新型コロナウイルスの歴史的役割 | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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 新型コロナウイルスは、当初予想された以上の感染力で世界に拡大した。このウイルスは、潜伏期間が2週間と長く、無症状でも感染力が強いために、急速に感染拡大が広がったのである。

 ワクチンが開発されるのには1年半は必要だというし、治療薬もまだできておらず、感染が収束するにはまだ時間がかかりそうである。ある集団の構成員の6〜7割が免疫を獲得すると感染が最終的に止まるが、この集団免疫獲得には数年は必要だろうと言われている。

 人類の歴史は、感染症との戦いの歴史である。天然痘、ペスト、麻疹(はしか)、結核、エイズ、エボラ出血熱、SARS、MERS、インフルエンザと枚挙に暇がないが、私たちは、そのたびに病原体と熾烈な戦いを繰り広げ、何とか生き残ってきた。

 ウイルスは取り憑くべき人間が存在しないと生存できないので、結局はいかにして共生するかという話になる。

 疫病は、人々の生活に大きな影響を与え、歴史を塗り替えてきた。この点に関しては、すでに数多くの書籍が出版されているので参照してほしい。王朝の変遷などを辿る、いわゆる政治史のみならず、民衆の生活を掘り起こすフランスのアナール学派の歴史書も面白い。

 感染症は人口を調整する機能を担ってきた。地球の資源には限りがあり、食料も無限に供給できるわけではない。しかし、地球の人口は増え続け、2019年には77億人になった。このままの傾向が続けば、2050年までには100億人に達すると予想されている。

 これまで地球の人口を減らしてきたのは、戦争と疫病である。人類は、いつになっても戦争を止めない。20世紀の第一次大戦と第二次大戦の死者は、それぞれ約1700万人(軍属1000万人、民間人700万人)、約6000万〜8000万人(軍人2200万〜2500万人、民間人3800万〜5500万人)となっている。

 第二次大戦の死者は、当時の人口の2.5%以上にのぼり、大きな人口削減効果を果たした。今は、核抑止力が大国間の戦争を阻止している。

 ところで、第一次大戦の犠牲者の約3分の1はスペイン風邪などの疾病によるものである。スペイン風邪は、歴史上最初に大流行したインフルエンザであり、戦争中の1918年3月にアメリカのデトロイトなどで発生し、米軍がヨーロッパに持ち込み、世界に蔓延し、1920年12月頃まで猛威を振るった。

 当時の世界人口約20億人の3分の1が感染したとされている。死者は1700万〜Ⅰ億人とされている。短期間に大量の死者を出した記録的な疫病である。これが、第一次大戦の終結を早めたと言われている。

 今回のコロナはどんな歴史的役割を果たすのだろうか。在宅勤務などの働き方始まって、国際ステムまで大きく変容させる可能性がある。