感染症の危機管理:新型インフルエンザ対応の教訓(16)感染経路不明の患者が続出する事態     | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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 2009年の新型インフルエンザのときは、幸いにタミフルやリレンザを服用して自宅静養するのが1番良いという結論を出すことができたため、国民は大いに安心した。

 新型コロナウイルスはまだ、その段階まで行っていない。しかし、感染経路が不明な患者が増えていることは、新型インフルエンザのときの推移と同じである。

 2009年6月11日には、国内感染者は、北は北海道から南は福岡まで22都道府県で548人となった。2週間後の6月25日には、38都道府県、1007人と類型で1000人を超えている。そこで、7月中旬からは新型インフルエンザの患者全員について報告を求める「全数調査」を中止し、国内約500カ所の定点医療機関で抜き出し調査をすることに変更することにした。

 ワクチン製造については、アメリカのCDC(疾病予防管理センター)から入手したウイルス株の増殖能力が弱く、製造効率が低いことが判明した。そこで、7月3日に国内製造量を下方修正し、年内に1400万〜1700万人分にとどまるとことを明らかにした。

 この頃、ワクチン接種の優先順位をどうするかの議論を始めていたので、製造量の下方修正は、この問題にも大きく影響することになった。7月10日(金)の夕方、私は大阪に入り、近畿6府県の知事・政令市市長らとインフルエンザ対策について意見交換会を行った。

 これまでの対策を振り返って、反省点、改善点などについて、真剣に討議し、大いに役立った。その中で、私は、海外から1500〜2000万人分のワクチンを輸入し、年明けの3月までには5300万人分は確保するという見通しを示した。

 7月11日には、大津市、京都市、神戸市を回り、現場視察と自治体、病院、商工会議所などの責任者と意見交換をした。まさに百聞は一見にしかずで、野戦病院化した神戸市医療センター中央市民病院の経験から多くの事を学ぶことができた。

 海外からのワクチン輸入については、解決しなければならない問題があった。当時は世界的にワクチンが不足しており、ワクチン争奪戦が繰り広げられており、売り手の発言力が強かった。

 外国の製薬会社は副作用免責を条件にしてきており、これへの対応が難問となっていく。また、国内の一部の専門家は、海外のワクチンはアジュバンド(免疫増強剤)が入ったりしているため安全性に問題があると指摘しており、副作用との関係で、これまた問題を複雑化させた。