初めて聴いたとき、それは拷問だった。

毎日のように大音量(実際はそれほどでもなかった)で、聴かされる音楽が苦手だと感じた。

そもそもラップが好きではなかったからだろう。

だからつい声を荒げて「ボリュームを下げて」とか「ヘッドフォンで聴いて」と娘に向かって眉をひそめていた。

すると「何で分かってくれないかなぁ」と、彼女は首をひねった。

スピーカーをBluetoothでペアリングしては、洗面するときもお風呂に入る時も持ち歩いては聴いていた。

そのうちYouTubeで見つけてテレビに映しだし、渋々強制的に見せられるようになった。

「彼らはダンスが上手いのよ。見てよ。フォーメーションが最高で一糸乱れない。これなら母さんも興味があるんじゃない?」

横目でちらちらと見ながら、それほど言うのならと身体をテレビに向けた。

娘の言う通りで、ダンスのキレが抜群だった。

その日、わたしは三時間録画を繰り返し何度も見た。そしていつしかそのマジックに嵌まってしまっていた。

傍らで何度説明を受けてもメンバーの名前と顔が一致しない。

髪の色で覚えても、洋服で憶えても次の場面では違うのだ。

その日を境にわたしは、毎日同じ録画(コンサート)を見た。そしてとうとうコンサートに行きたいと思うようになった。

でもチケットが取れない。何度応募しても当たらない。

どうしたらコンサートに行けるのだろう。

そんな折友達が普通はファンクラブに入るよ、と教えてくれたのだ。そして何度目かの応募の末に、初めて当選したのがこのチケット。

しかもアリーナ席だった。嬉しくて嬉しくてぴょんぴょん飛び跳ねた。

当日は大雨。途中で晴れたけれど、また降って来てレインコート着たり脱いだりの悪天候。

でも、コンサートは素晴らしかった。彼らの汗が飛び散って来そうだった。我を忘れて、年も忘れて、叫び続けた。最高だった。

わたしが愛するボーイズグループはBTS。

2020年には会えなかった。

今年も無理そうだ。

でも、コンサートが出来るようになったら、絶対行くよ。

それが今一番の夢だから。