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古希からの肉体改造に燃える終活四年生の紫苑です。
日々、記録を更新中。73歳にしてBTSのARMYです。



💛自己紹介

 

 

あれから51年

 

 

 

車を買ってもらった。

「いつでも父さんの足になるから」と約束をして……。

どんなに疲れていても父からの呼び出しがかかると、

わたしは駅まで父を迎えに行った。

それがいつしか当然のように、

終電を逃したと言い訳をしながら、

父はわたしを、

片道小一時間の父の事務所まで呼びつけるようになった。

わたしが行かなければ、

父はタクシーを使う。

それがもったいないからと言う理由もつけて車を買ってもらったので、

父の呼び出しを拒むことはできなかった。

わたしが到着するまでの間、

酒を飲んでいたり、

友人と囲碁をしたりと、父にとっては楽しい時間であったのだろう。

 

ある三月の夜の事。

父からの呼び出しがものすごく億劫だった。

虫の居所とでもいうのだろうか、

とにかく行きたくなかった。

行かなければ不機嫌な顔で父はタクシーで帰って来る。

それを思うと渋々行くしかなかった。

 

到着すると父はクラブへ行けと指図した。

高級なブランデーとメロンと香水がきつい女性が待っていた。

なんだか頭に血がのぼった。

仕事を終えて迎えに来たのに、

更に待たされることに怒りが沸き上がった。

そんな気持ちを持ったまま車を運転して帰路に就いた時、

わたしはバイクの男性を右のフェンダーで跳ねていた。

彼はセンターラインを走っていたのだ。

免許を取って一年と一ケ月、未熟な初心者マークが外れたところだった。

被害者は跳ね上がり、

彼のヘルメットが助手席に乗っていた父のおでこにぶつかって膝に落ちた。

一瞬何が起こったのか理解できず慌てて車を止めた。

被害者はうつぶせで微動だにしなかった。

その光景を見て我に返った。

 

救急車と警察に連絡をして到着を待った。

身体の震えが止まらない。

悪夢であったなら、と願わずにはいられなかった。

これがどん底で、

これ以上の辛いことが人生に起こるはずがなかった。

そんな数年間を経てわたしはどん底を蹴って浮上した。

 

毎年この時期には思い起こす。

同じ過ちは二度と嫌だから。

 

 

 

 

 

 

 

最後まで読んでくれてありがとう