参議院選は自民大勝、日本は再生するか? | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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 7月10日に投開票が行われた参院選は、自民党が63議席という単独過半数を獲得した。安倍元首相暗殺直後の「弔い合戦」の意味もあった。

 選挙には圧勝したが、今後の岸田内閣を待ち受けるのは、日本の再生という課題である。

 賃金については、日本では諸先進国に比べて、驚くほど上がっていない。OECDのデータを基にした資料(東京新聞、6月15日朝刊に引用)によって、1995年〜2020年の25年間に、各国で名目賃金と物価が、それぞれどれくらい伸びたかをみてみる。韓国が2.92倍・1.92倍、アメリカが2.23倍・1.7倍、イギリスが2.08倍・1.64倍、ドイツが1.64倍・1.41倍なのに対し、日本は0.96倍・1.04倍である。

 つまり、日本のみが賃上げ率が物価上昇率よりも低いのである。これでは、生活防衛のために消費を抑制するしかない。

過去25年間にわたって日本経済がデフレから脱却できないのは、企業の生産性が上がっていないからである。日本の労働生産性はG7 で最低である。

 日本生産性本部の『労働生産性の国際比較2021』によると、日本の(1)時間当たり労働生産性は49.5ドルで、OECD加盟38カ国中23位、(2)一人当たり労働生産性は78,655ドルで、OECD加盟38カ国中28位、(3)製造業の労働生産性は95,852ドルで、OECD主要31加盟国中18位である。

 長時間労働しながら、非効率で成果が上がらない職場が多すぎる。トップが決断する前に社内のコンセンサス形成などで時間がかかりすぎること、IT化が遅れていること、旧来の年功序列賃金・終身雇用の仕組みがまだ変わっていないこと、スタートアップ企業への支援が足りないことなど数々の理由が考えられる。

 リモートワーク、IT化など、コロナ感染の拡大によって余儀なく進んだ分野もあるが、他の先進国に比べて、まだ遅れている。政府も「働き方改革」などを推進しているが、民間の創意工夫が不可欠である。

 以上に列挙した理由以外にも、生産性を下げている理由は多々あるであろう。教育の分野もそうである。その原因をまず解明することが必要である。生産性を向上させて、企業の国際競争力を強化しないかぎりは、賃上げにはつながらないからである。

 スイスのビジネススクールIMDが6月15日に発表した「2022年世界競争力ランキング」によると、日本は前年から順位を3つ下げ、34位と過去最低になった。10位までの順位は、(1)デンマーク、(2)スイス、(3)シンガポール、(4)スウェーデン、(5)香港、(6)オランダ、(7)台湾、(8)フィンランド、(9)ノルウェー、(10)アメリカである。中国は17位、韓国は27位である。中国や韓国にも大きく引き離された日本の凋落ぶりを再認識させられる。

 判断基準は、(1)経済状況、(2)政府の効率性、(3)ビジネスの効率性、(4)インフラであるが、デジタル化の遅れや、政府や事業の効率性の低さ、研究開発力の急低下などが低評価の理由である。

 岸田首相は、日本の競争力の低下に正面から向かい合わねばならない。