文在寅大統領、5つの誤算 | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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 12月24日、安倍首相と文在寅大統領は、中国の成都で1年3ヶ月ぶりに首脳会談を行った。徴用工問題などについて、対話を通じて解決する姿勢が見られたことは一歩前進である。

 ここまで日韓関係が悪化したのには、文在寅大統領の誤算があった。

第一は、アメリカに対する誤算である。文在寅は、「北朝鮮との関係改善に力を入れるトランプは、金正恩と良好な関係を維持しており、その点から南北関係の改善に韓国が努力することは歓迎するはずだ」と考えていた。

 しかし、中国、ロシア、北朝鮮と軍事的に対立するアメリカは、国家安全保障第一の国であり、GSOMIA廃棄に強硬に反対した。その真剣さを見誤ったというべきである。

また、在韓米軍駐留費の5倍増要求なども、この問題と密接に関連しているのであるが、その「圧力」を正確に見抜けなかったことも外交的には拙劣である。

 第二は、経済的損害に対する誤算である。日本からの半導体素材の輸出規制は韓国の花形輸出産業である半導体業界に大きな損害をもたらす。そして、文政権はナショナリズムを煽り、日本製品ボイコットに走った結果、観光業をはじめ、大きな損害を韓国経済に与えている。

 第三は、北朝鮮に対する誤算である。南北雪解けムードを演出してきた文在寅にとっては、歴史的な米朝首脳会談は渡りに船であった。ところが、その後、米朝協議は進まず、金正恩はミサイル発射を繰り返し、非核化要求には真剣に応じようとはしていない。そのうえ、父の金正日が始めた観光地金剛山の南北共同開発について、韓国が建設したホテルの撤去を決めている。

 第四は、安倍晋三首相に対する誤算である。「安倍は極右で、嫌韓派に属しているが、対韓強硬政策を続けることの愚に気づけば、自らの信念で局面打開を図るだろう。そのためにも、韓国は強硬姿勢を貫いたほうがよい」と考えていたようだ。しかし、安倍は、自ら確固たる信念や政策を持つというのではなく、お友達や周囲の空気に支配される政治家である。「ネトウヨ」をはじめ、嫌韓派が安倍応援団である。お友達もそうである。そのような中で、韓国に対する妥協を少しでもするわけにはいかないのである。

 第五は、中国やロシアに対する誤算である。中国は貿易摩擦でアメリカとの対立関係を深めており、また急速な軍拡で世界の覇権をアメリカと争っている。ロシアもまた、軍拡路線を走っており、トランプ政権のモンロー主義的な政策の間隙を縫って、中東や欧州での影響力を拡大している。

 その観点から、GSOMIAの失効は日米韓の同盟関係を弱体化させるものであり、大歓迎である。アメリカがGSOMIA廃棄に強硬に反対したのは、そのような中露の思惑が念頭にあったのである。北朝鮮は厄介な手下であり、南北関係が進展しようがしまいが、中露にとってはどうでもよい話なのである。

 このようの5つの誤算が文在寅外交の失敗につながっている。そのマイナスが日本にも及んでいることは残念なことであり、日本外交も難問を抱えたまま年を越しそうである。