習しなくても 誰でも速く正確に計算ができるからです.
  • 液晶が登場して,ブラウン管テレビは退場しました. 液晶テレビは薄くて軽く,しかもブラウン管テレビよりも大画面なのに安く作れるようになったからです.

では,新聞はどうしてこんなに減ってしまったのでしょうか? その前に 新聞という商品は何を提供していたのでしょうか?

私が子供の頃は,どの家庭でも新聞だけは購読していました.その頃の物価からみても,新聞代は安くはありませんでしたが,それでも新聞購読は欠かせないものでした.

 

新聞とは情報を売るビジネスである

 

それは 新聞が『唯一の情報源』だったからです. 当時は新聞に代わり得る情報源はありませんでした.

そして当時は,新聞が『情報の正確性』を保証するものでした.『新聞にこう書いてあったよ』となれば,それは誰も疑うことのない正確な情報と思われたからです.

当時の庶民は新聞を読み比べる,ということはできませんでしたが,それでも町内の大金持ちの家に行くと,主な全国紙を複数購読していました.それらを読み比べても どの新聞も (少なくとも事実関係については) ほとんど同じ内容でした.

つまり,新聞とは,『新聞紙』というモノ[★]ではなくて,『唯一の正確な情報』が商品だったのです.当時 この「商品」には 競争相手がいませんでした. だからどの世帯でも新聞を購読していたのです.

 

[★]ただし,町の焼き芋屋さんにとっては,新聞【紙】の方が必要です.そこに何が書かれていようが関係ありません.

 

新聞が減り続けているのは

 

とすれば,どうしてこれほど新聞は減り続けているのでしょうか?

[1] 独占ではなくなった

もっとも大きいのはこれですね. 何も新聞を読まなくても,知りたいニュースは今やネットから入手できます. しかも国内の情報だけでなく,米国の CNN でも,英国の BBC でも,フランスのフィガロ でも,どの国の新聞・メディア情報でも 今やネットから得られますし,それを日本の報道と比較することだってできます.

[2] 速報性で負けた

株式投資をやっている人なら,もはや新聞の株価面,あの小さな数字がビッシリと並び,しかもそこに掲載されているのは,最新でも『昨日の終値』という株価データを見る人はいないでしょう.事故や災害が発生すると,新聞どころかテレビ中継よりも早く 現場から動画を投稿する人までいます. この速報性に勝てる新聞はありません.

[3] 信頼性が疑われ始めた

新聞だって 人間が作る以上はミステークによる誤報はありえます. それはネット情報でも同じです. しかし,ここで述べる信頼性とは『新聞は意図的に報道している,あるいは 気に入らないことは意図的に選別して報道しないのではないか』という疑念です.

2023年10月17日,世界中のメディアは,『深夜に イスラエル軍がガザの病院(アフリアラブ病院)を空爆して 500人以上の死者が出た』と報じました. これは イスラエルの非道ぶりを表すものとして世界的に大ニュースになりました.そこまでは 海外のメディアも日本のメディアも同じでした.

 

しかし,事件の直後,イスラエル軍も ガザのハマスも『我々はやっていない』と関与を否定しました.

 

ところが日本の新聞・テレビ メディアはハマス側の言い分だけを取り上げて,『ハマスは関与していないと言っているのだから』と,消去法でイスラエル軍の残虐非道な行為として非難する報道を 連日 続けました.

 

その後の海外報道を見ると,実は どちらの言い分も正しかったのです.ガザ地区のハマスではない武装組織『イスラム聖戦』がロケット弾を誤射して病院に打ち込んでしまったのです.

 

ガザ病院の爆発は ロケット弾の誤発射によるもの

 

海外の報道機関は,イスラエル軍の残虐行為は非難したうえで,しかし 事実の検証報道もきちんと行うのです.ところが,日本の新聞は この情報を基にした訂正報道はついに行いませんでした.

 

『金を出してまで買うほどの情報ではない』と思われてしまっては,新聞の存在意義を自ら抹殺していると思います.