中国包囲網の形成 | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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 ウクライナ戦争がどういう形で終結するにせよ、ロシアの凋落は不可避であろう。アメリカに対抗して、世界の覇権を争うのは中国であることは間違いない。バイデン大統領の5月後半のアジア訪問の目的は、この中国に対する包囲網の形成にあった。

 24日には、日米にオーストラリアとインドを加えたクアッドの首脳会合が開かれる。インドは、原油や武器の輸入などでロシアと緊密な関係にあり、ロシアに対して厳しい姿勢をとっていない。

 経済の分野では、バイデン大統領はIPEF(インド太平洋経済枠組み)構想を進めることを公にし、岸田首相もそれに参加することを決定した。参加国は、アメリカ、日本、オーストラリア、ブルネイ、インド、インドネシア、韓国、マレーシア、ニュージーランド、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムであり、世界のGDPの40%を占めることになる。

 焦点は、①デジタルを含む貿易、②サプライチェーン、③クリーンエネルギー・脱炭素、インフラ、④税制・汚職対策である。世界のGDPの40%を占めることになる。

 トランプ政権が反故にしたTPPに戻ればよいのではないかと言いたくなるが、中国の攻勢に対して保護貿易主義のムードが高まっているアメリカでは、その選択は不可能である。自由貿易を拡大することになるからである。

 先端技術分野での米中対立は、トランプ政権下で先鋭化し、ハーウェイ(華為)などへの圧力行使となったことは周知の事実である。それに加えて新型コロナウイルスの感染拡大、さらにはウクライナ戦争によって、半導体などの供給が大きく制限される事態となった。

 そこで、それに対応するために、「供給網(サプライチェーン)の強靱化」という課題を提示し、そのためにIPEFを活用しようというのがバイデン政権の狙いである。

 この問題は単に経済にとどまらず、安全保障とも緊密な関係にある。価値観を共有しない国からは半導体などの戦略商品を輸入しないという方針につながるのであり、それは自由貿易の原則とは背反し、経済ブロック構想に繋がってしまう。

 日本は中国とは緊密な経済関係を維持しており、その関係を希薄化させることにつながる。多くのアジア諸国もその懸念を共有する。自由貿易を目指すTPPは関税引き下げによってアメリカという巨大市場へのアクセスを可能にするものであるが、IPEFにはそのような具体的なメリットはない。それだけに、このバイデン構想に賛成する国が増えるかどうかは不明である。

 中国が嫌がるこの枠組みに参加して、対中関係を悪化させる愚を犯そうとはしないからである。

 自由貿易を目指す組織としては、日中韓、ASEAN10カ国にオーストラリアとニュージーランドが参加するRCEP(東アジア地域包的経済連携)がある。さらには、21,22日に開かれたAPEC (アジア太平洋経済協力会議)もあるが、21,22日に開かれた貿易相会合は、ロシアへの対応などで参加国に見解の差があり、共同声明を採択できないまま閉幕した。

 これらの組織に加えてIPEFを発足させることに大きな意義があるのだろうか。日本の国益にプラスになるような運営を行えるかどうか、岸田政権にとっては重い課題である。

 

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