統計不正問題への対応:厚生労働省をどう再編するか  | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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 毎月勤労統計に始まって、統計の調査について様々な不正が発覚し、厚生労働省のガバナンスが問われている。私も厚労大臣を勤めたが、この巨大官庁を一人の大臣で指揮するのは容易はない。

 行財政改革を掲げた橋本龍太郎内閣が構想した中央省庁の再編は、森喜朗内閣時代の2001年に実現し、1府21省庁を1府12省庁にスリム化した。それから約20年も経つので、1度見直すべきではあるまいか。

 第一に、厚労省の業務は膨大である。私が大臣のときは、年金記録問題、医師不足、薬害肝炎訴訟、原爆症認定訴訟、後期高齢者医療制度改革などの課題が山積しており、他の大臣の数倍は働いたと思う。新型インフルエンザの発生、中国産毒入り餃子の輸入などの突発的事件も起こり、まさに休む間もなく仕事に明け暮れた毎日であった。

 国会答弁もたいへんで、年金記録問題については、予算委員会で1日に160問という大量の質問数にのぼったこともあった。

 しかしながら、第二に指摘したいのは、厚生省と労働省を統合したことのメリットもまたあるということである。たとえば医師不足と働き方改革である。労働大臣の立場で医師の残業を厳しく取り締まれば、医師不足、特に産婦人科、小児科、緊急医などの不足によって医療現場は崩壊する。一人の大臣が医療と労働を掛け持っているからこそ、この問題の調整も可能になるのである。

 第三に、分割する場合には、①厚生省、②労働省、③年金省の三分割案を叩き台として提案したい。

 高齢社会の今、年金は老後の生活を支える柱である。しかも、人口減少によって年金財政を支える現役の人口比率が下がっている。年金問題は、社会保障の大きな課題の一つであり、これに専従的に取り組む省があってもよい。

 年金記録問題は、社会保険庁の杜撰な運営から発生したものであり、私はこれを解体し、日本年金機構に改組した。年金大臣が日本年金機構を直轄して、年金業務の正確化・効率化を図るべきである。また、公的年金を運用するGPIFも年金大臣がしっかりと管理しなければならない。

 しかし、年金省構想については、歳入について財務省(国税庁)との役割分担をどうするかという問題が生じてくる。アメリカの内国歳入庁やイギリスの歳入・関税庁のような組織を作ることには財務省が猛反対する。徴収については、国税は財務省、年金保険料や雇用保険料は厚労省、地方税と医療介護の保険料は地方自治体と分かれており、非効率極まりない。

 ところが、歳入庁が全ての徴収を一元化すると、霞ヶ関、そして課税自主権を掲げる地方自治体が反対の狼煙をあげる。年金省が歳入庁の創設につながらなければ、この三分割案は実現の可能性があるが、その際には単に今まで一人の大臣が行ってきた業務を三人の大臣で分けるだけになってしまう。

 以上のような点をしっかりと議論して、厚労省改革を断行すべきである。