先日掲載した手挟み(たばさみ)のように、以前の本堂では目立
たなかったものがあります。
蟇股(かえるまた)です。赤色の丸で囲んである箇所に設置され
ています。手挟み(たばさみ)同様、鳩除けネットで隠れていまし
た。
『蟇股(かえるまた)とは何?』
和様建築で,梁や頭貫 (かしらぬき) 上にあって上の重荷を支え
る材。蛙股とも書く。梁上にあるものは厚い板状でこれを板蟇股
という。平安時代からカエルが足を開いたような形のものができ,
これを本蟇股という。初め内部には装飾がなかったが,のちに簡
単な中心飾りができ,植物文,さらに動物文がつき,透かし彫か
ら立体的なものまでが生れた。
(ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典より 抜粋)
足場設置後に撮った、正面から見た蟇股の写真。明治15年(今
から138年前)に作られたものです,埃をかぶっています。
向拝の解体の際、蟇股も再利用のため取り外しました。寺族が
たわしや歯ブラシを使って長年の埃を水で洗い流しました。
きれいになった蟇股。迫力のある龍が彫られていました。
この波の上に乗った龍の彫り物の蟇股は、新しい本堂正面虹梁
の上に設置されます。
新調した向拝の柱と虹梁が大きくなり、桁の間隔が広くなったた
め、龍の下に波の彫り物を置いて調整しました。
波や龍の鱗などが自然に合わさり、流れがとても美しいです。欄
間職人の彫刻です。
新しくなった虹梁と桁の間に蟇股を設置するために蟇股を抱え
て庫裡の玄関から足場の上まで運びました。そして、ジャッキを
使い,挟み込む形で設置しました。
蟇股設置後。龍の身体や波がきれいに繋がっています。
向拝の下から見上げた様子です。
柱と虹梁と良く調和し,向拝正面が完成しました。参詣者の皆様
が見上げられると蟇股が見えます。