政府が民間企業に介入する「社会主義国」フランス | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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 若い頃、フランスに留学したが、日本とフランスは伝統文化の国であるのみならず、「お上が強く、官尊民卑」、「大きな政府」である点でよく似ている。ともに、アメリカとは異質の「社会主義国」である。

 社会主義思想の元祖は、マルクスではなく、サン・シモン(1760~1825)である。伯爵の称号を持つフランスの貴族である。最近は格差が拡大しているとはいえ、戦後の日本は、共産主義国の指導者が「共産主義の理想を実現した国」と称賛したように、平等社会を築いてきた。

 ルノーは、ナチス占領下にドイツに協力したかどで、第二次大戦後、ドゴール将軍によって国有化され、ルノー公団となった。しかし、国営企業となっても業績は上がり、20年にわたって公団総裁の座にあった ピエール・ドレフュス氏は『成功した国有化:ルノー(Une nationalization réussie)』(Fayard,1981年)という本の中で、「国有化は成功したのみならず、これから世界のモデルとなるものである」と書いた。

 ルノー公団は1990年には株式会社になるが、フランス政府が筆頭株主であり続けている。フランス国鉄(SNCF)も日本のようには民営化されていない。また、エールフランスもKLMオランダ航空と経営統合して持株会社を作ったが、フランス政府が支配権を握っている。その他、多くの企業でフランス政府が主要株主である。

 ルノーは日産の43.4%の株を持ち、議決権もあるが、日産はルノーの15%の株式しか持っておらず、議決権もない。しかし、利益の半分以上は日産のほうが生みだしているという歪な関係になっている。

 マクロン大統領が、日産とルノーの経営統合を実現させ、完全にフランス政府の傘下に置くことを狙っている。また、ゴーン会長の高額報酬については、マクロン大統領は大臣時代から批判的であった。今、フランス政府がゴーンを切り捨てる決意を固めた一つの背景だ。

 もともと、マクロンとゴーンの仲は良くない。使い途のなくなった経営者は更迭する、それこそがフランス式なドライな国益擁護術である。