統一教会、杉田水脈など、岸田首相は、安倍政治の負の遺産を克服できるのか | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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  今年の日本の最大の事件は、参議院選挙中の7月8日に安倍元首相が銃撃されて死去したことだ。このような蛮行は厳しく糾弾しなければならないが、その後の日本の政治は、この事件を引き金とする問題に終始してきた感がある。

言うまでもなく、統一教会問題である。山際大志郎経済再生大臣、葉梨康弘法務大臣、寺田稔総務大臣と、わずか1ヶ月足らずの間に3人の大臣が辞任したが、山際大臣の場合は統一教会との関係についてきちんと説明しなかったことが原因である。

 統一教会に多額の寄付を要求されて家庭が崩壊したり、いわゆる「宗教2世」の権利が侵害されたりする実態が明らかになった。そのため、このようなカルト宗教による被害を救済する法案まで作成された。

安倍銃撃事件が起こらなければ、このような事態には至っていないであろう。その意味で、事件がパンドラの箱を開けたと行ってもよい。

 選挙の公認権や人事権(自民党人事のみならず官僚人事についても)を首相官邸が独占する事態が、日本の政治を大きく歪めてきた。内閣人事局の設置も一因であるが、2012年12月26日から2020年9月16日まで8年近い長期間続いた安倍政権が背景にある。つまり、安倍首相の気に入られれば出世し、嫌われれば疎外されるという状況になったことである。

 その典型的な例が杉田水脈議員である。2016年2月にスイスのジュネーブで開かれた国連女性差別撤廃委員会に参加した杉田は、ブログに「目の前に敵がいる! 大量の左翼軍団です」とか、参加したアイヌや在日コリアンを「チマ・チョゴリやアイヌの民族衣装のコスプレおばさんまで登場。完全に品格に問題があります」と記した。まさにヘイトスピーチのオンパレードである。

 インターネット上の誹謗中傷対策を担当する総務省の政務官にこのような人物を任命するというのは、ブラックジョークである。

 彼女は古くさい20世紀の反共主義の権化であり、「個人よりも家族が大事」、「夫婦別姓、LGBT、学童保育、男女平等に反対」、「これらは全て共産主義者の陰謀」というような言辞を弄している。彼女こそ「完全に品格に問題」があり、無知蒙昧を世間に知らせている。

 日本会議などが同様な考え方を表明しており、櫻井よしこが彼女を安倍に推薦したというが、安倍も気に入って、2017年10月の第48回衆議院選挙に自民党公認で比例中国ブロック単独17位で立候補させ、当選させている。

彼女の以前の経歴を見ると、極右ではなさそうだが、右翼色、嫌韓・嫌中といった排外的ナショナリズムを打ち出すことで、右翼・保守層の支持を集めることに思い至ったのであろう。これが功を奏して、安倍にも取り入ることができたのである。

 統一教会といい、杉田水脈といい、まさに安倍政治の負の側面である。自民党内のリベラルを代表する宏池会の代表である岸田は、この負の遺産を克服できるのか。

 内閣支持率は下降の一途を辿っている。安倍長期政権の負の遺産を清算する覚悟で難局に当たるしか、岸田首相に局面の打開は期待できないであろう。