北朝鮮は、中国やベトナムのように改革・開放・経済発展ができるか | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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  ハノイでの米中首脳会談が決裂した後、北朝鮮は、再び核施設を稼働させており、また、サイバー攻撃や「瀬取り」で、不当な手段で核開発資金を稼いでいる。首脳会談が行われたベトナムは、今や国際社会に開かれた国になって、経済発展を遂げている。

  北ベトナムは、第二次大戦後、フランス、そしてアメリカという大国と戦って勝利した。そして、南ベトナムを降伏させて南北統一を果たし、1976年にベトナム社会主義共和国として新たなスタートを切った。復興を目指すベトナムは、鄧小平が進めた中国の改革開放路線と同様な「ドイモイ」政策を、1986年に採用する。

  経済の飛躍的発展を目指し、日本など先進諸国に援助を仰ぎ、国際社会に開かれた国造りに励んでいるベトナムは、1995年には、ベトナム戦争で戦ったアメリカとも和解し、協力関係を深めている。北朝鮮は、朝鮮戦争でアメリカと戦っており、この点では北ベトナムと同じである。

  北朝鮮の改革モデルとなるのは、中国であり、ベトナムである。中国は、改革開放政策で社会主義市場経済を進め、今やGDPで日本を抜いて世界第二位に躍り出て、アメリカの覇権を脅かすまでになっている。

  北朝鮮がベトナムや中国と決定的に違うのは、金ファミリーによる「王朝」だという点である。ベトナムや中国は、独裁制であっても、それは共産党による独裁であって、特定の政治家ファミリーによる支配ではない。「王朝」ではないし、世襲でもなく、集団指導体制である。

  平壌では、金正恩に反抗すれば身内でも粛清に遭う恐怖政治が続いており、経済改革も基本的人権の擁護も進んでいない。金正恩の最大の目的は「金王朝」の維持であり、改革開放政策は王朝の崩壊につながる危険性を孕んでいる。金日成、金正日の遺訓を受け継ぐ金正恩が、体制崩壊の危険を冒すことはない、つまり改革開放の扉を開けることはまずないと思う。核兵器の保持に固執する理由は、アメリカからの攻撃の危険性から「金王朝」を守ることにある。

  ベトナムと違って、そもそも朝鮮半島は統一しておらず、北朝鮮が計画経済から市場経済に移行すれば、それは韓国と同じ体制になり、韓国主導の統一国家になる可能性につながる。それは、西が東を吸収したドイツ型統一である。それを金正恩が受け入れることはあるまい。一方、北が南を吸収するベトナム型統一は容易には実現しないであろう。

  古代以来、東夷西戎南蛮北狄のうち、中国にとって最も警戒すべき国は朝鮮とベトナムであった。日本と違って陸続きであるが、小国ながら強力で一筋縄ではいかない国だったからである。ベトナムは、中越戦争を戦い、今でも南沙・西沙諸島領有件で中国と対立している。これに対して、北朝鮮は中国の保護下にあると言ってもよい。

   当面は、北朝鮮にとっては、ベトナムや中国はモデルにはならないであろう。