物価上昇:なぜ円安なのか? | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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  アメリカの5月の消費者物価指数は8.6%であり、FRBは金利を上げて引き締めざるをえなくなっている。FRBは、15日、通常の3倍となる異例の0.75%の利上げを決めた。

 そのため、内外の金利差は開くばかりであり、それが1ドル=136円という円安に帰結しているのである。

 しかし、日銀は金融の量的緩和策を継続する。こも政策は、ベースマネーを増やすことに眼目があって、そのために日銀が無制限に国債を購入するというような手段を講じるのである。その結果、企業の経済活動が活性化し、それが富を生み、賃金も上がっていく。そのおかげで消費が増え、物価も少しずつ上がっていくという好循環が理想型なのである。

 しかし、この理想はまだ実現していない。総務省が5月20日に公表した2022年4月分の消費者物価指数(CPI)は前年同月比で2.5%である。生鮮食料品を除くCPIは2.1%、生鮮食料品及びエネルギーを除くCPIは0.8%である。

 しかし、それは賃金上昇がもたらした結果ではない。理由は、ウクライナ戦争であり、新型コロナウイルス流行である。戦争で、小麦などの食料品、石油や天然ガスなどの供給が激減し、またコロナで部品の供給が止まるなどの事態が生じた結果の値上げなのである。

日本のみが賃上げ率が物価上昇率よりも低いのである。これでは、生活防衛のために消費を抑制するしかない。黒田日銀総裁の発言のように「家計が値上げを許容できる」とはとても言えるような状況ではないのである。名目賃金が25年間で減っている。

 黒田総裁の家計発言が不適切だとしても、金融緩和政策を解除できるような状況にはないこともまた確かである。したがって、内外の金利差は広がる一方であり、円安は続かざるをえない。

 単純化して言えば、市中に青天井でマネーを流しても、それを活用する企業がいなければ効果は上がらないからだ。

 過去25年間にわたって日本経済がデフレから脱却できないのは、企業の生産性が上がっていないからである。日本の労働生産性はG7 で最低である。

 長時間労働しながら、非効率で成果が上がらない職場が多すぎる。トップが決断する前に社内のコンセンサス形成などで時間がかかりすぎること、IT化が遅れていること、旧来の年功序列賃金・終身雇用の仕組みがまだ変わっていないこと、スタートアップ企業への支援が足りないことなど数々の理由が考えられる。

 以上に列挙した理由以外にも、生産性を下げている理由は多々あるであろう。教育の分野もそうである。その原因をまず解明することが必要である。生産性を向上させて、企業の国際競争力を強化しないかぎりは、賃上げにはつながらないからである。

 現在の円安の背景は、日本の競争力の低下である。その原因を探り、対応を考えないと、日本は沈没する。