ミサイルを連発する金正恩・・ウクライナとも接点 | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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   今年になって、北朝鮮が異常な頻度でミサイル発射実験を行っている。また、5年ぶりにICBMの実験を再開した。

 アメリカをはじめ国際社会がウクライナ戦争への対応に追われており、即座の対処ができないこと、また中国やロシアがアメリカとの対立を激化させていることが念頭にあったと思われる。

 国連決議に違反してミサイル実験を繰り返す北朝鮮に対して、制裁を強化するアメリカの国連安保理決議案は、13カ国が賛成したものの、中国とロシアが拒否権を行使したため、5月26日に否決された。北朝鮮の核・ミサイル開発阻止を目的とする制裁決議が2006年に初めて安保理で採択されて以来、否決されるのは今回が初めてである。

ソ連邦時代にはウクライナには核兵器が展開しており、1991年12月のソ連崩壊後には、核開発のノウハウを求めて北朝鮮はウクライナに接近している。

 1994年12月5日、ハンガリーの首都ブダペストで開催されたOSCE(欧州安全保障協力会議)で、アメリカ、イギリス、ロシアは、「ウクライナ、ベラルーシ、カザフスタンを非核化させるが、この3カ国の安全は米英露が保障する」という内容の覚書に署名した。これを「ブダペスト覚書」という。

 こうして非核化した国々では核関連の技術者や科学者が失職したが、北朝鮮はアメリカの2倍の給料で彼ら約50人を雇っている。そのおかげで、北朝鮮の核開発が急速に進んだのである。2017年に北朝鮮がミサイルのモーターとして開発した「白頭山エンジン」は、ウクライナ国営企業が1960年代に開発したRD250型エンジンに酷似している。2017年に実験が成功した射程5000㎞の「火星12」には白頭山エンジンを搭載している。

 ミサイルのみならず、2007年には、北朝鮮は、ウクライナから2隻の潜水艦を購入し、クリミアのセバストポリ軍港から分解して自国に運んでいる。この潜水艦がSLBMの発射に使われるのである。

 実は、北朝鮮とウクライナの軍事協力は、ソ連崩壊直後から続いており、それが北朝鮮の核ミサイル開発に大きく寄与してきたのである。ロシア側に立つ金正恩がウクライナを批判しないのには理由があるのである。

 ブダペスト覚書に署名しておきながら、アメリは20年間にわたってウクライナの面倒を見なかった。そのアメリカの不作為がロシアによる2014年のクリミア併合を招いたのである。

 核兵器の効用については、プーチン大統領が核兵器の使用可能性に言及するだけでNATO側は武力行使を断念することを見てもよく分かる。逆に、ウクライナは核兵器を放棄したばかりにロシア軍の侵略を阻止できなかったのである。これが金正恩の認識であり、核兵器の有効性、そして北朝鮮の核武装政策の正しさを確信したに違いない。

 新型の「火星17」ミサイルは、射程が約1万5千㎞とアメリカ全土を射程におさめる高性能である。

 金正恩は、アメリカを交渉の場に引き戻すには、アメリカ本土を核攻撃できる能力を持つことしかないと確信している。核ミサイル開発を止めることはないというのが建国以来の国是であり、その開発の成果を武器にしてアメリカと交渉し、経済制裁の緩和・解除を勝ち取ろうとしているのである。