1ヶ月前のことも忘れる有権者が小池都政を可能にしている | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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 新型コロナウイルス感染の再拡大が止まらない。東京都の感染者は、7月28日には266人である。しかし、小池都知事は、都民に自粛を要請するのみで、具体的な行動をとらない。英語を使ったスローガンを作り、耳目を集めるパフォーマンスに終始する。

 たとえば、6月のことを思い出してほしい。6月2日には、東京都のコロナ感染者が34人になり、増加傾向にあるとして、小池都知事は「東京アラート」を発令し、都庁やレインボーブリッジを夜11時に真っ赤に染めた。

 大阪府の吉村知事が通天閣の色を変えるという分かりやすい表示をしたことに対抗したものだ。赤く染まったレインボーブリッジを見物に来る人々で密集騒ぎが起こるほどで、これでは感染防止の意味がない。とにかく、目立ちたがり屋の血が騒いだろう。

 6月11日には、判断基準に達したとして、「東京アラート」を解除する。その翌日に小池都知事は再選を目指して都知事選立候補を表明した。結局、「東京アラート」は何の意味があったのか。吉村大阪府知事に対抗して、自分の人気を高めるための道具だったとしか言いようがない。

 実際に、12日以降は、それ以前に比べ、感染者が倍増している。6月12〜25日の2週間の感染者数は500人で、5月29〜6月11日の2週間の252人の倍になっている。

 新型コロナウイルスは潜伏期間が長いので、感染してから発症まで1〜2週間はかかる。つまり、「東京アラート」を発動した6月2日以降に感染した人が解除した11日以降に発症して検査で判明するので、「東京アラート」は都民に対して警戒の意味は何もなかったことになる。6月24日には55人にまで増加した。

 ところが、11日に、感染が落ち着いたと判断したから「東京アラート」を解除したとして、小池百合子知事は「アラートの役目を果たした」と評価し、「これからは自らの力で守る自衛の時代。自粛から自衛の局面だ」と述べた。まさに無責任の極みである、「自衛」に頼るのなら、行政は要らない。

 コロナの陰に隠れて、小池都政4年間の実績の検証が行われないまま、都知事選は小池圧勝に終わった。有権者の健忘症は凄まじく、豊洲騒動や五輪施設の移転問題などすっかり忘れてしっまている。マラソンと競歩の札幌移転の決定も、主催都市のトップが蚊帳の外に置かれてしまった。

 テレビのワイドショーが措定する低劣な大衆が政治を動かす状況は、とくにこの日本において酷い。その大衆を代表するタレントたちが世論を作っている。ヒトラーは、「知能指数の最も低い聴衆のレベルに演説の水準を合わせろ」と喝破した。パフォーマンスと空虚な横文字スローガンこそ、ヒトラーばりの小池都知事の得意技である。無知な大衆こそ、内容も分からないのに横文字をありがたがるからである。

 彼女の最大の目的は、この世の出世階段を上っていくことである。そのためには、嘘も方便というわけである。小池候補に票を投じたのは健忘症の東京都民であるが、いずれそのツケを払うときが来る。