米国の政策研究機関(民間シンクタンク)「戦略国際問題研究所(CSIS)」が4日、第6次となる日米同盟への提言「アーミテージ・ナイレポート」を発表した。これはアーミテージ元米国務副長官、ジョセフ・ナイ元米国防次官補らがまとめた提言だが、その実態は宗主国米国が植民地日本に押しつける政策命令書だ。今回は岸田政府が2022年末に閣議決定した
を明記して以後初のレポートで、米国側は台湾有事などの実戦を想定した「より統合された同盟」への転換を要求している。
「世界のリーダーシップの負担は短期的に日本が担うことになる」と主張。
「日本は前例のない政策変更で厳しい安全保障環境に対応し、2027年までに防衛費を倍増させ、長距離精密攻撃ミサイルなど東アジアの抑止力に貢献する新たな能力を獲得する計画を立てている」
「軍事作戦の計画立案と実行を含む同盟に進むべきだ」と強調。
「かつては軍事調整の仕組みがなくても同盟は効果的だったが今は不可能だ。より統合された同盟には、指揮系統の近代化、情報協力の深化、防衛産業と技術協力の積極的な推進が必要」
「日本はセキュリティクリアランスシステム(政府が保有する機密情報へのアクセス許可のため個人の適正を評価する制度)を強化・拡張する必要がある」
同時に陸海空自衛隊を束ねる「統合作戦司令部」(J-JOC)を2025年3月までに創設する計画とセットで、日米共同軍事作戦の調整をおこなう常設の「二国間計画調整事務所」設立を要求。
「サイバー脅威に関する官民の情報共有やサイバー防衛を強化する法案の成立を急ぐべきだ」と強調した。また「あらゆる国家安全保障情報にアクセスできる関係省庁横断型の情報分析組織を内閣官房の下に設立すべきだ」
弾薬・兵器不足を防ぐため日本が紛争当時国へ武器を供給する体制を整えることも要求。同時に「革新的な日本の防衛産業を支援することは米国の利益であり、日本の防衛装備品輸出規制の緩和は(まだ不十分であるが)協力を拡大する機会となる」「日本の産業界は自衛隊の能力構築のみに力を注いできたことから脱皮し、外国の防衛産業との連携を強化する必要がある」と記述し、米国のためにも武器増産と武器の大量輸出を重視するよう求めた。
日本が中東への関与を強化するよう促している。
日本政府はフィリピンとの部隊間協力円滑化協定締結を優先すべき
日米韓の軍事連携強化がこれまで以上に必要と強調
「日本は通信、エネルギー供給、交通網など台湾の重要インフラの強化を支援する方法を模索すべきだ」
「日本は米国より中東のシーレーンに依存しているにもかかわらず紅海の商船に対するテロ対応が不十分」と指摘。「日本は紅海の商船保護を支援すべき」「ジブチの自衛隊基地を活用し目に見える役割を果たすべき」と要求
こうした第6次レポートの内容を頭に叩き込んで訪米したのが岸田首相だった。米国では岸田首相に同行した上川陽子外務相が訪米早々アーミテージ元米国務副長官と会食で意見を交換。翌日の日米首脳会談にむけて周到に準備した。そして10日に発表した日米共同声明では、グローバルなパートナーシップ構築、自衛隊と米軍の指揮統制の一体化、防衛産業の連携へ向けた関係省庁の定期協議、米英豪の軍事同盟「AUKUS」と日本の協力強化等、第6次レポートが示した課題の実行を約束。米国に忠実な姿勢に米連邦議会が拍手喝采すると岸田首相は「日本の国会でこれほどすてきな拍手を受けることはまずありません」と満面の笑みで表明した。