サウジ石油施設攻撃の背景:イラン政策・・トランプの失敗 | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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 9月14日にサウジアラビアの石油施設2カ所が攻撃され、原油生産が大幅に減っている。減少量は、世界の供給量の5%にもなり、原油価格は15%もアップしている。

 イランが支援するイエメンの反政府組織フーシが、自らが攻撃したとの声明を出したが、アメリカは、攻撃がイランやイラクの方向からだと指摘した。イランはこれを否定している。アメリカとイランの首脳会談が開かれるのではないかという観測も出ていたが、それもこの状況だと不可能である。

  原油の減産が続けば、石油危機と同様な深刻な事態になる危険性もあるが、このような不安定な情勢をもたらしたのはトランプの中東政策である。

 イランをめぐる情勢が今のように緊迫した原因は、2018年5月8日のトランプ大統領によるイラン核合意からの離脱にある。これは、アメリカ外交史上、最大の失敗の一つである。

 アメリカによる厳しい経済制裁で悲鳴を上げたイランは欧州に支援を要請するが、期待したような措置は十分にとられず、1年が経過した段階で、核開発の段階的再開という対抗手段に出た。

 IAEA(国際原子力機関)が厳格な査察を定期的に行った結果、イランは合意を遵守していることは証明されていたのにもかかわらず、トランプは核合意からの離脱に踏み切った。それには、最近解任されたタカ派のボルトン補佐官の影響もある。

 ボルトンは、「核開発の完全な放棄ではなく、一時的中断なので、イランがいつ再開するかわからない」と主張し、核開発能力の100%除去を要求したのである。

 核合意が、英米仏独中露とイランとの間で10年にわたる協議の結果、2015年7月にまとまった核合意は双方の主張を妥協させた外交的成果であることは間違いない。安保理常任理事国とドイツにとっては、イランに核の冒険を中止させることに成功したのであり、イランにとっては、核開発能力は残したまま、それを自制することで経済制裁解除という見返りを得たからである。

 そして、イランが経済復興するとの見通しで、日本からも多くの企業が進出し、イラン経済も活性化し、それは世界経済にもプラスになると考えられていた。

 ところが、トランプ政権が誕生すると、事態は一変する。先述したように、核合意からの離脱を一方的に決めたのである。しかも、それは、パリ協定やTPPからの離脱と同様に、単にオバマ政権の政策だったからというだけの理由である。

 トランプは、お気に入りのイスラエルが核武装していることについては一切批判しない。それは、イランにとっては受け入れがたいことである。このような二重基準がトランプ外交の問題点である。

 今のところ、イランはゆっくりとした速度でエスカレーションの階段をのぼっており、アメリカが過剰反応さえしなければ、直ちに武力衝突が起こるような状態ではない。しかし、階段を降りていく道筋が全く見えないのが問題なのである。

 サウジアラビアの石油施設攻撃に対して、トランプがどのような対応策を示すか、軍事介入などに踏み切れば、中東の緊張は一気に高まる。