タリバンの支配するアフガニスタン | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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 8月末の米軍撤退で、タリバンが支配するアフガニスタンは、混迷の度を深めている。

女性やジャーナリストが迫害されるなど女性が差別され、「勧善懲悪省」の復活など、シャリーア(イスラム法)に基づく支配を復活させようとしている。女性は公共の場ではブルカで全身を覆うことが要求される。女性が教育を受ける権利まで否定しないというが、男女共学は認めていない。

 イスラム教には、予言者ムハンマドが活躍した6世紀〜7世紀のアラビア半島という時代を反映した教えが多々ある。豚肉を食することを禁じたのは、当時腐った豚肉を食べて死ぬ人が続出したからである。

 放牧で生きる遊牧民にとっては、略奪(ガズウ)は産業の一つであり、戦争が日常茶飯事で、多くの男が死んだ。取り残された未亡人と孤児を救うために、余裕のある男が4人まで妻を娶ってよいことにしたのである。ムハンマドも孤児で、祖父や叔父に育てられて苦労した経験を持つ。

 シャリーアは、イスラム教の経典コーランとムハンマドの言行録(スンナ)を法源とする法体系である。殺人、強姦、同性愛、麻薬の使用と流通、強盗などは死刑である。1400年以上が経過する今日では時代に沿わないものもあるだろう。たとえば、同性愛などは、同性との婚姻を認める欧米諸国とは大きな落差がある。

 ブルカなどの着用も、人間の弱さを前提にする「イスラムの人間主義」でもある。夫や兄弟以外には「美しいところを隠せ」と女性に要求するのは、男が女性の美しさに欲望を募らせて犯罪的な行動に走るのを阻止するためである。男女別学も同じ考え方である。そして、そこまでしても悪事を働く者は厳罰に処すのである。

 しかし、この男女の別を徹底すれば、女性を治療するのに女性の医師、女性を教育するのに女性の教師、女性を運ぶタクシーに女性運転手が必要になってくる。社会を維持するためには、女性の社会的進出が不可欠なのである。そういう点を指摘すれば、タリバンとて反論できないであろう。

 タリバンが理想としているのは、シャリーアに基づく支配である。それは欧米の民主主義とは全く異なるものである。しかし、アメリカは、石油という資源の確保、中東におけるアメリカのプレゼンスの維持のために、中東に介入してきた。1990年1月に湾岸戦争が勃発すると、アメリカはサウジに米軍を展開し、それはイラク戦争でサダム・フセインを排除する2003年まで続いた。

これが、アルカイダやISによる反米運動を起こすきっかけとなったのである。

 サウジアラビアは、2019年7月、16年ぶりに米軍の駐留を認めた。サウジにとって、シーア派のイランやイエメンを牽制することが目的である。アメリカは、サウジアラビアに民主化などは要求していない。

 20年続いたアフガン戦争も、9/11同時多発テロを引き起こしたアルカイダの首領オサマ・ビン・ラデンをタリバン政権が匿ったという理由からであった。彼は2011年5月2日にパキスタンで殺害されたが、アメリカは米軍駐留をアフガニスタンを民主化するという理由に切り替えたのである。

 イスラム原理主義の国におい、西欧流の民主化は無理であり、アフガンのことはアフガン人に任せるしかない。