食事を摂れば 誰でも血糖値は上がります.ただ健常者であれば せいぜい食後30-60分後に~140mg/dl以下でピークになり,ほぼ食後2時間では元に戻ります.
しかし,糖尿病 及び 耐糖能障害(=糖尿病予備軍)では,食後におそろしいほどの勢いで血糖値が上昇します.これが食後高血糖です. そのピーク値は 200mg/dlを越えて,時に300mg/dl以上となることもあります.
現在 職場などで行われている定期健康診断では,空腹時の血糖値しかみないので,この食後高血糖が発生する人は見逃されてしまいます.たとえ空腹時血糖値が正常でも 食後の血糖値が高いと,いずれ本格的な糖尿病に至る可能性が高く,そうでない場合でも 動脈硬化などのリスクが大きくなります.
IDF( International Diabetes Federation)国際糖尿病連合は,2011年発行の『食後血糖値管理ガイドライン』で;
(C) IDF
このように警告しています.
(C) IDF
この食後高血糖を防止するには,いくつかの方法があります.
【1】そもそも食後に血糖値が上がらないような食事にする
自分の耐糖能とにらみ合わせて,食後でもピーク血糖が200mg/dl(できれば 180mg/dl)を越えないように糖質量を減らす.
こう書くと,『何だ 糖質制限か』という声が聞こえてきますが,食後に血糖値が爆上がりするようであれば,その量はその人にとっては糖質過剰なのです. この限界は人により異なるので,『1回の食事では糖質20g以下にしなければならない』と固定的に決まっているものではありません. 40でも 60gでも,人によって安全ラインは違うのです.
大福を1個食べると,私の血糖値は H2Aロケット並みのみごとな上昇をみせてくれます. しかし 我が家の奥様の血糖値はピクリとも動きません. 世の中 そんなものです.
また単に糖質量だけで決まるものではなく,同時に食べるものの組み合わせでも変わります. 一般に食物繊維の多いものと一緒に食べれば,食後の血糖値の上がり方は緩やかになると言われています(私の場合は あまりあてはまりませんが)
脂質の多い食事を食べた場合も 食後の血糖値上昇は緩やかになります.私の場合は これが極端で,この記事にも書いた通り,糖質量はどれもほぼ40gと同じなのに,共存する脂質によって,食後のピーク血糖値はまるで異なります.
ただし ほとんどの人にとって,脂質の多い食事は 血糖値が上がりにくいと同時に下がりにくくなるようです.また夕食の脂質が多いと 翌朝の血糖値が高くなる人もいます.
【2】食後の血糖値上昇を薬で防ぐ
α-グルコシダーゼ阻害薬(アカルボース/ボグリボース/ミグリトール)を食事直前に服用すると,腸管での糖質吸収を妨害するので,ピーク値がなだらかになります. ただし 糖質の吸収量を減らすわけではありません. あくまでも吸収速度を抑えるだけであって,最終的には糖質はすべて吸収されます.
ただし,α-グルコシダーゼ阻害薬は処方薬ですので,薬局やコンビニでは売っていません. あくまでも糖尿病と診断された患者だけに医師が処方できます. 例外的に糖尿病予備軍であると医師が診断すれば,まだ糖尿病でなくとも,ボグリボース(商品名:ベイスン)だけは 保険適用で処方されます.α-グルコシダーゼ阻害薬は3種あるのに,なぜか ボグリボースだけが保険適用されるのは,利権の香りがします.
私も,自分が糖尿病と気づいた時に 個人輸入でミグリトールを入手して試したことがあります.
First Kitchen のチキン竜田サンド(今でもあるのかな?)を食べる際,ミグリトールを食前にのまない場合/のんだ場合を比較したものです.
はい,たしかに食後血糖値のピークは きれいに 1時間遅くなりました. しかし,そのピーク値はまったく変わりませんでしたw
(C) たあ さん
この薬の効果も人によるのでしょうね.
そして 食後高血糖に対処する第3の方法が,【食後に 運動する】という方法です.
[続く]